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第94回都市対抗野球が閉幕 谷田部専務理事に聞く(上) 社会人野球NOW vol.2

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トヨタ自動車の優勝と東海勢躍進 

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=優勝を決めて喜ぶトヨタ自動車の選手たち

 第94回都市対抗野球大会は、豊田市・トヨタ自動車が7年ぶり2回目の優勝を果たし、熱戦に幕を降ろした。今年5月に新型コロナが5類へ移行したことを受け、コロナ以前とほぼ同じ形で運営された今大会。東京ドームの12日間で得た収穫と来年以降に向けた課題は? JABAの谷田部和彦専務理事に聞いた。【聞き手:毎日新聞社野球委員会事務局長・栗林創造】

--トヨタ自動車が7年ぶりに黒獅子旗を手にしました。

 抽選会で会場が一番盛り上がったのは、昨年の日本選手権を制したトヨタ自動車とHondaの対戦が決まり、その勝者が都市対抗連覇の懸かるENEOSと2回戦で当たる可能性が生まれた瞬間でした。

大会に入って感じたのは、嘉陽投手を中心とした投手陣と鉄壁の守り、しぶとい打線ですね。あれを「非の打ち所がない」と言うのでしょう。あれだけのピッチングをする投球陣に加え、守りは無失策。打率はそれほど良くありませんでしたが、ここぞという場面でしぶとさを発揮しました。決勝戦の先制2ランなど、まさにそうでした。

 三菱自動車岡崎、東海理化、バイタルネットなど久しぶりに出てきたチームの活躍は見事でしたね。バイタルネットは1回戦でENEOSと対戦し、前半は互角に戦って前回覇者を苦しめました。三菱自動車岡崎と東海理化はベスト8入りを果たしました。東海理化は都市対抗初勝利を挙げましたし、小野賞にふさわしい活躍でしたね。

 また、大会を通じて印象に残ったのは東海勢の躍進です。6チームのうちベスト8に5チームが残りました。東海地区はマナー面を含め、いろいろなことに積極的に取り組んでいます。JABA大会や2次予選を活性化しようと連盟を挙げて取り組み、実際に盛り上がりを感じさせる地区です。そういったことがプレーに影響している面もあると思います。

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=谷田部和彦専務理事

4年ぶりの通常開催 

--「通常開催」は4年ぶりでした。

 やはり声を出せるようになったことは大きいですね。点が入った場面や勝敗が決まった瞬間、こうした時の場内のどよめきは、昨年まで感じることができなかった。来場者も、そう思ってくださったのではないでしょうか。

--ここ3年、運営面で苦しい時期が続きました。

 「応援団なし、一般のお客さんだけ」で開催したのが2020年。ボールがバットに当たる音やミットに収まる音、グラウンドの選手たちの声が場内に響いた年でした。21年に応援団が復活しましたが、壇上の人数に上限があったり接触を禁止したり、いろいろな制限を設けていました。昨年も応援団やチアリーダー、ブラスバンドの人数に縛りがありました。今年、こういった制限がなくなり、それぞれ独自の応援ができたのではないでしょうか。

 応援団コンクールが復活したのは大きかったですね。事前にアナウンスしていたので、皆さん相当工夫を凝らしていると感じました。

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=ご当地キャラクターも登場した王子の応援風景

応援団コンクールも4年ぶり 

--応援団コンクールも4年ぶりの開催でした。審査対象を1回戦だけにして五回終了時に2分間ずつ演技機会を設けたり、公平性を高めるため審査員に外部の人を招いたりと、審査方法を含めて運用を大きく変えました。

 応援団が2分間で最大のパフォーマンスを発揮できたかといえば、「どうだろう」と思います。また、五回終了時の演技にスポットライトが当たっていますが、試合全体を通したスタンドとの一体感や応援団のリーダーシップは、実際に見ないと分からないところがありますよね。敢闘賞を獲得した七十七銀行は、スタンドで見ていると、他チームとどこか違う一体感が伝わってきました。

 審査に加わった立場から言うと、各チームにはもっと郷土色を出す工夫をしていただきたいですね。例えば、JR東日本東北は五回終了時ではない場面で、地元の踊りを壇上で披露していました。ああいうのはすごくいいなと思いました。また、「コロナ禍で先が見えない。でも前に進もうよ」とアナウンスをし、マスクを外して踊りを再開する演出があり、何か心を打たれました。

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=コバルトブルーに染まったJR西日本のスタンド

戻ってきた観客

--入場者は速報値で31万人超、前回大会比約12万人増となりました。

 チーム席については、「特定シード」(※10000人以上動員できるチームが1回戦の日時を選べる制度)を復活させたという面があります。ただ、それ以外にも10000人に近い動員をされたチームがありました。

 もちろん、この流れは来年以降も持続しなければなりません。もっと言えば、完全には19年以前に戻っていないので、以前の水準を上回るようにしなければと考えています。

--来場者に強い印象を残したと思えるイベントは何でしょう。

 7月23日(日)に実施したキッズチアのパフォーマンスはすごく良かったと思います。400人の子どもたちがグラウンドに出てきた時の場内のどよめきというか、まだ出てくるのかという驚きというか。小さな子どもたちが走ってグラウンドに広がり、外野がいっぱいになった。圧巻でしたね。ご依頼した代表者と話をしたのですが、Jリーグやプロ野球で同じような事をしたことがあるそうです。それと都市対抗との違いを聞くと、「応援団やチアが一緒に手拍子をしてくれる。ああいったことは今まであまりなかった」と言ってくださいました。子どもたちも非常に盛り上がったのではないでしょうか。

--今までと違った手応えがあるようですね。

 今回、さまざまな場面で「都市対抗が注目されている」と感じました。いろいろなところから「都市対抗とコラボしたい」という話が来たのですが、これは今まであまりなかったことです。映画のプロモーションで互いに協力をという話が来たし、まだ放送されていませんが地上波の番組のロケ地にもなりました。都市対抗が世間から一定の評価を得ていることを示しているのではないでしょうか。