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トラッキングデータ活用法を議論 社会人野球NOW vol.56

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東京都内で11日に開催された日本野球連盟(JABA)の第46回ベースボールマネージャーミーティングで、「選手育成のためのトラッキングデータ活用法」と題したパネルディスカッションが行われた。社会人日本代表のスタッフが代表活動の中で、データをどう分析し、選手にフィードバックしているのか、データとどう向き合っているのか。全国の72チームから集まった監督やマネージャー約90人らを前に、実践例や心構えなどが紹介された。【毎日新聞社野球委員会・藤野智成】

=トラッキングデータの活用法についてのパネルディスカッション


学生アナリストが代表に帯同、データ還元

トラッキングデータとは、選手のパフォーマンスやバット、ボールの動きを最先端機器で計測し、数値化したもので、スポーツ界での活用が加速度的に進んでいる。社会人日本代表の川口朋保監督、加藤徹コーチ、玉野武知コーチ、山田幸二郎コーチ、代表活動に帯同している学生主体の野球アナリストチーム「RAUD」の鶴田健吾さん、瀬田秀太さんが登壇した。

鶴田さんは、スイング速度、打球速度や打球角度と飛距離の関係、投手の投球フォームと球速の関係などを計測、分析し、選手にフィードバックする活動を報告した。計測結果で現状と数字の伸びを把握するだけでなく、「打者、投手のフォームの体重移動などがわかり、それらのデータをもとに修正など技術指導できるようになっている」と活用法を説明した。

瀬田さんはデータを計測することで、個々の選手の特徴や強み、投手なら先発か中継ぎか抑えか、その適性などを判断することができる点などを強調。さらに国際大会では、試合を重ねるうちに疲労蓄積や食事が合わないことなどから選手が体重を落としたり、スイングスピードが落ちたり、スイングがアッパー気味になったりすることがあることを紹介し、「毎日計測することでコンティションの変化に気づき、コーチを通じて選手に還元し、サポートすることができる」と述べた。

=トラッキングデータの活用について会場に表示された説明パネル


川口監督「データ活用術は10人10通り」

データをどこまで取り入れるか、選手の感覚とどうバランスを取っていくか、簡単には正解が見つからない問題だが、玉野コーチは「技術力向上のための手段、手法の一つとしてデータを活用している」と述べ、加藤コーチも「データを基に、まず自分の立ち位置を選手に知ってもらい、その上で何を目標にするか考えていく。数字への拒否反応はなくすように伝えている」と解説。2人とも、社会人日本代表の課題の一つである打力強化につなげていくためにも「数値的な根拠を持って選手にアプローチすることが大事になる」とデータの有効活用を訴えた。

山田コーチは、投手からシュート回転を修正した方がいいかどうか相談があった事例を紹介。データを基に、その投手の特徴である「浮き上がるようなボールは誰にでも投げられるものでないので、投球の組み立てによって、その特徴を生かそう、との判断になった。数字を見ることで何が強みで、何が足りないか気づくことが大事」と話した。

川口監督は「選手の主観を否定はできない。選手の主観とデータ、どううまく組み合わせていくか、選手とのコミュニケーションも含めて指導者には求められる。データの活用法に正解はないと思う。10人の選手がいれば10通りのやり方がある。データは見える化になるし、うまく活用する、という姿勢が、これからの我々に求められている」とまとめた。

=会合に出席した社会人野球のチーム関係者たち