JABA

JABA

メニュー

MESSAGE

トピック TOPICS

【GAME008】2003年第74回都市対抗野球大会準々決勝/三菱ふそう川崎×日本新薬

 2000年の都市対抗で初優勝した三菱自動車川崎は、チーム名称を三菱ふそう川崎に変更した翌2001年に大会連覇を狙ったものの日産自動車九州に一回戦で敗退し、2002年は熾烈な神奈川県二次予選で敗れる。この年はバットが金属から木製に戻り、多くのチームで打線の破壊力が低下した。社会人屈指の打線を誇る三菱ふそう川崎も、このまま馬群に沈んでしまうのか。もう一度、王者の実力を見せつけたい2003年は、第二代表で2年ぶりの東京ドームへ乗り込む。 

 トーナメントの右端に入った三菱ふそう川崎は、一回戦で札幌市・サンワード貿易と対戦。先発の佐藤大士は本調子を欠きながらも粘り強く投げ、2対2で終盤に入ると、8回裏に桑元孝雄(現・東京農業大コーチ)の二塁打と髙根澤 力の中前安打で1点を勝ち越し。5回途中からリリーフした左腕の谷村逸郎が、9回表も抑えて3対2で逃げ切る。中1日で臨んだ東京都・JR東日本との二回戦では、ルーキーの五嶋貴幸が先発を任される。

 三菱ふそう川崎は、1回表一死から根岸 弘のソロ本塁打で先制すると、4回表には一死二、三塁から梶山義彦(現・三菱自動車岡崎監督)と新人・渡辺直人(現・東北楽天コーチ)の連打などで2点を加える。初めて東京ドームのマウンドに立った五嶋は、1回から6回まで毎回、先頭打者に出塁を許したものの、決め球のスクリューボールで内野ゴロを打たせ、バックの守りが3併殺を取るなど完璧にフォロー。JR東日本に得点を与えず、7回途中からは佐藤大、谷村と継投してシャットアウトする。8回表には桑元がダメ押しの2ラン本塁打を放つなど、6対0の完勝で3年ぶりに準々決勝へ駒を進める。対戦相手は、二回戦で横浜市・新日本石油(現・ENEOS)を破った京都市・日本新薬だ。

 

TC008-1.jpg (742 KB)

日本新薬は、先発の田村秀生が好投(右)。5回表には小林世拓が先制ソロ本塁打を放つ(左)。

 

一発で追い込まれた土壇場に起死回生の逆転弾

 

 三菱ふそう川崎は佐藤大、日本新薬は田村秀生の先発で始まった試合は、不気味なほどに静かな展開となる。一、二回戦とリリーフで計2回1/3しか投げていない田村は、蓄えたパワーを一気に放出するように、三菱ふそう川崎の強力打線に凡打の山を築かせる。そんな田村の好投に応えたい打線は、毎回のように走者を得点圏まで進めるも、佐藤大の丁寧な投球の前に決定打が出ない。

 そうして4回までスコアレスで進むと、5回表に日本新薬のリードオフ・小林世拓(現・日本新薬コーチ)が左中間スタンドに先制ソロ本塁打を叩き込む。これで試合が動くかと思われたが、この日の田村は左右のコーナーへの制球が素晴らしく、経験豊富な三菱ふそう川崎の中心打者もチャンスを作ることができない。田村は7回まで3安打の完璧な投球で、虎の子の1点を守る。

 日本新薬は8回裏、三菱重工神戸から補強したベテラン左腕の木林敏郎を投入。木林はトップから始まる三菱ふそう川崎の攻撃をしっかりと抑え、いよいよ9回を迎える。7回からリリーフした谷村が9回表も無失点で切り抜け、三菱ふそう川崎の最後の攻撃が始まる。日本新薬は、三菱重工神戸から補強した速球派の松田克也をマウンドへ送る。

 先頭の桑元は、さすがの勝負強さで中前安打を放つ。新保大輔が代走に送られ、髙根澤が確実に送る。打席には梶山。シドニー五輪に出場している実力者も、松田の速球に詰まってピッチャーゴロに倒れ、あとワンアウトの土壇場まで追い込まれる。

 三菱ふそう川崎の垣野多鶴監督は、三菱重工横浜硬式野球クラブから補強した齊藤裕次郎にすべてを託す。松田も勝利を意識して力んだか、3球続けてボールになる。齊藤が三塁側ベンチを見ると、垣野監督は「打て」のサインだ。齊藤は4球目のストライクを見逃す。「3ボール1ストライクならストレートで打ち取りにくる」と確信したからだ。そして、そのストレートが投げ込まれる。齊藤がフルスイングすると、芯でとらえた打球はライトへ弧を描く。やや上がり過ぎたと感じ、全力疾走したが、その途中でライトスタンドに着弾したのを確認した。

 日本新薬の応援団が陣取る一塁側スタンドは歓声が悲鳴に変わり、反対に三塁側からは割れるような歓声が沸き起こる。その中で齊藤はダイヤモンドを一周し、笑顔で出迎えるチームメイトの輪に飛び込む。

 

TC008-2.jpg (744 KB)

9回裏二死二塁、三菱重工横浜硬式野球クラブから補強された齊藤裕次郎は起死回生の逆転2ラン本塁打を放ち(左)、チームメイトの出迎えを受ける(右)。

 

 実は、齊藤は1998年に日産自動車、翌1999年には東芝に補強されて黒獅子旗を経験している。王国・神奈川でライバルチームから認められる実力を備え、補強としてどうチームに貢献するかも熟知した最強の戦力なのだ。試合後の垣野監督は満面の笑顔でこう語った。

「こんなに劇的な試合をやったのだから、その気にはなるよね」

 

 そして、2日後に三菱ふそう川崎は3年ぶり2回目の頂点に立つ。