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2023年総括と24年の展望 坂口裕之アスリート委員会委員長に聞く  社会人野球NOW vol.12

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昨年は、トヨタ自動車が都市対抗で前年の日本選手権に続く全国制覇を果たし、秋の日本選手権は大阪ガスが頂点に立った。2024年の社会人野球界は果たして? 日本野球連盟アスリート委員会の坂口裕之委員長に23年を総括してもらい、新たなシーズンの展望を聞いた。【聞き手=毎日新聞社野球委員会・栗林創造】

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=坂口裕之アスリート委員会委員長

 東海勢の躍進が目を引いた都市対抗

――昨年の都市対抗は、どんな印象を持たれましたか。

坂口 東海地区の躍進が目立つ大会でしたね。19年から関東勢の都市対抗優勝が続き、「打倒関東」のムードが生まれる中、22年の日本選手権をトヨタ自動車が制しました。その日本選手権覇者を乗り越えようと東海地区が大きくレベルを上げて迎えた夏、トヨタ自動車が都市対抗でも頂点に立ったという印象です。ベスト8に東海勢の5チームが残ったことが、エリア内の相乗効果を示しています。

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=都市対抗で優勝し、胴上げされるトヨタ自動車の藤原航平監督 

 戦力的には、「エース格が1人」ではなく、補強選手を含めて「チームに2人のエースがいる」といった質の高いチームが勝ち上がりました。

 トヨタ自動車は嘉陽宗一郎投手を中心に、松本健吾投手、補強の森田駿哉投手(ホンダ鈴鹿)とコマがそろっていました。そして抑えには渕上佳輝投手。複数投手を柱にしたチーム作りが、前年秋から確立されていたと思います。

 ヤマハもベテランのフェリペ・ナテル投手と若い選手の融合がうまくできていましたね。

 攻撃で言えば、22年にホームランが多く出たことを受け、バッテリーが本塁打をどう防ぐかが見どころになったと思います。心強かったのはベテラン勢の活躍です。その代表が、やはりトヨタ自動車の北村祥治選手や樺澤健選手でした。勝利に導く勝負強さが際立っていました。

 新型コロナが大会運営に与える影響がほぼなくなり、前年以上に応援が活発になりました。来場者も増え、選手を後押ししてくれる応援の力が大きかったと思います。華やかな都市対抗が戻ってきたのは、うれしい限りです。

「打倒関東」のシーズン

――日本選手権はいかがでしょう。

坂口 優勝は大阪ガスで、決勝の相手がホンダ熊本でした。大阪ガスも2本柱をしっかり確立するなど投手陣が整備されていましたね。都市対抗で補強選手として活躍した清水聖也選手、三井健右選手といった若いクリーンアップの活躍が印象に残リました。

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=日本選手権で優勝し、声援に応える大阪ガスの選手たち

 ホンダ熊本は、持ち前の攻撃力が目立ちました。元々、片山雄貴投手を中心に守備は固めてられており、年々力を付けている印象です。

 日本選手権は、夏に思うような結果を残せなかったチームが立て直してきた大会でした。大阪ガスは都市対抗に出場できず、ホンダ熊本は上位進出を逃しました。このほか、都市対抗で初戦敗退した西濃運輸と、このところ上位に食い込めなかった近畿勢も日本生命が4強に残りました。各チームが、秋に成果を出せるよう準備してきたことがうかがえました。

――23年のベストナインついて、特徴は。

坂口 指名打者を含め10人のうち5人が東海地区の選手です。このほか日本選手権で優勝した大阪ガスと準優勝のホンダ熊本から2人が選ばれました。一方、関東からはENEOSの丸山壮史選手だけで、このことからも各地区が「打倒関東」の意識を持っていたことがうかがえます。

 ホンダ熊本の石井元選手は、現役最後の年のベストナインになりました。印象的なのは、年々打撃が力強さを増してきたことです。23年は都市対抗と日本選手権で効果的な本塁打を放つなど、彼の力でチームの破壊力が増していました。年齢を重ねるごとに成長するのが社会人野球の魅力。うれしい表彰になりましたね。

ピッチクロック2年目 24年シーズンへの期待

――ピッチクロックが導入され、2年目を迎えますね。

坂口 社会人野球の価値をどこに求めるかとJABA全体で考える中、タイムパフォーマンスも価値向上の一つであり、喫緊の課題だと位置づけました。試合時間を短くするという大命題について、20年までスピードアップという言葉を使ってきました。現在は「野球の価値を高めるため、試合時間の最適化が必要だ」と説明している状況です。

 24年中にもピッチクロックが日本のルールブックに記載される可能性があり、そうなると25年から国内でも全てのカテゴリーで導入されることが考えられます。こうした状況で、社会人野球が他のカテゴリーに先がけてピッチクロックに取り組んでいることに価値があります。「球界の手本」になるというのが我々の立ち位置です。

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=都市対抗で登場したピッチクロック用のボード

――24年シーズンへの期待をお聞かせください。

坂口 東海地区のトヨタ自動車と近畿地区の大阪ガスが2大大会を制し、九州のチームも上位に食い込んだ23年。どのエリアのチームも優勝を目指せると感じさせ、実力伯仲の年になると期待しています。アジア選手権の優勝で23年シーズンは終わりました。この大会で活躍した選手が、24年シーズンを引っ張ってくれると思います。それぞれのエリアから選んだメンバーなので、かなりレベルアップが図られる年になります。

 コロナが明けて大きな規制もなく、まさに復活の1年となる24年は、JABAのスローガンである「JABA FAIR AND SQUARE -正々堂々と。-」の通り、社会人野球の魅力と価値を大きく高めてくれることを期待しています。