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都市対抗に「クロックボード」初登場 社会人野球NOW vol.1

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時間短縮で価値向上へ

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=東京ドームで実際に使用されるクロックボード

東京ドームで714日に開幕する第94回都市対抗野球大会には、大会史上初めてピッチクロック用の「クロックボード」が登場する。投球間の時間制限(12秒または20秒)をカウントダウン表示するタイマーで、今季から米大リーグでも導入され話題になった。日本の社会人野球界が長年、課題の一つとしてきたのが、試合時間を短縮し、より気軽に観戦を楽しんでもらうこと。日本野球連盟(JABA)は、時間短縮は野球の価値向上につながり、大きな意義があるとしてクロックボードの導入に踏み切った。6月中旬に都内で開かれた都市対抗の監督会議で、JABAアスリート委員会の川口朋保副委員長は「試合時間短縮にとどまらず、テンポの良い投球などで社会人野球の魅力を観客に伝えられると確信している」と強調した。

スピードアップ特別規程の一環で導入

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=横浜スタジアムで開催された都市対抗西関東予選で、ピッチクロックを操作する担当者

クロックボードは、JABA11日付で「スピードアップ特別規程」を制定したことに伴い、登場した。投手は一定時間内に投球動作を開始しなければならず、投手がボールを受け取った瞬間、残り時間のカウントダウンが始まる。制限時間は、走者がいない場合は12秒、いる場合は20秒。時間切れになると球審が、走者がいない場合は直ちにボールを宣告。走者がいる場合は、初回は警告を発し、2回目以降はボールを宣告する。

16分程度の短縮効果

12秒・20秒の時間制限自体は以前からあり、従来は二塁塁審が手元のストップウオッチで計測していた。ルール適用を厳格化する流れの中で、米マイナーリーグで既に活用されていたクロックボードに白羽の矢が立った。ただ、時間を計測するための専用機材は国内では普及していない。候補に挙がったさまざまな代用機材の中から採用されたのが、バスケットボールの試合で使われるショットクロックだった。クロックボード導入後、3~4月に開催された主要大会の試合時間をJABAが検証した結果、平均で16分程度短くなったことが明らかになった。

投手「ピッチクロック気にならない」

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=東京ドームへの切符を手にした試合の直後、報道陣の取材に応じる藤村投手

東京ドームへの切符をかけた全国各地区の都市対抗予選でもクロックボードが設置された。6月上旬、横浜スタジアムで開催された西関東予選の第2代表決定戦。東芝の藤村哲之投手は一度も時間切れになることなくテンポ良く投球し、ジェイファム打線を116球で完封した。藤村投手は「捕手のサインに首を振っていると時間を超えてしまう。普段から配球や攻め方をしっかり話し合い、首を振る回数をできるだけ少なくしようと準備してきた」と明かす。「準備を積み体が慣れているので、試合中、ピッチクロックは気にならない。本大会もいつも通り臨む」と語った。

観客からはさまざまな声

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=クロックボート(画像右上)が設置された横浜スタジアムで試合を見る観客

この試合を見ていた観客からはさまざまな声が聞かれた。「ずいぶん投げ急いでいるな、と感じた。もっとじっくり間を取ってもいいんじゃない、と思った場面もあった」と語るのは、東芝の男性社員(59)。ピッチクロックについては知らなかったといい「そういうルールならそれでいいと思う」と話した。「球場で野球を見るのは人生初」という同社の男性新入社員(18)は「テンポの良い試合が見られて楽しい」と笑顔を見せ「これからも応援に来たい」と話した。一方、普段は大学野球を中心に観戦しているアマチュア野球ファンの女子大学生(22)は「これでも高校、大学に比べるとまだ長い」とこぼす。この日の試合は2時間39分に及んだ。「社会人野球は試合時間が長すぎてファンが増えづらい面があると思う。導入はいいことだ」と話した。

京ドームでは4機設置

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=東京ドームでピッチクロックの設置場所を確認する関係者

都市対抗本大会の開幕が迫る中、JABAなどは東京ドームでクロックボードの設置場所を確認した。配置は、バックネット裏の左右に2か所と、一、三塁側にそれぞれ1か所で計4か所。予選などではバックネット裏に1機のみ設置されるケースが主だったが、投手から残り時間が見える一方、打者からは見えないことが課題だった。本大会では打者からも見える位置にクロックボードが設置され、公平性が高まることが期待される。また、アスリート委員会の川口副委員長は都市対抗の監督会議で「(ある大会で投手が)分かっていながら20秒を経過して警告されるケースもあった」と指摘し、「野球の価値を向上させる手段の一つとしてピッチクロックを採用しているという趣旨を、今一度理解していただきたい」と呼びかけた。

けん制回数も制限、社会人野球の変革目指す

「スピードアップ特別規程」による改革は、ピッチクロックの採用にとどまらない。けん制の回数も制限され、1人の打者に対して2回は許されるが、3回目は走者をアウトにしない場合などはボークとなり、走者の進塁が認められることになった。JABA規則・審判委員会の桑原和彦委員長は「投手がどんどん投げ、戦いがよりシンプルになれば、野球の本質的な面白さを再発見することにつながる。『社会人野球は変わった』という印象を観客に与えられるはずだ」と言葉に力を込めた。

(毎日新聞社野球委員会・中山敦貴)