JABA

JABA

メニュー

トピック TOPICS

2023年の国際大会と26年アジア大会への展望 日本代表・川口朋保監督に聞く  社会人野球NOW vol.13

hp_banner_yoko__small.png

昨年の日本代表は、石井章夫監督が指揮を執ったアジア大会で銅メダルを獲得。12月に開催されたアジア選手権は、アジア大会後に就任した川口朋保監督のもと、優勝を果たした。26年には愛知・名古屋でアジア大会が開催される。23年の国際大会で得た収穫と今後の強化方針は? 川口朋保監督に聞いた。【聞き手=毎日新聞社野球委員会・栗林創造】

MicrosoftTeams-image (17)__medium.png

=川口朋保日本代表監督

アジア大会で銅メダル、アジア選手権は優勝

――昨年の日本代表の活動を振り返ってください。

川口 秋に第19回アジア競技大会(中国・杭州)、冬場に第30回BFAアジア選手権大会(台北)に出場し、11月から12月にかけてアジアウインターリーグにも参加しました。

 アジア大会の野球は、九つの国と地域が参加して開催されました。セカンドステージから出場した日本代表は、3位決定戦で中国に勝って銅メダル獲得しました。野球は第11回大会で公開競技としてスタートし、今回を含め日本代表は全大会でメダルを獲得しています。次のアジア大会は26年に愛知で開催されるので、そこでの金メダルが目標ですね。

 アジア選手権の日本代表は、前回大会まで全ての大会でメダルを獲得し、今回も優勝を果たしました。タイとフィリピンに日本人コーチが参加し、アジアで日本の野球がかなり浸透しているという印象を持ちました。

 MicrosoftTeams-image (18).png

=アジア選手権で優勝した日本代表チーム

韓国・台湾・中国に5勝2敗

――アジアのライバルたちを、どう見ましたか。

川口 韓国・台湾・中国との対戦を振り返ると、23年はトータルで5勝2敗でした。日本代表の投手陣が残した数字は、7試合で8失点、被安打数41、被長打数6で、アジアの中でもレベルが高いことが証明されました。一方、課題も顕著に出ましたね。攻撃面の数字は、得点13、安打数44、長打数7で、長打力と得点力という強化ポイントが浮き彫りになりました。

 アジアのチーム見て、いくつか感じたことがあります。

 まず、韓国と台湾の投手のストレートが思った以上に速かったことです。韓国は140キロ台後半から157~8キロを投げる投手が多く、台湾も同じような傾向でした。韓国や台湾にはプロの選手がいますが、これらの投手と戦っていかねばなりません。球種やボールの特徴を、うまく捉える能力(コンタクトの確率を高める能力)が必要になってきます。

 日本の投手は140キロから152~3キロという球速帯で、韓国・台湾の投手と比較しても5キロ前後劣っています。ここを、球速をあげるかあるいは球質を高めて更にレベルアップさせていく必要があります。

 打撃面で気づいたのは、韓国や台湾で、戦術面での変化を感じたことです。長打を打てる選手は当然いますが、送りバントやエンドランを多用するようになってきました。日本代表なら積極的に攻撃するといった場面で、送りバントをしてくることがありました。日本の投手は制球が良くフィールディングもいいので、バント失敗でチャンスを潰してくれた事例もあります。せっかくパワーがあるのにもったいないという印象を持ちました。

 中国も視野に入れなければなりません。国を挙げて野球に力を入れて競技人口が増えてくれば手ごわい相手になります。次のアジア大会では中国のレベルが上がっている可能性があります。

 MicrosoftTeams-image (19).png

=アジア選手権から帰国した日本代表の選手たち。中央は中村迅主将(NTT東日本)

スタッフ体制の定着

――日本代表の現状と課題は?

川口 まず攻撃力ですね。台湾や韓国の投手は、155~8キロの球を連発してきます。質が高い150キロ以上の投球に、いかにコンタクトできるかが大事になります。スイングスピードが速いほど打球速度が速くなり、打球は遠くに飛びます。ただ、それだけで「打ち勝てる」とはならない。私たちはコンタクトの質を高めることを次のテーマに掲げています。

 続いて投手力。先に述べたように日本の投手陣は国際大会で十分通用します。加えて、これまで代表として頑張ってきた投手以外に、アジア大会で通用する選手が出たことは心強かったですね。

 とはいえ相手も研究してくるので、さらなる成長が必要になります。日本代表の共通課題は、フィジカルをどう鍛えるかです。プレーのパフォーマンスと筋量のバランスは一人一人異なり、筋量を増やすとパフォーマンスに影響が出る選手がいるのは確かです。個々人にどんなアプローチが効果的かを突き詰めることが重要です。

 最後はスタッフ体制について。メディカル、メンタル、フィジカル、データといった各領域のスタッフに参画してもらい、アプローチの可視化を進めてきました。この体制が定着したことは大きいのですが、専門領域事案を各コーチと選手に落とし込むコーディネイターが必要だとも感じています。

高い目標を掲げ

――日本代表の目指す姿は。

川口 「侍JAPAN社会人代表チームの持続的成長」を掲げています。高い目標にチャレンジすることでスタッフと選手の「成長」を促すのがチームスタンスです。スタッフ・選手には「目標は金メダル獲得。世界一を目指す」と話しています。アジア大会のレベルを目指すと成長はそこまでになってしまいます。社会人代表としてはアジア競技大会が最大の大会ですが、社会人代表でもメジャーチームを倒そうという意識で取り組んで行こうと思っています。

 24年は9月に中国でWBSC・U-23ワールドカップがあります。参加は12チーム。10日間で9試合を戦うハードなスケジュールで、この大会は7イニング制で実施されます。25年は第31回BFAアジア選手権大会とアジアウインターリーグ。そして26年に第20回アジア競技大会という流れになっています。