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【GAME021】2009年第36回社会人野球日本選手権大会一回戦/大和高田クラブ×TDK

 1996年に創部した大和高田クラブは、2000年のクラブ選手権で準優勝すると、2001、02年と連続でクラブ王者となり、社会人球界でも知られる存在となった。だが、2004年からは3年連続を含む4回の準優勝と、あと一歩で頂点から遠ざかる。しかも、近畿地区では実力派のクラブチームが次々と産声を上げ、2007年は東近畿二次予選でRitsベースボールクラブに敗れてしまう。

 さらに、2009年はOBC高島と延長10回の激闘の末、4対6で敗れて本大会出場を逃す。この年は都市対抗予選でも苦杯を喫しており、残すは日本選手権しかなかった。ただ、幸運な要素もあった。パナソニックが四国大会、長野県知事旗大会、京都大会で優勝しており、すでに出場権を得た上で近畿地区の代表枠が2増の8となった。また、クラブ選手権はトータル阪神が制し、日本選手権への出場権を確保していた。

 ところが、意気込んで臨んだ滋賀・奈良一次予選準決勝で、奈良フレンドベースボールクラブに打ち負けてしまう。これで大和高田クラブの負けん気に火が点き、OBC髙島に次ぐ第二代表で近畿二次予選に臨む。

 12チームで8つの代表枠を争う戦いでは、一回戦で中山製鋼野球クラブを下すも、代表決定戦で三菱重工神戸(現・三菱重工West)に敗れる。敗者復活代表決定戦でも1対2で日本生命に惜敗したが、パナソニックが増やしてくれた増枠の代表を決める戦いでNOMOベースボールクラブに完勝し、日本選手権へ2年ぶり2回目の出場を決める。

 一回戦の相手はTDKに決まる。2006年の都市対抗で東北勢として初優勝を飾り、この年はTDK千曲川とチーム統合。投打に厚みを増し、4年連続で東京ドームに駒を進めている強者だ。それでも、近畿地区で企業チームに揉まれてきた大和高田クラブも、密かに自信を持っていた。

 

優勝チームにも善戦のベスト8

 

 大和高田クラブの一回戦は大会3日目の第3試合だったが、この日の第1試合ではクラブ王者のトータル阪神がJFE西日本に1対2。惜しくも敗れたが、粘り強く戦ったことは大和高田クラブの選手たちのモチベーションを高めたはずだ。

 大和高田クラブが池邉明秀、TDKは左腕・大原慎司(元・横浜DeNA)の先発で開始された試合は、1回表にTDKが1点を先制すると、2回裏に四番・柿元庸平のソロ本塁打で大和高田クラブが追いつく。3回表に1点を勝ち越したTDKは、5回表にも1点を追加して突き放そうとするが、その裏に大和高田クラブも活動を休止したデュプロから転籍した和田匡永の二塁打と逢坂真吾の右前安打で1点差に迫る。

 

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一回戦で同点のソロ本塁打を放つ柿元庸平。大和高田クラブは、打線が活発に機能した。

 

 次の1点を奪ったほうが流れを引き寄せそうなムードの中、6回裏の大和高田クラブは五番の佐伯裕次郎から主将の中須賀慎之介、藤田利樹、大志万修一と4人の左打者が大原から連打して一気に逆転。7回表に追いつかれると、その裏に豊田拓矢(元・埼玉西武)を攻めて1点を取り返し、8回裏にはダメ押しの1点を加えて6対4。5回途中からリリーフした左腕の米倉大介は真っ向勝負の投球で決定打を許さず、大和高田クラブはついに日本選手権で初勝利を挙げる。大きなガッツポーズを見せた米倉に、選手たちが次々と駆け寄って抱き合う。まるで優勝したような歓喜の輪が、大和高田クラブの野球にかける思いをストレートに表現していた。

 

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最後を締めた米倉大介(中央)に駆け寄り、初勝利を喜ぶ大和高田クラブの選手たち。

 

「二番手の米倉を、自信を持って投入できたことが勝因でしょう」

 吉川博敏監督は自信に満ちた表情でそう語ったが、大和高田の進撃はこれで終わらなかった。二回戦の相手は、予選でも対戦しており、2007年の初出場時は近畿二次予選の代表決定戦で破った三菱重工神戸。先発の木林敏郎は、一回戦で鷺宮製作所を相手に大会初のノーヒットノーランを達成しており、1回表、3回表に1点ずつを奪う。

 だが、勢いに乗る大和高田クラブの打線は、3回裏に二死満塁の好機を築き、佐伯が中前に弾き返して同点とする。5回表に1点を勝ち越されるも、その裏には柿元のタイムリーで3対3と食らいつく。そうして延長にもつれ込むと、10回裏に三菱重工神戸の三番手・山本哲哉(現・東京ヤクルトコーチ)を一死一、三塁と攻め、柿元が左犠飛を打ち上げて劇的サヨナラ勝ちを収める。

 果たして、準々決勝ではJR九州とも激闘を展開。3回裏に2点を先行されるも、5回表二死から4連打で一気に逆転する。その裏に追いつかれ、9回裏に1点を失って3対4でサヨナラ負けしたが、JR九州がこの大会を制したことを考えれば、大和高田クラブの戦いぶりも素晴らしいものだったと言っていい。それでも、中須賀が「これで満足するわけにはいかない」と言ったように、大和高田クラブは現在もなお躍進を続けている。3大会ぶり4回目の出場となる今大会では、どんな戦いを見せてくれるだろう。