第104回全国高校野球選手権大会は、仙台育英高の優勝で幕を閉じた。球児たちの直向きなプレーに感動したファンも多かったと思うが、ひと足先に横浜市･ENEOSの優勝で幕を閉じた第93回都市対抗野球大会でも、かつて甲子園を沸かせた選手たちがプレーしていた。その中から5年前、2017年の第99回大会に出場し、今夏は都市対抗の大舞台に立った選手を紹介する。大学出ならルーキー、高校出なら大きな飛躍が期待できる中堅で、東京ヤクルトの主砲･村上宗隆らと同学年だ。

　12年ぶり3回目の優勝を飾ったENEOSでは、早稲田大で主将を務めた丸山壮史が決勝で同点ソロ本塁打を放った。15打数1安打と苦しんでいたが、大久保秀昭選手は「状態は決して悪くない」と代打を出さず、丸山も最後の最後に意地の一発を放つ。そんなガッツあふれる好打者は、広陵高3年夏に遊撃手として準優勝。天理高との準決勝では、豪快な一発を放つなど、5試合で打率.462をマークした。

　惜しくも準優勝だったものの、連覇を目指して力強い戦いを続けた東京都･東京ガスでは、中央大出の右腕･皆川喬涼が鹿嶋市･日本製鉄鹿島との二回戦に登板した。7点リードの9回裏に登板すると、いきなり2者連続でストレートの四球。一死後に中前安打を許して1失点のほろ苦いデビューだったが、山口太輔監督は将来のエース候補と期待を寄せる。前橋育英高3年夏は、優勝した花咲徳栄高に三回戦で敗れたものの、ストレートは最速149キロを叩き出すなど注目を浴びた。

　ベスト4の東京都･NTT東日本では、青山学院大出の井上大成がセンターで4試合にスタメン出場。日本新薬との二回戦では、3回裏の先頭で先制ソロ本塁打をライトスタンドへ突き刺した。12打数2安打6三振と本領は発揮できなかったが、チーム内の厳しい競争に揉まれ、飛躍する姿を見せてほしい。日大三高3年夏は西東京大会準々決勝で敗れたが、春は三塁手として聖地の土を踏み、U-18日本代表にも選出され、カナダで開催された第28回U-18ワールドカップにも出場している。

　やはり4強の豊田市･トヨタ自動車には、磯村峻平（中京大中京高－明治大）、福井章吾（大阪桐蔭高－慶應義塾大）、五十嵐寛人（山梨学院高－明治大）も入社したが、都市対抗の舞台に立ったのは東海大菅生高3年夏にも4強入りした亜細亜大出の松本健吾と武蔵大出の山内大輔だ。高校時代の背番号は、先発の松本が1で、リリーフの山内は10。大学は分かれたものの、社会人で再びチームメイトになった。松本はTDKとの準々決勝で6回から登板し、4イニングスを無安打無失点の好投で初白星を手にする。

　山内は東京ガスとの準決勝で、3対3の5回からマウンドへ。6回まではしっかりと抑えるも、7回表一死から連打された場面で交代した。6年ぶりの優勝はならなかったが、揃って貴重な経験を積んだ。

　一回戦で仙台市･JR東日本東北に8回コールド負けと悔しい結果になったが、大阪市･NTT西日本の泉口友汰（青山学院大出）はショートの定位置を確保した。大阪桐蔭高3年夏は三回戦で敗れるも、智辯学園和歌山高との二回戦では広角に3安打を打ち分けるなど、3試合で打率.714と大活躍。東京ドーム初安打はマークできなかったものの、野球伝来150年記念試合で大学･社会人選抜に選ばれるなど、豊かな将来性を備えている。

　そして、高校出5年目では、札幌市･北海道ガスの鈴木愛斗が広島市･JR西日本との二回戦でリリーフ登板。終盤に逆転されてしまった展開の中、丁寧な投球で相手打線の勢いを止めた。

また、神戸国際大附高で四番を担った猪田和希（千葉市･JFE東日本）は、南関東二次予選で敗れたものの、さいたま市･日本通運に補強されてポイントゲッターに。2019年にはサヨナラ満塁弾を放つなどパンチ力が自慢だが、今大会では勝利に貢献することはできなかった。

　さて、8名の選手たちのプレー写真を左に今夏の都市対抗、右に5年前の夏の甲子園と並べてみた。ちなみに、すべての撮影は5年前も今大会も松橋隆樹カメラマンだ。常にカメラマン席からファインダー越しに選手たちのプレーを見ている松橋カメラマンにも、選手たちの着実な成長ぶりが感じられたという。

【文＝横尾弘一】

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