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10年ぶり「夏春連覇」に挑むENEOS 社会人野球Express vol.32

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=2012年の日本選手権を制し、都市対抗に続く「夏秋連覇」を達成したJX―ENEOS(現ENEOS)

元大リーガーの田澤が復帰 戦力整う

 2022年の社会人野球の掉尾を飾る第47回日本選手権は30日、京セラドーム大阪で開幕する。大阪ガスの3連覇がなるかなど、見どころは多いが、7月の第93回都市対抗野球大会で、9年ぶり12度目の王座を勝ち取った横浜市・ENEOSが日本選手権との「夏秋連覇」を果たすか、に注目してみたい。大久保秀昭監督は10年前、新日石ENEOS時代に夏・秋を制しており2度目の偉業達成に挑むことになる。

都市対抗で横浜市・ENEOSは、三菱重工Eastから本間大暉、長島彰の両投手と、武田健吾外野手の3人を補強した。両投手は中継ぎ役として試合を引き締め、武田選手は中軸を打ち、優勝に貢献した。補強制度がない日本選手権では自前の戦力で戦い抜かなければならないが、元大リーガーの田澤純一投手が9月にチームに復帰し、頂点を目指す戦力は整ったとみていいだろう。

19年末、4大会連続で都市対抗出場を逃していた名門チームに復帰し、20年の都市対抗本大会で1勝、翌年には2勝と実績を積み上げ、わずか2年半で都市対抗優勝にまで導いた大久保監督。今回の日本選手権の1回戦の対戦相手は四国銀行。大久保監督は「07年の本大会で四国銀行さんに0-1で敗れた。気を引き締めて戦いたい」と慢心を戒めている。

近鉄OBの戦いぶりも注目

実は、もう一つ楽しみな「偉業への挑戦」がある。大久保監督と、8月の第46回全日本クラブ選手権を制して日本選手権にコマを進めた大和高田クラブの佐々木恭介監督は、04年にオリックスとの合併で姿を消したプロ野球・近鉄バファローズのOBだ。大久保が27歳で近鉄に入団した97年当時、20歳年上の佐々木はすでに現役を引退し、近鉄のコーチをしていた。その後2人は、プロでの指導者経験を経てアマチュア球界に復帰した。ENEOSか大和高田クラブが日本選手権で優勝すると、近鉄OB監督のチームが今年の社会人野球3大大会をすべて制することになる。

近鉄球団が消滅して今年で18年になる。近鉄のユニホームでプレーをした最後の現役選手、ヤクルトの坂口智隆選手も今シーズン限りで現役を引退する。近鉄というプロ球団があったことを知らない若者も増えていることだろう。だが、年月を経ても「同じ釜の飯を食べた」つながりは容易に消えない。大久保監督は、8月の全日本クラブ選手権決勝戦のときも球場を訪れ、佐々木監督を激励した。

「(近鉄の)コーチ時代の佐々木さんは厳しい指導で知られ、それはもう、本当に怖かった」と昔を思い返し、いま、ともに社会人チームの監督をしていることに感慨深げだ。それだけに「大和高田クラブさんとぜひ対戦したい」と意欲を見せる。

一方の佐々木監督は「大久保監督は慶応大でもリーグ戦を連覇するし、ENEOSに戻ってからもまた、都市対抗優勝に導いた。大変な名将で、爪のアカを煎じて飲ませてもらいたい」と後輩の活躍に目を細める。

 4日の日本選手権組み合わせ抽選会。ENEOSと大和高田クラブは別々のゾーンに分かれ、決勝まで勝ち進まないと対戦は実現しないことになった。大久保監督はすでに決勝戦までの青写真を描いているに違いないが、「複数勝利」を今大会の目標に掲げる佐々木監督にとって、近鉄OBの「師弟対決」の実現は、かなり荷の重い目標となる。だが、そこはそれ、近鉄時代に培った「いてまえ精神」で、ぜひ夢に挑んでほしい。【毎日新聞社野球委員会 中島章隆】