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【GRAND SLAM PREMIUM 147】九州大会で奮闘した日本製鉄大分は都市対抗九州二次予選で旋風を巻き起こせるか

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 ENEOSの優勝で幕を閉じた第74回九州大会では、多くの熱戦が繰り広げられた。開催地区の九州勢も、都市対抗二次予選を見据えた戦いを展開した。その中でも、清原孝介監督や選手たちが「僕らはチャレンジャー」と声を揃える日本製鉄大分に注目したい。

 4月に行なわれた四国大会では、決勝トーナメント進出こそならなかったが、リーグ戦で2勝1敗と勢いに乗る。九州大会のリーグ戦第1戦ではJR九州と対戦。先発を任された吉田光輝は、四国大会でJFE西日本を相手に先発し、白星を手にした3年目の左腕だ。先頭打者に内野安打を許すも、後続を断って無失点で切り抜けると、2回は3者凡退。「上手く使えた」というツーシームで三振も奪い、上々の立ち上がりを見せる。しかし、3回表一死から田中允信に先制のソロホームランを許すと、さらに連打で一死一、三塁と攻め込まれ、山田遼平の右犠飛で2点目を失った。そして、4回表には2安打と四球で一死満塁とされ、押し出し四球を与えて降板した。

「真っ直ぐで押していく、自分らしい投球はできたと思います。でも、ホームランのあとの連打が拙かった。今年から、初戦の先発を任せてもらえるようになりました。プレッシャーのかかり方がこれまでとは違いますが、しっかり投げていきたい」

 そう話す吉田に「調子が悪くても抑えていかなければならない立場」と、清原監督は大きな期待を寄せる。一方の打線は、4回裏に二死一、三塁から須賀光星のタイムリー三塁打で2点を返す。だが、7回表二死から安打と四球で招いたピンチに失策が絡み、タイムリーも許して5点差と引き離されてしまう。9回裏には一死満塁から代打・安藤 駿の右犠飛で何とか1点を返したが、7回の4失点が大きく響いて3対7で敗れた。

 

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挑戦者という意識を強く持ち、着実に課題を克服させていく清原孝介監督。【写真=古江美奈子】

 

「粘りはしましたが、競った場面でミスが出れば勝てない。四死球からの失点、打撃ではミスショットをなくしていく。徐々に力をつけてはきましたが、課題は多々あります。我々は挑戦者。他チームの胸を借りて戦っていきます」

 そう熱く語る清原監督は、2019年7月からチームの指揮を執る。2005年に西濃運輸に入社し、1年目から四番を担った。2010年にユニフォームを脱いで社業に就くも、2013年には地元の福岡へ戻り、野球を続ける道を探った。そして、2014年に新日鐵住金大分クラブへテスト入団。翌2015年からはコーチ兼任となり、2017年限りで現役を引退すると、専任コーチを経て今夏で監督4年目を迎える。

「打てなくても、打たれても前向きに取り組めるようになったのは、チームの成長です。私の現役時代も『一喜一憂しない』ことを大事にしていましたから」と、選手を見詰める。

 チームの歴史を辿ると、1972年に新日本製鐵大分として誕生した。これまで都市対抗には5回(1984年にはベスト8)、日本選手権には2回出場している。だが、会社のスポーツ支援方針の見直しにより、1998年~2019年はクラブ登録となった。形を変えながら活動を続けてきた野球部は、2020年4月に会社の理解を得て、企業チームとして復活を遂げた。

 それでも、仕事優先のチーム方針は変わらない。選手は、九州製鉄所大分地区など13社に分かれて午後5時まで勤務し、午後6時~9時まで練習に励む。現場や事務など仕事内容な様々で、残業も珍しくはない。そのため、全員揃って練習を開始できないこともある。だからこそ、コミュニケーションが大切だと強く認識しているという。

 

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主将の田中貢大(左)や左腕エースの吉田光輝(右)を中心に、どこまで粘り強く戦えるか注目だ。

 

 企業チームとして再出発できた喜びは大きかったが、ちょうど新型コロナウイルスの感染が拡大してきた時期と重なり、それを存分に実感することができなかったのは残念だ。ただ、翌2021年からはJABA大会にも出場でき、「実戦の機会が増えたことはありがたい」と清原監督は言う。企業チームとして実績を上げれば、二大大会の予選だけではなく、公式戦で強豪と対戦できるチャンスも得られる。九州大会ではリーグ戦でミキハウスに3対5、ENEOSには1対3と敗れたが、敗戦の中にも収穫はあった。主将の田中貢大はこう話す。

「JABA大会は、チャレンジャーとしての僕らの力が、今どれくらいあるのかを知ることのできる貴重な機会です。全国で勝ち上がるチームはどんな戦いをするのか、僕らとどう違うのか。やられたというより、ミスで自ら勝ちを逃した試合もありましたが、落ち込む必要はない。都市対抗予選へ向けて、課題が見えたということ。大量得点できる打線ではないですが、しっかり守り抜いて、最終的に相手より1点でも多く取る野球ができれば。若いチームなので、元気がいいのが取り柄です」

 選手24名中、3年目までの選手が15名。リードオフを担う長岡遼真や、五番に座る大塚由智らイキのいい新人も加わった。実戦経験を積んで、どのようなチームへと変化していくのだろうか。さて、5月28日には都市対抗九州二次予選が幕を開ける。どんな戦いが繰り広げられるか楽しみだ。

【文=古江美奈子】

 

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