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【GRAND SLAM PREMIUM 196】1年ぶりに公式戦出場の沖縄電力が都市対抗県一次予選を突破

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 もう二十余年にわたって戦いぶりを見てきた沖縄電力が、創部されたばかりの新鋭のような初々しさを放っている。ベンチから元気のいい声は出ているが、どこか不安を打ち消そうとするニュアンスが伝わってくる。

 沖縄県の社会人野球は、都市対抗に4回、日本選手権には6回出場している沖縄電力を筆頭に、創部15年のエナジックがライバルと言っていい力をつけて鎬を削っている。さらに、クラブ日本一を手にしているビッグ開発ベースボールクラブ、シンバネットワークアーマンズベースボールクラブも決して侮れない実力を秘める。実際、都市対抗沖縄県一次予選ではクラブが企業を上回ることも珍しくなく、ゆえに独特の緊張感に包まれるのだ。

 

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約1年ぶりとなる公式戦に臨み、一体感あるムードで勝利を目指した沖縄電力の選手たち。

 

 沖縄電力は、昨年4月の四国大会出場中に新型コロナウイルスの陽性者を出し、大会途中で出場を辞退した。その後、都市対抗沖縄県一次予選では第二代表となったものの、会社の方針を受けて九州二次予選の出場権をビッグ開発BCに譲る。そこから公式戦への出場をすべて見合わせ、コロナの鎮静化までひたすら練習に励んでいた。

 幸い、今シーズンは通常の活動をできることになったのだが、九州地区では公式戦での勝利数などから算出したポイント上位のチームしかJABA大会への出場権を得られないため、この都市対抗沖縄県一次予選にぶっつけ本番で臨むことに。そして、新規参入の日本ウェルネススポーツ大学沖縄との一回戦に10対2で勝利を挙げると、二回戦ではシードのエナジックと激突だ。静岡大会でJFE東日本と西濃運輸を倒したエナジックには勢いがあり、自信もつけている。難しい試合になるのはわかっていた。

 それでも、先発を任された内間敦也は力強いストレートを軸に気迫のこもった投球で、エナジックの打線にチャンスさえ作らせない。その間に何とか先制点を奪いたかったものの、エナジックの先発・井手真悟も緩急を駆使した投球で的を絞らせない。沖縄電力は5回表に一死一、二塁のチャンスを築くも、後続が打ち取られてスコアボードにはゼロが並ぶ。

 

自信を持ってチャレンジしていこう

 

 選手たちがモチベーションを失わないように、苦しい時期もコミュニケーションを密にしてきた平田太陽監督は、ルーキーの山城祐飛を二番ファースト、石原結光を八番キャッチャーでスタメン起用。刺激を与えながらチーム作りに腐心し、久しぶりの公式戦では犠打でチャンスを広げる堅実な攻撃に徹する。

 ただ、6回表の一死満塁も無得点と嫌な空気が漂い始める。そんな7回表だった。先頭の小濱佑斗が敵失で出ると石原が送り、知念佑哉の遊ゴロの間に三塁へ。ここで打席に立ったリードオフの知念大成は、詰まりながらもセンター前に落とし、ようやく1点をもぎ取る。

 続く8回表も、主将の田場亮平が中前安打を放つと、四番に座るベテランの金城長靖も送りバントだ。「1点で終わるゲームじゃないよ」という声が、何としても勝ち切るという強い気持ちを示している。だが、エナジックも継投で2点目を許さない。

 

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攻守にチームを牽引する主将の田場亮平(左)とエナジックを相手に2安打完封勝利を挙げた内間敦也(右)。

 

 果たして、1対0のまま迎えた9回裏は、内間が一死から2本目の安打を許し、二死二塁となって外野手は前進守備に。三番の古堅宗磨はセンターへ大きな飛球を放ったが、宮國汰都が必死に背走してフェンス手前でキャッチ。最少リードを守り切って、第一代表決定戦に駒を進めた。

「選手たちは、昨日の一回戦ではもっとガチガチでした」

 平田監督はそう苦笑したが、安堵の表情も見て取れた。この勝利で硬さも取れてきたか、一日置いた4月19日の第一代表決定戦では、降雨の中でも高い集中力を発揮。シンバネットワークアーマンズBCを7対0で退け、九州二次予選への切符を手に入れた。

「約1年ぶりの公式戦なので、やはり硬さは出てしまった。ただ、その間も都市対抗で勝つために、全員で準備をしてきたので、どこまで自信を持って戦えるかがポイントでした。キャプテンとしては、変に構えず、どんどんチャレンジする気持ちでやっていこうと声をかけた。いい結果になってよかったです。二次予選にもつなげたいですね」

 主将の田場がそう振り返るように、沖縄電力の選手たちはきれいに勝とうとせず、泥臭くプレーした。一人ひとりの能力は高いものの、これまでは試合展開によって粘り切れないところが課題とされたチームは、コロナ禍を乗り越えたことで一体感を醸成したという印象だ。2021年にHonda熊本の補強で都市対抗決勝の舞台を経験した田場を中心に、9年ぶりとなる東京ドームまで突っ走りたい。

【文・写真=横尾弘一】

 

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