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【GAME030】1998年第53回東京スポニチ大会一回戦/日産自動車×三菱重工神戸

 2013年にJX-ENEOS(現・ENEOS)が都市対抗で51年ぶりの連覇を達成すると、翌2014年は準決勝でJX-ENEOSを倒した西濃運輸が頂点に立つ。西濃運輸は、連覇を狙った2015年に二回戦で敗れたが、その勝者の日本生命が18年ぶり4回目の優勝を果たした。また、2016年にトヨタ自動車が悲願の都市対抗初優勝を飾ると、翌2017年は二回戦でトヨタ自動車に逆転勝ちしたNTT東日本が黒獅子旗を手にする。さらに、2018年はNTT東日本に準々決勝で競り勝った大阪ガスが初めて日本一となり、2019年には初戦(二回戦)で大阪ガスとの延長タイブレークをものにしたJFE東日本が王座につく。今年の王者・ENEOSも、昨年の準々決勝で惜敗した東京ガスを決勝で倒したように、社会人野球には王者を上回ったチームが新しい王者になるという歴史がある。

 1998年の第53回東京スポニチ大会でも、そんな顔合わせがあった。1997年の第25回社会人野球日本選手権大会では、三菱重工神戸(現・三菱重工West)が初優勝した。会場がグリーンスタジアム神戸(現・ほっともっとフィールド神戸)から大阪ドーム(現・京セラドーム大阪)に移された大会で、三菱重工神戸は全5試合で野手の交代が一度もなかった。また、投手も紙野泰妃か木林敏郎が先発し、谷藤 大を挟んで最高殊勲選手賞の新井正広で締めるパターン。つまり、14名の選手で日本一を手にしていた。

 そのメンバーから、強肩捕手の小田幸平(現・中日コーチ)がドラフト4位で巨人へ入団したものの、投打に充実した戦力で新たなシーズンに臨んできた。そんな三菱重工神戸と一回戦で当たったのが日産自動車だった。日本石油(現・ENEOS)が1993、95年の都市対抗を制したあと、1996年に一挙4名をプロへ送り出すと、神奈川の勢力図は一気に変わる。日本石油が敗退した予選で第一代表に名乗りを上げた日産自動車は、東京ドームでもベスト4に進出し、それを足がかりに黒獅子旗を目指していた。強い決意で迎えたシーズンの幕開けに、前年の日本選手権王者と対戦することは選手たちのモチベーションを高めた。

 

落ち着いた試合運びにチームの成熟が見られた

 

 大会2日目、3月8日に川崎球場で行なわれた試合は、三菱重工神戸が左腕エースの木林、日産自動車は3年目の右腕・川越英隆(元・千葉ロッテ)が先発する。1回表、三菱重工神戸は川越の立ち上がりを攻めて2点を先制する。だが、この時の日産自動車には、リードされても慌てる様子がない。そして、2回裏には敵失や黒須 隆の二塁打で同点に追いつき、3回裏に1点を勝ち越すと、5回裏には三番に座るベテラン・上島 格がライトへ2ラン本塁打を放ってリードを3点に広げる。

 三菱重工神戸が、王者の底力を見せたのは6回表だ、立ち直ったかに見えた川越から、前年に指名打者で社会人ベストナインを手にした大川広誉が会心の3ラン本塁打で振り出しに戻す。ここで、日産自動車は二番手に磯 貞之を送り込む。その磯が後続をテンポよく打ち取ると、その裏のチャンスで伊藤祐樹(現・三菱自動車岡崎ヘッドコーチ)が右前に勝ち越しタイムリー。7回裏には3安打4四死球で4点をもぎ取り、白星を手繰り寄せる。8回裏にも1点を挙げた日産自動車は、11対5で三菱重工神戸を撃破。ここからいい波に乗る。

 

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日産自動車は、二番手・磯 貞之の力投からいい流れに乗る。

 

 二回戦は、日産自動車九州との“兄弟対決”。3回までに6対5となる打撃戦も、リードを許すことなく、終盤の追い上げも磯が何とか凌いで11対9で辛勝する。さらに、準々決勝には東芝が勝ち上がってきた。都市対抗神奈川二次予選でも対戦するであろうライバルを相手に、日産自動車の打線は大爆発。スタメンでマスクを被った20歳の武田真介が一発を含む2安打1打点をマークするなど、15安打を浴びせて9点を奪い、先発の川越は一回戦の汚名を返上する4安打1失点の好投。8回コールドの快勝で準決勝へ駒を進める。

 NTT東京との準決勝は、日産自動車が16安打、NTT東京が12安打の空中戦となり、最後は守備が乱れて11対12でサヨナラ負け。それでも、六番でポイントゲッターを担った岡本二郎が打撃賞に輝き、伊藤が遊撃手で、岡本と鷹野史寿(元・東北楽天)は外野手で大会優秀選手に選ばれる。

 

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岡本二郎が勝負強さを発揮し、打撃賞と大会優秀選手に選ばれた。

 

 このあと、5月のベーブルース杯大会を制した日産自動車は、神奈川第三代表で東京ドームへの切符を手にし、14年ぶり2回目の優勝を成し遂げる。二回戦ではNTT東京にリベンジし、準々決勝で東芝を退ける戦いぶりは、東京スポニチ大会での経験が生かされているように感じられた。ただ、そんな強豪も2009年限りで活動を休止している。多くのファンが待望している復活はいつになるのだろう。近い将来、この1998年のようなスタンドを沸かせる戦いを見せるため、社会人野球の舞台に帰ってきてもらいたい。