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【GRAND SLAM PREMIUM206】都市対抗予選敗退の悔しさをエネルギーに変え、黒獅子旗とアジア競技大会を目指す中川拓紀(Honda鈴鹿)

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 5月21日、都市対抗東海二次予選を開幕日に取材した。第1試合では東邦ガスがBASEBALL ONE BLITZを投打に圧倒し、7回コールドの11対0で二回戦へ駒を進める。そして、第2試合ではHonda鈴鹿が東海理化と対戦。投打にバランスの取れたHonda鈴鹿は、3回表に一挙5点を奪って試合の主導権を握り、9対0の完勝で首尾よくスタートを切る。

 だが、流れを読めないのが18日間にわたる東海二次予選の難しさだ。Honda鈴鹿は二回戦で王子に2対3のサヨナラで惜敗すると、第三代表決定トーナメントの初戦(二回戦)ではジェイプロジェクトに2点を先制され、それを返せずに1対2で連敗する。そうして、後のない第六代表決定トーナメントに回ると、一回戦で東邦ガスに3対5の逆転負け。東京ドームへの切符を逃してしまう。

 不動のショートとして攻守のカギとなっている中川拓紀は、2年目にして社会人の本当の厳しさを肌で感じた。中川は中央大から昨春にHonda鈴鹿へ入社して主にセカンドでスタメン出場を続け、東京ドームの大舞台を経験。U-23ワールドカップで日本代表入りすると、スピートのある攻守で優勝に貢献し、大会ベストナイン三塁手にも選出される。貴重な経験を積みながら着実にスキルを磨き、ドラフト指名が解禁になる今季は、さらなる飛躍を誓ってプレーしている。

「都市対抗予選が終わるとすぐに北海道大会に出場したので、まだチームメイトと予選の振り返りはしていません。だから、あくまで僕個人の受け止めになりますが、投手陣は4試合で10失点ですから、1試合平均で2.5失点と頑張ってくれました。それを打線が援護できなかった。つながりを意識したんですが、どうしても個で戦っている感じになり、チーム打率は.304でも、ここ一番で一本が出ませんでした」

 

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日本代表合宿で再会したU-23日本代表戦士たち。左から相羽寛太(ヤマハ)、中川拓紀(Honda鈴鹿)、中村 迅(NTT東日本)。【写真=宮野敦子】

 

 そうして悔しい思いをしたが、予選が終わると森田駿哉とともに第一代表のトヨタ自動車に補強される。

「第一代表に補強していただいたことにプレッシャーは感じますが、藤原航平監督からは『自分を出してくれればいい』と言われたので、余計なことを考えずに思い切って戦おうと思っています。まずは、試合に使っていただけるように頑張ります」

 さらに、黒獅子旗を目指す戦いに続いて、アジア王座を狙う一員となれるか。プロ入りを実現するには通らなければならない道であり、目立つ結果も求められる。

「日本代表候補に選んでいただいたからには、自分が納得できるパフォーマンスを見せたいですし、チームの方針も『個のレベルアップ』なので、しっかりアピールします。U-23ワールドカップの経験も、生かすことができればいいですね」

 今季の中川は、打球方向がセンターからレフトに集中しており、ヒットもほとんどが左中間だ。

 

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日本代表選考合宿で、内川義久ヘッドコーチ(左)とティー打撃に取り組む中川。【写真=宮野敦子】

 

「Honda鈴鹿で出塁率のアップをテーマにしているので、ボール球を振らずにフォアボールでも出塁しようと考えています。その結果、ミートポイントが身体に近くなり、レフト方向にしか飛んでいないんです。でも、この合宿で内川義久ヘッドコーチから『強くスイングしない打者は怖くない』と指摘され、ポイントを前に置いてライト方向への長打も見せたほうがいいと実感しました。そこで、引っ張るバッティングも意識しているところです」

 練習では、内川ヘッドコーチとマンツーマンで、身体の前に防球ネットを置き、インコースをインサイドアウトのスイングでさばくティー打撃を繰り返していた。アドバイスをした内川ヘッドコーチによれば、「中川のバットコントロールは社会人でもトップクラス」とのこと。レフト方向だけでなく、広角に打ち返すことができれば、もうワンランク上の打撃を実践することができるはずだ。

 ユーティリティかつ安定感のある内野守備を含め、チャレンジと進化を続ける中川が、まずは東京ドームでどこまで輝くか注目したい。

【文=横尾弘一】

 

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