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【GAME014】2014年第85回都市対抗野球大会二回戦/三菱重工神戸×JFE西日本

 先発のマウンドに立てば、まずは完全試合を狙う。四死球か失策があればノーヒットノーランに切り替え、安打を許したら完封、完投とベストを尽くす。大半の投手がそう考えているというが、現実に完全試合やノーヒットノーランに近づける機会はそう多くはない。だからこそ、チャンスがあればものにしたい。ましてや、大きな舞台ならなおさらだ。JFE西日本の陶山大介は、2014年の都市対抗でそんな経験をする。

 NKKと川崎製鉄水島が統合され、JFE西日本となって間もない2004年に入社した陶山は、そこから順調に成長。エース格としていくつもの白星をチームにもたらし、11年目となる2014年も都市対抗中国二次予選で代表権獲得の原動力となっていた。村上文敏監督をはじめチームメイトの信頼も厚く、東京ドームでは初戦(二回戦)の先発を任される。

 対戦相手の三菱重工神戸(現・三菱重工West)とは本拠地が近く、オープン戦をする機会も多い。互いにチームカラーも似ていると自覚しており、手の内も知っている。先発は、絶対的エースの守安玲緒。陶山も「意地の張り合いになる」と、正面からぶつかる。

 

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先発で投手戦を繰り広げたJFE西日本の陶山大介(左)と三菱重工神戸(現・三菱重工West)の守安玲緒(右)。

 

 先にマウンドに登った守安は、14球を投じてきっちりと3者凡退に。負けてなるものかと、陶山も14球で3人を仕留める。二番、三番を連続三振も同じだ。3回までは陶山、守安ともひとりの走者も許さない。

 4回表一死、JFE西日本は二番の山本洋平が四球を選ぶと、すかさず二盗を決めてチャンスを広げる。だが、走者を許してからの粘りも持ち味の守安は、橋本駿介を三振、永井裕也を二飛に打ち取り、表情を変えずにマウンドを降りる。代わって二巡目を迎えた陶山は、淡々としたペースで凡打の山を築かせ、43球と理想的な投球数で4回を終える。

 5回はともに3者凡退で、グラウンド整備が入る。このインタバールは試合の流れにも影響することがあると言われているように、6回表一死から九番の友滝健弘が両チームを通じて初安打をレフト前に放つ。さらに、リードオフの橋本拓也も技ありの安打をレフトへ。JFE西日本は先制のチャンスを築く。

 それでも、守安は動じない。むしろ、陶山の好投で「相乗効果のような状態に感じられた」と、スライダーで山本に遊ゴロを打たせ、併殺でピンチを切り抜ける。ただ、気力が充実した陶山も、逸機に落ち込むことなく、その裏も9球で3つのアウトを積み上げる。

 

本塁憤死で大きく流れが変わったか

 

 8回の表裏も3者凡退で、試合はいよいよ9回となる。JFE西日本は、前の打席で初安打を放った友滝が、先頭で鮮やかな当たりをライト前に。橋本拓はきっちりとバントを決め、一死二塁のチャンスを築く。守安は、抜群のコントロールで山本を三振に仕留めたが、続く橋本駿はその制球力の高さを利用し、初球から狙ってセンター前に運ぶ。

 

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9回表二死二塁のチャンスも、JFE西日本は本塁憤死で得点にできず(上)。

陶山(手前の背番号11)は、試合後の挨拶で守安と目を合わせる(下)。

 

 二塁走者の友滝は、迷いなく三塁を蹴る。しかし、三菱重工神戸のセンター・石上輝幸は前進してゴロの打球をつかむと、矢のような返球をホームへ。見事に俊足の友滝を本塁の手前でタッチアウトにして、最大のピンチを切り抜ける。それと同時に、その裏を3人で抑えても、陶山の完全試合は成立しないことになる。

 9回裏、陶山は先頭の森山 誠を三振に打ち取る。ただ、4球ファウルされたように、前半に比べて三菱重工神戸の打者は、陶山のボールにタイミングが合ってきたような印象だ。そう感じた刹那、八番の水江賢太郎が1ボールから陶山のストレートを振り抜くと、打球はライト前に達する。101球目で、陶山は完全試合もノーヒットノーランも逃してしまう。

 そのことが、陶山の気持ちにどんな変化をもたらしたのかはわからない。ただ、九番の小松裕来は2ストライクと追い込みながら4球連続ボールで歩かせ、石上を中飛に仕留めて二死に漕ぎ着けるも、梅津正隆(NTT西日本から補強)にも四球で満塁となる。8回までひとりも走者を出さなかった陶山は、9回裏にいきなり二死満塁のピンチに立たされる。

 三番の大島寛之は、近畿二次予選の第一代表決定戦で延長12回に決勝打を放っていた。富 光男監督が「また、おいしい場面がまわってきたな」と送り出すと、2ボールから3球続けてファウルし、6球目のボールでフルカウントに。さらに2球ファウルすると、陶山が「自信がある球」と投げ込んだカットボールがやや高く浮き、押し出し四球で試合は決着した。

 あわや完全試合から敗戦投手に――。2時間8分の試合には、野球の怖さと醍醐味が凝縮されていた。