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【GRAND SLAM PREMIUM210】都市対抗小野賞に選出された東海理化の「歴史が動いた」快進撃

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 あらためて言うまでもないが、第94回都市対抗野球大会では東海勢が暴れまくった。優勝のトヨタ自動車、準優勝のヤマハに加えて王子の3チームが4強に進出し、ほかにも東海理化と三菱自動車岡崎がベスト8。6代表のうち5チームが準々決勝を戦ったことになる。中でも特筆は、東海理化の躍進だろう。

 一回戦、日本製鉄かずさマジックを6対4で振り切ると、山根直輝監督はこう切り出した。

「歴史が動いた瞬間を見ることができました」

 

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表彰式では、山根直輝監督が小野賞のブロンズ像を授与された。【写真=松橋隆樹】

 

 今大会が6回目の出場となる東海理化だが、過去5回は未勝利。直近2回は完封負けだ。それが、今季で13年目の井貝星良がルーキーだった2011年以来、12年ぶりの本大会で1勝したのだから、まさに1959年創部以来の「歴史が動いた」のだ。さらに、JR四国との二回戦では、16安打13得点と打線に火が点き、1勝どころか準々決勝に進出した。山根監督は「オープン戦でも、こんなに打ったことがないのでビックリです」と言うが、失礼ながら観るほうもビックリだ。

 2020年6月、トヨタ自動車出身の二之夕裕美(にのゆ・ひろよし)氏が東海理化の社長に就任した。トヨタ自動車が都市対抗で初優勝した2016年には野球部顧問を務めていた二之夕社長は、「会社の運動部が活躍すると社員が盛り上がり、一体感が生まれる」と、社内の運動部を全体で応援する目的として『TR(東海理化)スポーツ』を掲げた。ちなみに、この東京ドームでは、帽子のマークも従来の『R』から『TR』に変わっている。時期を前後して、内野がすっぽり入る室内練習場も完成。ほかに女子ソフトボールも強化指定部で、車いすテニスのウィンブルドン選手権で優勝した小田凱人選手も同社の所属だ。

 やがて、転機が訪れる。昨年の東海地区二次予選では、5年ぶりに代表決定戦に進出。しかし、最後の1枠をかけた第六代表決定戦で東邦ガスに敗れ、目の前でライバルの胴上げを見た。自チームだけではなく、補強選手としても4チームで東京ドームを知る井貝はこう言う。

「若い選手にとっては、代表決定戦自体が初めての経験。天国と地獄がくっきり分かれる現実を知ったと思います」

 

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二回戦に勝利した際、ヒーローインタビューを受ける井貝星良。【写真=松橋隆樹】

 

 山根監督は、その負けから目の色が変わったと感じている。2004年にミキハウスへ入社したが、硬式野球部の休部でよく2005年に東海理化へ転籍。2008年から4年連続で都市対抗に出場した時には正捕手として活躍し、補強選手としても2回の出場がある。2018年に引退し、社業に就いていたが、2021年8月にアナライザーとしてチームに復帰。10月から監督を務める。つまり、指揮を執って2年目で久々に出場し、歴史を変えたわけだ。そこで、聞いてみた。アナライザーを経験したことは、戦略面で何かプラスになりましたか?

「いや、僅か2か月かじっただけですから(笑)。それでも、他チームの選手名を覚える役には立ちました」

 かくして。東京ドームでは「都市対抗野球大会6回目の出場で初勝利を挙げ、ベスト8進出を果たした」ことで小野賞を獲得。山根監督は言う。

「準々決勝で負けた翌日に地元へ戻り、次の日の午前中は御礼と挨拶回り。さぁ練習……と思ったところで受賞の連絡があり、東京ドームにトンボ返りです。選手の頑張りにスタッフ、アナライザー、マネージャーなど全員で獲得した賞。もちろん、会社あっての賞。本当に光栄なことです」

 また、2本塁打した門叶直己外野手、3試合で14打数7安打の福本綺羅外野手が若獅子賞に。個人賞の獲得もチーム史上初で、こちらも歴史を作ったわけだ。東海勢が猛威をふるった今年の都市対抗は、トヨタ自動車の優勝で、来年は出場枠がひとつ増える。三英傑を生んだ地から、次に天下を制するのはどのチームだろうか。

【文=楊 順行】

 

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