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【GRAND SLAM PREMIUM 198】2回目の全国へ向けてひた走るシティライト岡山

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 京都大会のリーグ戦第1戦で、セガサミーに5対4で勝利したシティライト岡山の桐山拓也監督は、安堵した表情で口を開く。

「岡山大会のデジャブかと思いました。何とか粘れてよかったです。いいマインドで野球ができています」

 デジャブとは、岡山大会リーグ戦第2戦のことだ。日本新薬を相手に3対0とリードして8回を終えたが、9回表に長短3連打で1点差に迫られ、さらに3安打で5失点。最後の最後で逆転負けを喫した。そして、京都大会でも5対1の8回表二死一、三塁から中川智裕に3ラン本塁打を浴び、セガサミーに1点差まで追い上げられる。チームには嫌な空気が漂い、9回表も一死一、二塁のピンチに立たされる。だが、後続を併殺に打ち取って1点差を守り抜いた。

 

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シティライト岡山の主戦格・米田知弘は、京都大会では雨の中で力投した。

 

 先発して8回途中まで2失点だった米田知弘も、ホッとしたような笑顔を見せる。

「それほど調子はよくなかったのですが、今年は粘りの投球ができています。これまでとらえられていた真っ直ぐで、ファウルが取れるようになったのは大きな収穫。僕が長いイニングを投げる試合は負けていたので、今日は勝ててよかった。投手と野手は助け合い。お互いにカバーしていけたらいいですね」

 シティライト岡山が目指す「守り抜く野球」を体現するには、投手を中心とした守備力の強化が欠かせない。今年からコーチ兼任となった児山祐斗は言う。

「攻撃のリズムを生み出すのは守備です。いかにして3者凡退で終え、次の攻撃につなげるか。野球は、最後まで何が起こるかわからない。日本新薬戦のように、9回に逆転されることもあるので最後まで気が抜けません」

 やはり、岡山大会での逆転負けはチームに大きな影響を与えたようだ。「ものにできる試合を勝ち切れないのが弱いチーム」とは丸山高明。主将だからこそ言えるのかもしれない。日本新薬との試合で、5点を失った9回表の守りでは失策もあった。同点に追いつかれて、なお一死一塁で投手へのバントヒットに悪送球が重なって二、三塁。その後、適時打で勝ち越しを許してしまう。さらに、失点の原因は記録されない部分にもあると、丸山は分析する。場面に応じた選手間の声かけが不十分だったため、もっと密にコミュニケーションを図っていれば防げたことがあったのではないか。また、どこかで気を抜いたプレーもあったのではないか、と。「ただ、そうした敗戦から学ぶことも多いんです」と、表情を引き締めて続ける。

 

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セガサミーと対戦した京都大会のリーグ戦第1戦では、谷本大晟が先制ソロ本塁打を放つ。

 

「名前を出して申し訳ないですが、セカンドの北川平剛はなかなか声が出せない選手でした。でも、敗戦後に『自分を見詰め直す』と言って練習の姿勢も変わってきた。このような選手が出てくれば、チームはまとまります。今はいい方向に進んでいる。それが、セガサミー戦の勝利につながってよかったです」

 チームの成長を的確に把握することのできる丸山は、2020年の都市対抗中国二次予選に敗退したあとも「このまま負けてしまったほうが、今後のチームのためになる」と話していた。チームがまとまりを欠いていると感じ、それならば負けてじっくりと向き合ったほうがいいと考えたからだ。全員で同じ方向を目指せなかった自分の不甲斐なさも口にしながら……。その試合は、三菱自動車倉敷オーシャンズに1対2で敗れた。時を経て、この京都大会では敗戦からの反省を生かして勝利をつかむことができた。

 シティライト岡山が、都市対抗に出場したのは2019年の一度きり。この年は、日本選手権にも初出場している。都市対抗中国二次予選の準決勝、第二代表決定戦はいずれも1点差の辛勝だった。丸山はこう締める。

「このシーズンを経験した選手が、今でもチームメイトに口を酸っぱくして言っています。ミスなく粘れれば勝てる。二大大会を経験した選手は、もう3分の1程度しか残っていません。また、東京ドームに行きたいですね」

 二大大会に出場した翌年の2月、取材でグラウンドに足を運ぶと、明らかにチームの空気が変わっていたのを思い出した。経験は成長を促す。だからこそ、再び都市対抗に出場してほしい。6月1日から始まる中国二次予選が楽しみだ。

【文・写真=古江美奈子】

 

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