野球ファンが6年ぶりのワールド･ベースボール･クラシックで盛り上がる中、ひと足先に第77回東京スポニチ大会が3月6日、神宮球場などで開幕する。出場16チーム中、昨年の都市対抗に出場したのは10、日本選手権出場は11チーム。実力伯仲の顔ぶれで、特に興味深いのが都市対抗準優勝の東京ガスと、日本選手権優勝のトヨタ自動車が入ったCブロックだ。

　東京ガスは、速球派の益田武尚が広島入りしたが、優勝した2021年の都市対抗で橋戸賞を獲得したエース･臼井 浩が健在で、2年目の皆川喬涼も台頭してきた。日本一経験者がズラリと並ぶ打線に、2018年の甲子園で春夏連覇した大阪桐蔭高の主将･中川卓也も早大から加わる。山口太輔･前監督からバトンを受けた松田孝仁監督の采配も注目だ。

　トヨタ自動車は、今年から実施された薩摩おいどんカップからの参戦だ。昨季の公式戦は.703と高勝率を誇り、吉野光樹と長谷部銀次はプロ入りしたが、2年目の松本健吾ら投手陣に駒は揃う。打線も、3回目の社会人ベストナインを獲得した多木裕史、日本代表で主将を務める北村祥治をはじめ、経験豊富な猛者が揃っている。

昨年の第76回大会に優勝し、大日輪旗を受け取る東芝の柴原健介主将。充実した戦力で連覇はなるか。【写真＝藤岡雅樹】

　前回、吉村貢司郞の好投などで優勝した東芝はAブロック。吉村が東京ヤクルト入りした投手陣では左腕の藤村哲之がエースで、2年目の粂 直輝も昨年後半に急成長した。5名が加入した新人野手のうち、誰が定位置争いに食い込んでくるか。TDKはエース･鈴木大貴が充実している上に、昨年限りで活動を休止した、きらやか銀行からエースの小島康明が転籍。優勝したU－23ワールドカップでMVPを手にした権田琉成もいて、打線なら深江大晟、やはりU－23ワールドカップで自信をつけた齋田海斗に注目したい。このブロックは、ほかに東北楽天から転籍の内田靖人ら22名が新加入し、選手48名という異例の大所帯になったエイジェック、準硬式出身ながら1年目でエース格となった髙島泰都を擁する王子が入っている。

　Bブロックは東京ガス、トヨタ自動車に加えてSUBARU、アスミビルダーズ。4年間も都市対抗から遠ざかるSUBARUだが、阿部博光と手塚 周のいる投手陣は安定している。オープン戦から外野で出場する大阪桐蔭高出のルーキー･海老根優大も楽しみだ。創部3年目の昨季、都市対抗近畿二次予選まで進み、神戸ビルダーズから名称変更したアスミビルダーズは初出場。オリックスで通算282本塁打の藤井康雄がコーチに就任し、どこまで打線を強化できるか。

ピッチクロックなど新たな規定も確認したい

　Cブロックには、このところ安定した戦いぶりのHonda熊本がいる。稲垣翔太、古寺宏輝らの打線はパワフルで、先発の柱は2年目の髙橋聖人か。好調を支える右腕･片山雄貴が元気なら、今年も上位進出が期待できる。三菱重工Eastは、昨年の日本選手権で4強。一番として貢献したのが津田啓史で、身体能力が高く、走攻守にバネを感じるプレーが魅力だ。同じ神奈川のライバル･ENEOSの度会隆輝とは横浜高の同期生にあたる。打線に定評のあるNTT西日本は、2年目の泉口友汰が攻守の中心になりそうだ。日本製鉄かずさマジックには、オリックス、巨人でプレーした勝俣翔貴が加入。オープン戦では、すでに四番に座って長打力を見せつけている。

　DブロックのHondaは、2020年の都市対抗覇者。昨年はケガ人が多かったため、シーズンオフはフィジカル強化に取り組んだ。万全なら全国上位を狙える戦力で、投手陣は中村伊吹と有村大誠、打線は峯村貴希、鈴木 薫が軸か。鷺宮製作所は、昨年までコーチだった幡野一男監督の下、新人6名を加えてチーム内競争が激しくなった。東北楽天入りした小孫竜二を慕っていた中島隼也が、先発の柱になれるか。昨年、石黒佑弥と大畑理暉の二枚看板が大きく飛躍したJR西日本は、新主将の櫻井 涼が攻守に牽引する。ジェイプロジェクトでは、硬式野球部1期生として初代主将を務めた神戸宏基監督が今季から指揮を執る。

　大会は、3月9日に準決勝と決勝を行なう予定。天気予報によると期間中は、この時期にしては比較的気温も高く、ハイレベルな戦いが期待できそうだ。なお、この大会から、ピッチクロックなどを含めたスピードアップ特別規定が導入される。詳しくは（https://www.jaba.or.jp/news/2023speedup/）で、あるチームでは「守備のサインなどは、ベンチから出すのもひとつの選択肢」という声も聞いた。バッテリーを中心に、各チームがどのように対応するかも確認したい。

【文＝楊 順行】

※次回は、第77回東京スポニチ大会が終了した2日後にリリースします。

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