JABA

JABA

メニュー

トピック TOPICS

【GRAND SLAM PREMIUM 199】日本一を狙うHonda熊本で頭角を現わした20歳の右腕・内田了介

bnr_grandslam_cmyk.jpeg (218 KB)

 

 昨年は岡山、北海道両大会を制するなど、出場したJABA大会で6大会続けてリーグ戦を突破しているHonda熊本は、9大会ぶりの九州大会優勝へ向け、準決勝の先発マウンドに内田了介を送った。埼玉栄高を出て3年目の右腕は、Hondaを相手に力強い投球を見せる。

 前夜の5月11日、ミーティングで大役を言い渡された内田は思わず「えっ?」と声を上げた。本人も驚きの起用を、福田大輔コーチはこう解説する。

「対Hondaの投球内容、ほかの投手の疲労などを考慮してのことです。3回をきっちり抑えてくれたらいいと考えていました」

 3月に行なわれた東京スポニチ大会の準決勝、同カードで三番手として6回から2回2/3を投げ、安打さえ許さず自責点はゼロ。九州大会ではリーグ戦第2戦で、ビッグ開発ベースボールクラブを相手に8、9回を無失点で勝利投手になっている。

「東京スポニチ大会では、貴重な経験を積ませてもらいました。好打者と対戦し、真っ直ぐで押せる場面もあれば、コントロールに苦しむことも。実戦で課題を見つけることができました。その後、ビッグ開発ベースボールクラブでの投球もあり、今回の先発を任せてもらえたのだと思います。聞いた時は、まさかと思って福田コーチを二度見しましたけどね(笑)」

 やや硬さも見られた立ち上がり、先頭打者に四球を与えるも後続を打ち取って無失点で切り抜けた。だが、2回表は一死二塁から辻野雄大にタイムリーを浴びて1点を先制される。

 

GSP199-1.jpg

内田了介のポテンシャルの高さは、入社直後から日本代表候補に選出されていることでもわかる。

 

「先制されてしまい、最悪だと思っていたところ、その裏に中島(準矢)さんの2ラン本塁打ですぐに逆転してくれました。ここで踏ん張るしかないと、3回表は力が入りました」

 一番の千野啓二郎から3者連続三振。これで勢いにのったHonda熊本はその裏、山本力也と竹葉章人のタイムリーで2点を加え、4対1とリードを広げる。だが、球数が90球を超えた5回表に二死二、三塁のピンチを招く。「この回までかもしれない」と感じた内田は、二死一、三塁で四番・井上彰吾に粘られ、その間に二盗も決められるが、2ボール2ストライクからの7球目、この日一番に右腕を振って144キロの真っ直ぐで空振り三振に仕留めた。「多少甘く入ってもいいから、しっかり真っ直ぐを投げ切ろうと考えていました。思い切りのよさは出せました」と笑みをこぼす。そうして、5回まで1失点で上村 嶺に後を託した。

 マウンドに上がること、また右腕を思い切り振ることは、内田にとって当たり前ではない。日本代表候補に選出されるきっかけにもなった入社1年目の都市対抗九州二次予選での登板後、右ヒジを痛めた。診断結果は骨棘骨折。骨棘とは、関節面の軟骨部分に見られる変形性関節症のひとつで、骨組織が増殖してできたトゲのようなものだ。

「右ヒジの骨が出っ張っている状態でした。そこから約1年間、リハビリ生活の始まりです。本当にしんどかった。また投げられるのか不安もあったし、これ以上野球を続けていても……と気持ちが落ちていました。野球をやめようかと考えたこともありました。でも、そんな時は高校時代や今のチームメイトの顔が頭を過るんです。これまでお世話になった方々、親の支え、周囲の期待、色々なことを思い出し、めげずにリハビリに取り組むことができました」

 昨春のオープン戦ではスタンドから試合を眺め、トレーニングに励む姿があった。遠い目でマウンドを見詰める内田の表情が忘れられない。その後は肩やヒジに負担をかけないよう、体幹を意識した投球フォームを作り上げた。公式戦に復帰したのは昨年の九州大会だ。「投げられるようになって、だんだんモチベーションも高まってきました」と、あの頃とは真逆の表情が眩しい。

 Hondaとの準決勝は、終盤に逆転を許して敗れた。だが、内田の投球はチームにとっても大きな収穫だ。渡辺正健監督は言う。

「先発の目途は立ってきました。ただ投げて抑えるだけではなく、マウンドでの間合いを覚え、打者との駆け引きもできるようになってきた。もっと調子を上げてくれることを期待しています」

 さらに、福田コーチはこう続ける。

「一度ケガをすると再発の怖さもありますが、それでもしっかり身体作りをしてきました。今日は投げる、抑える楽しさをあらためて感じたのではないでしょうか。さらなる成長のために要求するなら、勢いだけでなく物事をもっと冷静に見られるといいですね。例えば、練習で決め球をひたすら低目に投げ込むだけではなく、全国レベルの打者は本当に振ってくれるのか、この球で打ち取れるのか。そう考えながら投球できれば、もっとよくなると思います」

 ようやく3年目で手応えをつかみ始め、ここからが勝負だ。まずは、5月27日に幕を開ける都市対抗九州二次予選で力を発揮すること。そして、「東京ドームで投げたいです」と、内田は初めての都市対抗のマウンドを目指す。

【文・写真=古江美奈子】

 

グランドスラム61は好評発売中です!!

GSPPR-61.jpg (405 KB)

紙版(左)、電子版(右)とも、どうぞよろしくお願い致します。