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【GRAND SLAM PREMIUM 164】濱田晃成監督で日本選手権九州最終予選を戦った新規参入『新海屋』への期待

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「今、やれることはやってきたのですが……」

 そう苦い表情を浮かべるのは、日本選手権九州最終予選を終えたばかりの濱田晃成監督だ。今年3月に新規加盟した、宮崎県延岡市を拠点に活動する『新海屋』の新監督である。地元の延岡学園高を卒業後、東京ガスで6年間プレーしたあと、沖縄県のクラブチームに在籍し、昨年限りで現役を引退した。都市対抗や日本選手権の大舞台を経験し、社会人野球の厳しさを知る29歳の若き指揮官は、どんなチーム作りをしていくのだろうか。

 現役時代について尋ねると、「東京ガスに在籍した6年間で一番、打撃の感覚がいいシーズンでした。でも、この年で終わりだろうなとは感じていました」と、2017年を振り返る。日本選手権前に行なわれた、JX-ENEOS(現・ENEOS)とのオープン戦が最後の打席となった。その試合でも安打を放ち、野球をやめるにはまだ早い――その思いを捨て切れず、2018年に創部した沖縄県のMr.KINJOでプレーする道を選んだ。だが、チームは2年間で活動終了となり、シンバネットワークアーマンズベースボールクラブへ転籍。こちらも新設したばかりのチームで、昨年は全日本クラブ野球選手権大会に初出場し、一回戦では三番ショートで1安打1打点と勝利に貢献した。だが、左肩の脱臼がこれまで5回とクセになっており、存分にプレーすることができずに現役引退を決意した。その後、宮崎県延岡市に帰省した際に『新海屋』が始動したことを知り、今年1月からコーチとして加わり、6月に監督に就任した。

 

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東京ガスや沖縄のクラブチームでプレーし、6月から新海屋を率いる濱田晃成監督。

 

「沖縄にいた頃は、選手としてプレーしながらもコーチのような役割をしていたので、違和感なくスタートできました。でも、監督になると責任の重みがまったく違う。会社を背負って野球をすることの、本当の意味を知ったように思います。Mr.KINJOもシンバも選手は15名以下でした。それでも企業チームに勝つこともあったので、選手には『この人数でもやれることはある』と当時の経験を踏まえて話し、モチベーションを上げています。時にはもどかしさを感じることもありますけど、選手目線で考えることも忘れずに向き合っているところです」

 8月には、宝田賢吾コーチがマネージャー兼任で加わった。シティライト岡山の創設時にコーチを務めており、新チームの土台を築くには頼れる存在だ。

 

やるからには都市対抗、日本選手権出場を目指す

 

 2011年に創業した新海屋は、宮崎県延岡市の北浦港でブリやカンパチなどを養殖し、加工・販売を行なっている。小川裕介社長はチーム立ち上げについて、「若い人材の確保を考えていたのですが、なかなか難しかった。そこで、野球を通して人口減少の進むこの地域を活性化させたいと、2020年10月に創部しました」と話す。はじめは、2020年12月のセレクションに参加した5名からスタートした。今年は9名の新人が加わり、現在は12名で活動している。業務は朝5時半から14時頃まで、工場内で魚の加工をメインに行なう。その後、延岡市内や日向市のグラウンドに移動し、19時まで練習する日々だ。今夏には大浴場やウエイトルームを備えた寮が完成し、間もなく入寮を予定している。

 

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完成したばかりの野球部寮(左)。日本選手権九州最終予選一回戦では、鵬翔高出の新人・二方琢真が6回を2安打無失点の好投を見せた(右)。

 

 船出となった4月の都市対抗宮崎・鹿児島一次予選では、一回戦で薩摩ライジングに2対3で惜敗。敗者復活一回戦では、宮崎福祉医療カレッジに0対8で敗退した。そして、濱田監督の公式戦初采配となる日本選手権九州最終予選は、一回戦でエナジックと対戦した。1回裏に2ラン本塁打で先制を許すも、2回表に2安打で二死一、二塁のチャンスを作り、暴投により1点を返した。だが、その裏に、4安打に四球や暴投が絡んで5失点。3回以降は2安打無失点に抑えたが、反撃ならず1対7で敗れた。

「ミスで無駄な進塁を許してしまった。技術力はすぐには上がらないので、今できる準備をして試合に臨むことが第一だったのですが……」と、濱田監督は肩を落とすも、試合後にはこれまでになかった姿が見られたという。

「選手同士で試合の感想を言い合い、反省をするようになりました。まだ身体も出来上がっていないので、他チームほどのパワーもない。冬の間にこうしようなど、自ら課題に取り組む姿勢が見えてきた。全員がその悔しさを忘れずに、来季を迎えてほしいです」

 今後の課題については、「バッテリー強化」を第一に挙げる。「失点には四球が絡んでいます。バッテリーからゲームを作れるようになれば、違った試合運びができるはずです。また、野手も経験を積んで視野を広げていってもらいたい。九州を勝ち抜くためには、選手が増える来年以降はもっと細かい野球をする必要があります」と話し、最後はこう締めた。

「簡単なことではありませんが、やるからには都市対抗、日本選手権出場を目指しています。社会人野球の厳しさを伝えながら、全国で戦えるチームを作っていきます」

 九州に、そして、社会人野球に新風を吹き込むことができるか。新海屋の今後の戦いぶりに注目したい。

【文・写真=古江美奈子】

 

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