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【GRAND SLAM PREMIUM 158】ENEOSにミラクル優勝をもたらした大久保秀昭監督の選手起用

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「こんなことがあっていいのか。本当に、ミラクルを起こしてくれました」

 監督として、史上最多となる4回目の都市対抗制覇を果たした名将・大久保秀昭の声も、さすがに潤んでいる。

 第93回都市対抗野球大会決勝は、東京ガスに4点をリードされたENEOSが、6回表には度会隆輝の大会4本目の3ラン、続く丸山壮史のソロで追いつき、二死後に小豆澤 誠も右翼席へ。衝撃的なイニング3本塁打で逆転すると、そのまま最多12回目の黒獅子旗まで突っ走った。

 まさに、ミラクルである。

 1月14日にリリースした『週刊グランドスラム130』では、ENEOSの今季について触れ、こんなふうに締め括った。

「大久保監督の第1期で都市対抗に優勝した2008年も、慶大を2017年秋季リーグ優勝に導いたのも、監督就任から3年目だった」

 2016年からの4年間、チームは都市対抗西関東二次予選で8連敗し、名門の看板が錆びつきかけていた。そんな中で大久保監督が復帰した2020年は5年ぶりに都市対抗に出場し、史上初の大会通算100勝を達成。2021年は、準々決勝で東京ガスに敗れたものの2014年のベスト4以来7年ぶりの8強に進出した。そして、勝負の3年目を迎える、という内容である。その後、取材に足を運んだ際に大久保監督はこう語っている。

「土を耕す1年目。種を蒔き、肥料を与える2年目。そして、石の上にも……の3年目。3年というのは、ひとつのキーになりますね」

 拙稿を読んでくれたかどうかはともかくとして、3年目を強く意識していることは確かだった。

 ミラクルといえば、NTT東日本にサヨナラ勝ちした準決勝も鮮やかだった。2対2の同点で迎えた9回裏一死から、丸山が四球で歩く。大久保監督は、次打者の柏木秀文を呼び止めた。2012年の入社だから、2012年と13年の都市対抗連覇を肌で知るベテランである。

 

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NTT東日本との準決勝、2対2の9回裏一死一塁で、柏木秀文(左)に声をかける大久保秀昭監督(右)。

【写真=藤岡雅樹】

 

「どうするんだ?」

「何としても、バントで二塁に送ります」

「いいのか、それで? 弱気やな。打って、ヒーローになってこい」

 これで吹っ切れた柏木は、片山楽生のスライダーに体勢を崩されながらレフト線に二塁打。一死一、三塁で投手が多田裕作に代わり、申告敬遠で満塁になったあと、打席に向かう瀬戸西 純は「代打を出されるかも」と頭を過った。これが4試合目だが、そこまで僅か1安打。それもセーフティ・バントによるもので、決して好調ではなかったからだ。だが、ここでも大久保監督は「ヒーローになってこい」と声をかける。

 これに勇気を得た瀬戸西は、ファウルで食らいつく。そして、2ボール2ストライクからの7球目を右前に弾き返し、本当にヒーローになるのだ。

 大久保監督は、2012~13年の都市対抗連覇を振り返って言う。

「選手を信じて送り出す。それには根拠も確証もありましたし、打った手の7割は成功していたと思います」

 2012年の都市対抗決勝は、JR東日本を相手に1対3の劣勢。だが、6回裏に敵失で1点差とすると、山岡 剛が逆転3ラン本塁打を放つのだ。実は、この大会の山岡はそこまで16打数1安打という不調。大久保監督はそれでも、代打はまったく考えなかったという。殊勲の瀬戸西も、そこまでは13打数1安打だったが、代打は出さない。「手を打った」というより、打たないことが手になるこの相似形。「選手を信じて送り出す」から、7割が成功するのだろう。

 そして、もうひとりの準決勝のヒーロー・柏木は、シーズン前にこう語っている。

「昨年の都市対抗前は、連覇の頃に近い雰囲気になっていました。たとえ劣勢でも、最後は何とか勝ってしまうという、あの感じです」

 では、この大会での雰囲気はどうだったのか。コロナ対策によるリモート取材で、他社の方たちにも聞かれてしまうため、そこを聞きそびれたのが何とももどかしいのだが……。

 

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9年ぶり12回目の優勝を果たし、選手たちと笑顔でグータッチする大久保監督(右)。

【写真=松橋隆樹】

 

 ENEOS、9年ぶりの優勝。「大久保監督は3年目に優勝している」と1月に書いたのが出来過ぎに思える、それこそミラクルだった。

【文=楊 順行】

 

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