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【GRAND SLAM PREMIUM214】補強の夏から大逆襲の秋を目指す――Honda鈴鹿・畔上 翔

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 今年の都市対抗は東海勢の躍進が素晴らしかった。優勝したトヨタ自動車、準優勝のヤマハのほか、ベスト8に5チームが進出した。惜しくも東海二次予選で敗退したHonda鈴鹿からは、8名が補強選手として出場。それぞれ違ったユニフォームながら、補強先のチームで存在感を示す。Honda鈴鹿で主将を担う畔上 翔は東海理化へ。12年ぶりの都市対抗で初勝利を挙げると、一気にベスト8までへ進む中で打率.600をマークし、森田駿哉、井村勇介とともに大会優秀選手に輝いた。畔上は、そんな夏をこう振り返る。

 

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Honda鈴鹿で主将を務める畔上 翔(左)は、今夏の都市対抗は東海理化に補強され、慣れないファーストを守った。【写真=藤岡雅樹】

 

「練習は嘘をつかない。僕は、そう思って野球を続けてきました。ただ、がむしゃらにプレーして結果が出せるほど甘い世界ではありません。考えて、考えて、やっと1本のヒットが生まれる。東海理化には、そんな僕の野球観に近い雰囲気がありました。また、慣れないファーストの守備にもチャレンジした。補強として勉強させてもらったので、鈴鹿に持ち帰って今後につなげていきたいです」

 そんな畔上に対し、東海理化の山根直輝監督は「頼もしい男です」と評価する。大会前、チーム合流時にホテル生活を提案されるも、きっぱり断って選手と同様に寮生活を選択した。「食事や風呂でも、コミュニケーションが取れます。そういった場所での、何気ない会話は大事ですよね。でも、一番は近くに室内練習場やウエイト・ルームがあることが理由。自分の練習のためですよ」と、充実した日々に笑みをこぼす。

 大会期間中は、他チームに補強された選手のことも気になっていたようだ。トヨタ自動車に補強された森田はENEOSとの二回戦に先発し、6回3安打1失点の好投で王者の連覇を阻止した。その2日後、王子に加わった井村は明治安田生命との二回戦に先発し、131球を投げ抜いて完封勝利を挙げた。

「僕が先に登板したので、井村にプレッシャーを与えたいと思っていたら、それを超える投球をされてしまいました。負けないように、また頑張らなければと思いました」

 森田はそう振り返る。

 その2人の活躍を踏まえて、「どんどん活躍して、都市対抗とはどんなものなのか、東京ドームでどんな野球をしたら勝てるのかを経験してもらいたいですね。今後への期待が大きくなりました」と畔上は言う。6チームへ散らばった8名が、それぞれに成果と課題を持ち帰ることが、今後のHonda鈴鹿をさらに強くするはずだ。

 7月31日、選手全員が顔を揃えた。畔上は、補強選手たちの変化を感じたという。

「森田や井村に意見を求めると、自分の投球内容ではなく『打者にこうされると嫌なので、こう攻めたほうがいいと思います』、『全体的にこうしていきましょう』と、チーム全体を見て発言してくれます。野手では、長野勇斗や松本桃太郎は以前から中心となっていましたが、僕が言いたいことを先にみんなに伝えてくれるようになった。しかも、口だけではなく、しっかり行動してくれます。補強としていい思いもしたけど、本当の悔しさを味わったのでしょうね」

 Honda鈴鹿を見ていると、都市対抗予選を勝ち抜く難しさをあらためて感じる。東京ドームでこれだけ活躍できる戦力がありながら、出場権を得られない厳しい東海二次予選。今大会の結果から、東海勢のレベルの高さを知ることはできた。では、厳しい勝負を制するためには何が必要か、主将の目にはどう映っているのだろうか。

 

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畔上が牽引するHonda鈴鹿がどんな逆襲を見せてくれるか。9月9日に幕を開ける日本選手権東海最終予選も楽しみだ。【写真=横尾弘一】

 

「例えば、ENEOSやトヨタ自動車、NTT東日本を見ていると、ベンチからサインを出され、それを打席で確認する動作がスムーズに感じます。選手が『この場面ではそうですよね』、『はいはい、OKです』と、意思疎通が自然にできている。恐らく『えっ?』と思う選手が少ないんでしょうね。試合で急にやるのは難しいので、練習中の何気ないコミュニケーションから築いていると思います。他チームを認めるのは、本当は嫌いなんです。でも、やっぱり強いチームから勉強するのも必要。勝つチーム、活躍している選手には理由がありますから」

 来年の都市対抗に向けた戦いは、すでに始まっている。試合では、日々の積み重ねこそが発揮される。畔上の言葉通り、「練習は嘘をつかない」はずだから。

「僕の思いを汲んでくれて、柔軟に対応してくれるチームメイトには本当に感謝しています。だからこそ、みんなで同じユニフォームを着て、東京ドームで戦いたいです」

 全国での大躍進なるか。Honda鈴鹿がダイヤモンド旗を目指す戦いは、9月9日から始まる。

【文=古江美奈子】

 

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