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【GRAND SLAM PREMIUM205】地に足の着いたチームで金メダルを目指す――日本代表選考合宿が行なわれる

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 923日から中国・杭州市で開催される(野球競技は924日~107日に紹興市野球・ソフトボール・スポーツセンターで実施される)第19回アジア競技大会に出場する日本代表の選考合宿が、624日から3日間にわたってJR東日本柏野球場で実施された。プロスペクト・リストの102名から以下の39名が招集され、石井章夫監督らスタッフの前で投打にキレのあるパフォーマンスを披露した。

 

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 練習を取材していて驚かされたのは、グラウンドを包む空気がそれまでの日本代表選考合宿とはまったく異なっている点だ。39名を24名に絞り込むゆえの高い緊張感や、侍ジャパンのユニフォームを身につけたいというソワソワ感がまったくない。だが、それこそが2018年のアジア競技大会を銀メダルで終えたあと、石井監督や選手たちが眼差してきたチーム作りの成果なのだろう。

 日本代表と言えば、国際大会の経験が豊かな中堅・ベテランと、プロも目指して高いパフォーマンスを見せる若手の勢いが融合したチームカラーが特長だった。しかし、若手は厳しい勝負でその勢いを止められ、自分らしいプレーができなくなってしまうことがある。そこで、石井監督は自身の考え方以上に日本代表のチーム・コンセプトを明確にし、全日本ジュニア合宿、アジア・ウインター・ベースボールなどで選手たちとの共有を図る。そうして、時間をかけて国際大会を念頭に置いた上で個々のスキルアップを求めることにより、選手自身が普段から自分のストロング・ポイントを着実に伸ばし、それをチーム力に反映させるプロセスが構築された。

 

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守備練習に励む主将の北村祥治(トヨタ自動車=手前)とU-23日本代表からステップアップしてきた丸山壮史(ENEOS=奥)。【写真=宮野敦子】

 

 2020年からのコロナ禍で、その取り組みを結果につなげることはできずにいたが、昨年の第4U-23ワールドカップでは、初めて社会人のみで編成されたチームで世界一に。次は、プロ選手も含めたチーム編成の韓国やチャイニーズ・タイペイをも上回れることを証明したい。

 もちろん、投球や打撃のデータを数値化することにより、選手一人ひとりの長所や改善点、その方法が明らかにすること、また専門スタッフによってフィジカル、メディカル、メンタルといった様々な視点から成長を促す取り組みは継続されており、地に足の着いたチーム作りが確実に前進していると実感した。

 そんな選考合宿には、ENEOSの田澤純一投手も招集された。2007年のワールドカップで日本代表入りし、この大会中にボストン・レッドソックスのスカウトの目に留まった田澤は、翌2008年の都市対抗で優勝の原動力になると、メジャー契約を提示したレッドソックスへ入団。2013年には、セットアップを担ってワールド・シリーズ優勝を経験する。

 

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捕手の木南 了(日本通運=右)と対話する田澤純一(ENEOS=左)。【写真=宮野敦子】

 

 昨秋に古巣のENEOSへ復帰した田澤と対話した石井監督は、「彼の経験は若い選手を大いに刺激すると思うし、何より野球に取り組む姿勢が素晴らしい」と絶賛。「どんな形でもプラスになる」と招集すると、そうした石井監督の思いも理解している田澤は、積極的に選手とコミュニケーションを取っていた。今春のワールド・ベースボール・クラシックでは、事前合宿の段階から来日したダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)が心技両面で若い選手に貴重なアドバイスをしていたように、田澤もチーム最年長の佐竹功年(トヨタ自動車)や司令塔の木南 了(日本通運)と対話する姿が見られた。

 主将を任されている北村祥治(トヨタ自動車)が「選手が個々に日本代表の意義を理解し、いい雰囲気で過ごせたと思います」という3日間が終わり、都市対抗後に24名が発表される予定だ。前回のジャカルタを経験している佐竹、北村、木南、辻野雄大(Honda)、堀 誠(NTT東日本)、森下翔平(日立製作所)、笹川晃平(東京ガス)の7名は、再びアジアの頂点を目指す舞台に立つことができるか。昨年のU-23ワールドカップで優勝を果たした中村 迅(NTT東日本)ら12名の若い力が、どれだけ戦力として食い込んでくるか。そんな楽しみを抱きながら、選手たちの東京ドームでのプレーに注目したい。

【文=横尾弘一】

 

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