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【GAME005】2000年第27回社会人野球日本選手権大会決勝/松下電器×東芝

 関西の雄・パナソニックは、1952年に松下電器として創部すると、1960年の都市対抗では早くも決勝に進出。熊谷組に9回サヨナラで惜敗したが、大舞台にはコンスタントに駒を進めて着実に実績を築いてきた。

 ただ、日本選手権でも1979年の第6回大会決勝で住友金属に敗れ、優勝候補の筆頭と評された1999年の第26回大会でも、決勝では創部7年目のシダックスに完敗。チームの歴史に“日本一”だけが刻まれていなかった。このまま無冠で21世紀を迎えてしまうのか……。そんな中で臨んだのが、2000年のシーズンを、また20世紀の社会人野球を締め括る第27回社会人野球日本選手権大会だった。

 実は、この年の都市対抗は一回戦でシダックスと対戦し、3対6と返り討ちに遭っていた。1995年からチームを率いる島田行雄監督は「勝負どころの試合になると、序盤から失点して戦意を失うか、リードしても重圧に耐えられずに自滅する。そんな精神面でのひ弱さが課題」と、あえて厳しい表現で選手を鼓舞していた。

 

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2年目でエース格を担っていた愛敬尚史は、初の日本一を達成してガッツポーズする。

 

 この大会は抽選で二回戦からの出場となり、まず一回戦を勝ち上がった日本通運と対戦。6回表に2点を先制するも、その裏に1点を返され、9回裏二死から同点弾を浴びて延長に突入する。島田監督が指摘する展開となったが、12回表に主将の西岡隆一と四番の上中芳仁が一発を放ち、何とか5対2で勝利を手にする。

 その試合で11回途中からリリーフした愛敬尚史(現・東北楽天スカウト)が先発した準々決勝も、2対1の最少リードを8回裏に追いつかれ、9回表に上野昭二がソロ本塁打を放って勝ち上がる。投手陣が踏ん張っているだけに、打線の奮起が求められた。

 NTT西日本との“大阪対決”となった準決勝も延長10回の熱戦となったが、選手たちは随所に粘りや勝負強さを発揮する。先発の鈴木 学が5回までに3点を献上するも、6回裏に長短3安打で2点を返すと、島田監督は「勝てるムードに変えてくれるはず」と、8回から愛敬をマウンドに送る。その起用は的中し、8回裏には上中が逆転2ラン本塁打。愛敬は9回表に同点弾を許すも熱投を続け、10回裏には一死満塁から山口哲也の内野安打でサヨナラ勝ちを決める。決勝の相手は、1999年の都市対抗を制した東芝だ。

 

選手たちの思いが最終回に爆発する

 

 試合巧者・東芝の先発は、サウスポーの須田喜照。松下電器の打線は4回まで完璧に抑えられたが、5回表に一気に攻略して3点を奪う。だが、松下電器の先発を任された鈴木も、その裏に無死一、三塁と攻め込まれる。島田監督は思い切って大久保勝信に交代させるも、これが裏目に出て同点とされてしまう。監督に就任してから、何度も泣かされてきた負けパターンである。

 ただ、この試合は違った。大久保は同点後に立ち直り、同じく6回から継投策を講じた東芝と無失点の我慢比べに。7回には3連投の愛敬を注ぎ込み、3対3のまま9回表を迎えると、途中から指名打者に入った吉田憲一郎がライトへライナーのソロアーチを叩き込む。一気に湧き上がる三塁側のベンチとスタンド。ダイヤモンドを駆ける吉田の目は潤んでいる。前年の決勝で敗れた悔しさを糧に、「石にかじりついてでも勝つ」と西岡が表現した選手の思いが、ついに実を結んだのだ。

 土壇場でリードを奪った松下電器の打線は勢いづき、なお一死一、三塁から田原隆三郎が右前に運んで2点目。さらに、二死満塁から井上 大がセンターオーバーの快打を放ち、3人の走者が次々とホームを駆け抜ける。三塁へ滑り込んだ井上も雄叫びを上げ、松下電器のリードは5点に。その裏は愛敬がしっかりと抑え、松下電器は三度目の正直、都市対抗を合わせれば4度目の挑戦で悲願の日本一に輝いた。

 

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古豪・松下電器を悲願の日本一に押し上げた選手たちは、大きな喜びを爆発させる。

 

 現役時代の1985年、都市対抗で日本生命に補強されて四番を任された島田監督は、橋戸賞を手にする活躍で初優勝に貢献した。そして、そこから1990年の日本選手権、1992、97年の都市対抗と全国優勝を重ねていくライバルの成熟ぶりを見ながら、「初優勝したら、チームがどう変わるかを見てきた。だからこそ、うちの選手にも初優勝を味わわせてやりたかった」と、実感を込めて語った。

 そんな島田監督の言葉を裏づけるように、松下電器は世代交代した2005年の日本選手権で2回目の優勝を飾る。次に実現したいのは、昨年までに史上2位の55回出場を果たしている都市対抗での優勝だ。