JABA

JABA

メニュー

トピック TOPICS

【GRAND SLAM PREMIUM 145】近畿地区連盟の取り組みはピンチをチャンスに変えるはずだ

bnr_grandslam_cmyk.jpeg (218 KB)

 長引くコロナ禍による大会や公式戦の中止、また無観客開催によってアマチュア・スポーツの競技団体は窮地に陥っており、427日には日本高校野球連盟が今夏の第104回全国高校野球選手権大会の入場券を値上げすると発表した。そうした状況を打開し、注目度も高めていこうと、社会人野球でも近畿地区連盟が本格的な行動を起こした。

 元大阪ガス監督で、近畿地区連盟副会長を兼務する藤田正樹専務理事は「今までの我々は、毎年、同じことをやってきた。それを反省して新たに動き出し、色々チャレンジしていこうと話し合った」と語り、3月に社会人野球応援プロジェクトとしてクラウドファンディングを実施した。近畿地区の企業チームから巣立ったプロ選手に返礼品で協力してもらうと、各種メディアにも取り上げられ、目標額の200万円は開始1週間足らずで達成した。

 その資金を活用する手段として、第72回京都大会ではいくつかのイベントを計画。さらに、地元・京都でサプリメントや化粧品を取り扱う企業のわかさ生活が大会スポンサーとなり、『わかさ生活 第72JABA京都大会』として425日から開催された。

 当初は429日に準決勝2試合、30日に決勝を行なう予定で、両日とも野球教室や場外でのイベントが企画されていたが、今大会は生憎の雨に祟られる。426日、29日は第2試合以降が順延となり、51日に延期された準決勝と決勝も雨。結局、翌2日に大阪・舞洲の大阪シティ信用金庫スタジアムに会場も変更となってしまった。

 それでも、430日には朝から実施された野球教室のほか、全国選手権大会で優勝経験もある京都明徳高ダンス部が5回終了時にパフォーマンスを披露。場外でもストラックアウトやティーバッティングのイベントが行なわれ、キッチンカーもファンには好評だった。京都大会は、社会人野球ファンに向けたイベントから、ゴールデンウィークに近隣の市民を集め、社会人野球との接点を作るイベントにも成熟していくのではないかと感じられた。

GSP145-1__large.jpg (139 KB)

島津製作所をはじめ企業チームの選手たちも、野球教室に協力した(左)。京都明徳高ダンス部による力強く美しいパフォーマンス(右)。

 

 京都大会の歴史を辿れば、日本野球連盟の前身になる日本社会人野球協会が設立されるよりも前の1947年に、西京極球場(現・わかさスタジアム京都)を舞台に産声を上げた『選抜都市対抗野球京都大会』が源流だ。

 まだ航空網や新幹線など、大都市間を短時間で移動できる交通手段がなかった時代は、地元の有力チームが都市対抗野球大会の代表になっても、東京の後楽園球場まで応援に出かけられる人は少なかった。

 そこで、全国の強豪チームの試合を地元でも観戦できるようにしようと、立ち上げられたのが選抜都市対抗野球京都大会なのだ。『選抜』とつくのは、予選を勝ち抜くのではなく、主催者に選抜されたチームが出場する大会だからで、現在の九州大会である選抜都市対抗野球九州大会も同時に開始されている。

 大企業の多くの本社が首都圏にあったため、全国大会が東京で集中的に開催されていた社会人野球が、全国の野球ファンに周知されるきっかけとなったのが選抜都市対抗野球京都大会や選抜都市対抗野球九州大会であり、1950年代には静岡大会、岡山大会が生まれている。

GSP145-2__large.jpg (94 KB)

わかさスタジアム京都の場外では、キッチンカー(左)が出店されたり、ストラックアウトなどのイベントで賑わった(中・右)。

 

 今回の近畿地区連盟の取り組みは、京都大会が設立された原点に立ち返り、地元・京都を中心に現代の社会人野球の存在、心技に充実した大人が見せる全力プレーの醍醐味を広く知らせてくれるものになっていくのではないか。また、こうした取り組みがもたらす効果の重要性は、すでに都市対抗二次予選などで積極的な施策を講じている東海地区を見ても明らかだろう。

 日本における企業スポーツをリードしてきた社会人野球は、コロナ禍という大ピンチを乗り切った先に、願ってもないチャンスを作ってくれそうだ。

【文=横尾弘一】

 

グランドスラム59は好評発売中です!!

GSP59__medium.jpg (71 KB)

紙版(左)、電子版(右)とも、どうぞよろしくお願い致します。