都市対抗二次予選の中で最も長丁場の18日間を戦い抜く東海地区の第一代表に、全国一番乗りでヤマハが名乗りを上げた。第一代表決定戦の相手はJR東海で、先発は経験豊富な34歳の戸田公星。ヤマハの投手陣が12安打を浴びて10失点と聞けば、JR東海の快勝だったと思ってしまう。それが、毎回の17安打で14点を奪い、昨年に続く第一代表で4年連続43回目の代表権を勝ち取った。

JR東海との3時間56分にわたる大熱戦を制し、マウンドに歓喜の輪を作るヤマハの選手たち。

　今季のヤマハは、東京スポニチ大会でリーグ戦2位（2勝1敗）、静岡大会と京都大会はリーグ戦4位（1勝2敗）で都市対抗東海二次予選を迎える。一回戦はジェイグループを6対2で下したが、二回戦ではHonda鈴鹿に先手を取られ、7回を終えて1対4の劣勢。8回表にも決定的と思われる1点を献上したが、その裏に下位打線で無死満塁のチャンスを築くと、リードオフの青柳直樹が右前に弾き返して1点。続く秋利雄佑の二ゴロ併殺の間にもう1点が入ると、網谷圭将がレフトへ2ラン本塁打を叩き込んで1点差まで追い上げる。そして、9回裏にも一死満塁とし、再び青柳が中前に運んで逆転サヨナラ勝ちを収める。

　これで勢いがついたか、トヨタ自動車との準決勝は6回裏一死一、三塁から代打･大本拓海の右犠飛で1対1に追いつく。さらに、8回裏にはトヨタ自動車のベテラン･佐竹功年を一死一、二塁と攻め、藤岡康樹が右前安打を放つも、一気に生還を狙った網谷は好返球でタッチアウトに。それでも、川邉健司が中越え二塁打で2者を迎え入れ、2年目の左腕･佐藤 廉は134球の熱投で5安打完投勝利を挙げる。そうして第一代表決定戦まで駒を進めると、先発の近藤卓也が1回表に2点を先制されるが、その裏一死満塁で藤岡がライトへ会心の逆転満塁弾。2回裏にも2点を追加し、戸田をKOして試合の主導権を握った。

　室田信正監督は、ホッとした表情で「この予選では投打が噛み合った。昨年は一回戦で敗退したので、東京ドームではまず1勝を目指し、そこから一戦、一戦、しっかりと戦っていきたい」と語り、4安打8打点の大活躍だった藤岡は「選手全員で、次につなげようという気持ちで臨んだ結果です」と笑顔を見せた。

　かつては静岡と東海に分かれていた都市対抗予選も、2002年から東海地区に統合された。それから全国屈指の激戦が繰り広げられているが、ヤマハは昨年までの20年間で代表権を落としたのは4回と、抜群の勝負強さを発揮している。それだけに、東京ドームでは1990年以来22年ぶりとなる4本目の黒獅子旗を手にしたいところだ。

東京は鷺宮製作所、近畿はNTT西日本が第一代表に

　6月1日には東京がデーゲーム、近畿はナイトゲームで第一代表決定戦を行なった。東京では、2018年からの4年間で都市対抗ベスト4に3回進出しているセガサミーが初めての第一代表を狙って鷺宮製作所と対戦した。だが、この試合は鷺宮製作所の先発を任された小孫竜二の独り舞台だった。唸りを上げるストレートに加えてスライダーなど変化球の精度も高く、破壊力のあるセガサミーの打線から10三振を奪い、植田匡哉のソロ弾を含む7安打1失点に抑えて完投勝ち。打線もセガサミーのエース･草海光貴を3回でKOするなど、10安打で6点をもぎ取った。2年ぶり16回目の東京ドームでも、久しぶりに旋風を巻き起こしてもらいたい。

完璧な試合運びで第一代表を勝ち取った鷺宮製作所の選手は、岡崎淳二監督を胴上げする。

【写真＝藤岡雅樹】

NTT西日本は、7回からリリーフした大江克哉が笑顔でバンザイ。堂々の8年連続出場だ。

　また、投打に充実したNTT西日本と躍進を続けるミキハウスが激突した近畿は、2回裏にミキハウスの四番･田中秀政が豪快に先制ソロ本塁打を放つと、4回表にはNTT西日本の四番･平良竜哉が持ち前のフルスイングで同点ソロ。さらに、二死から山田峻士が左前安打を放つと、続く辻本勇樹がライトへ文句なしの勝ち越し2ランを叩き込む。

　これでペースをつかんだNTT西日本は、ルーキー･泉口友汰の二塁打で4点目を挙げ、6回表には藤井健平の3ランアーチでリードを6点に広げた。ミキハウスも10安打を浴びせて粘りを見せたが、先発の濵﨑浩大から7回に大江克哉へつないだNTT西日本が7対3で快勝した。8年連続33回目の大舞台では、57年ぶりとなる黒獅子旗に近づきたい。

【文＝横尾弘一】

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