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新春インタビュー ―石井章夫・社会人日本代表監督に聞くアジア大会―  社会人野球Express39

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=2018年のジャカルタアジア大会で銀メダルを獲得した社会人日本代表

今秋中国・杭州で開催「一つでも多くチャレンジしたい」

 新型コロナウイルス感染症の影響で延期されていた第19回アジア競技大会が今秋、中国・杭州で開催される。台湾で昨年10月に開かれた野球の第4回U-2323歳以下)ワールドカップ(W杯)に社会人の選手だけで臨み、3大会ぶり2回目の優勝を果たして社会人野球の底力を見せた日本。石井章夫・社会人日本代表監督に、アジア大会の抱負を聞いた。【聞き手:毎日新聞社野球委員会・安田光高】

石井章夫選考委員長.JPG (1.06 MB) 

――監督として2018年のジャカルタ・アジア大会に続いて2度目のアジア大会になります。

 ◆前回が銀メダルでしたから優勝を目指したいが、U-23のように社会人の日本代表チームで取り組めること、試せること、チャレンジできることがあるので、それらに一つでも多く挑戦したいですね。

――アジア大会に懸ける思いは。

 ◆社会人にとって国際大会は多くありません。選手はアジアでの試合を楽しみにしています。他国も同様です。前回、韓国はプロで編成し、(勝てば)兵役免除になるということで勝負を懸けてきました。前回は決勝とスーパーラウンドで韓国に2敗しました。韓国には絶対、勝ちたいというのはあります。

――U-23W杯で優勝しました。アジア大会への弾みになるのでは。

 ◆国際試合で活躍するために必要なのは、選手の潜在能力と、国内での試合の結果と、1番大きいのは海外の実績です。そういった意味ではU-23の若い選手が海外試合を経験し、それなりに手応えをつかんだことで、アジア大会のメンバー選考に非常に厚みが出てきたと思います。

――U-23の代表選考では、都市対抗の上位に来るような強豪ではないチームの選手も選ばれました。

2020年の都市対抗からトラックマンで球速や打球速度などの数値を公開し始めました。合宿では招集したメンバーの潜在能力を計測しています。今回も毎年8月に実施しているジュニア合宿で、招集メンバーの計測を全国6カ所で行いました。その客観的なデータをもって選考し、それが実際に海外でどうなるか興味深く見ていました。その数値通りというと変ですが、選考されたメンバーは国内の試合でそんなに目立った活躍をしていなくても、自分の能力を発揮することができたように見えました。

――初戦では四国銀行の藤井拓海選手が4番を務めました。強豪チームでなくても代表入りできるという希望があります。

 ◆国際試合に臨むにあたり、潜在能力が豊かな『RAWタレント』を見つけて生かすかも重要だと考えています。

 

代表候補の球速、スイングスピードなどの数値を公開 代表入りの基準を明確化

――アジア大会では年齢制限がありません。どのように代表選考しますか。

 ◆BFJのホームページでプロスペクトリストを2021年から公開しています。アジア大会に向けて誰が選考に入っているのか、大枠のリストをオープンにしています。それが89人だったが、そこにU-23の選手が加わったので現在は100人ちょっとです。そこからアジア大会の選手を選ぶ。春先に活躍した選手がいれば、またリストに入ることになります。

――リストの基準は。

 ◆リストには名前と数値(※注1)が載っています。例えば、A投手の球速が載っており、メンバーに入りたいというB投手は、A投手と球速は同じだが回転数が違うという場合があります。そうなると、B投手はそれを上げるための努力をするでしょう。つまり、代表入りするための目標につながるのです。

――明確な数値に向けて取り組むことで社会人野球全体のレベルアップにつながるということですか。

 ◆目標となる具体的な数値を載せることで、野球の技術向上につながることを期待しています。また、プロセスが見えることでの透明性、公平性、そしてモチベーションにも繋がると考えます。

社会人JAPANの体制として、ヘッドコーチ、投手コーチ、野手コーチに加え、体を見るフィジカルのコーチ、体をケアするメディカルコーチ、全体のデータを撮るデータアナリスト、最後に潜在能力をどう引き出す心理学のメンタルコーチと連携をとる環境を大事にしています。選手たちが、打撃や投球の調子が良くない時に自分たちで相談するコーチを選んで、解決していくスタイルです。

――日本代表で行う体制、仕組みが各チーム作りの参考になる。

 ◆こんなやり方があると、サンプルにしてもらえればと思います。一つの企業チームが特殊なことをやっても、「他のチームがやっていること」になってしまいます。ところが、代表チームがやると、「共有してもいいかな」と考えてくれるところが出てくるかも知れません。日本代表の体制、仕組みを使ってもらいたいし、そういう意味で代表チームがチャレンジする価値はあると思います。

「アジア大会で優勝すること、日本野球の文化を進化させること」

――最後に代表監督として、2023年の抱負をお願いします。

 ◆アジア競技大会で優勝すること、日本野球の文化を進化させること、です。

日本の選手は体格で劣るからと、技に走る傾向があります。ただ、大谷翔平選手(エンゼルス)のようにMLBでパワーでも劣らない選手もいるし、身長168センチと小柄なアルトゥーベ選手(アストロズ)も活躍しています。日本の選手もフィジカルを鍛えれば、もっとできるはずです。彼らのチャレンジをもっと注視しなければなりません。日本代表としていろんなチャレンジをして、日本の野球を進化させたいですね。選手たちはゆくゆく指導者になるかもしれません。彼らが体験して志向すれば、文化として進化するかもしれません。

 

※注1 投手は▽最速▽平均速度▽平均回転速度▽ボールの縦変化▽ボールの横変化――の5項目。野手は▽打球速度▽推定飛距離▽スイング速度▽スイング時間――の4項目。詳しくは全日本野球協会の「侍ジャパン 社会人PROSPECT PLAYERS LIST」(https://www.baseballjapan.org/jpn/alljapan/data.html