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【GRAND SLAM PREMIUM215】第47回全日本クラブ野球選手権大会――初勝利から準優勝へ駆け上がった矢場とんブースターズと敢闘賞・西浦貴志の物語

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 第47回全日本クラブ野球選手権大会は、連覇を狙う大和高田クラブ、戦力充実のマツゲン箕島硬式野球部が準々決勝で姿を消し、ショウワコーポレーションの初優勝で幕を閉じた。プロ経験者の亀澤恭平監督が率いるショウワコーポレーションは、グラウンドをほぼ毎日確保でき、全体練習後も寮に隣接する室内練習場で自主練習できるという、クラブとしては恵まれた環境にある。その豊富な練習量を裏づけに、飛躍的に力を伸ばした。「地域に貢献したい」という亀澤監督にとって、岡山のクラブチームとして初優勝という意義は大きい。

 準優勝の矢場とんブースターズも、チーム初勝利から、さらに2つの上積みは賞賛していい。3勝のうち2勝を稼いだのが、敢闘賞に輝いた西浦貴志投手だ。千曲川硬式野球クラブとの準決勝では、最後の打者を打ち取ると思わず涙が零れた。

 

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準優勝の原動力となり、敢闘賞に選出された矢場とんブースターズの西浦貴志。【写真=松橋隆樹】

 

「試合前から緊張して、6回以降からだんだん重圧もかかってきて……。でも、自分の力を信じて」、1失点で130球を投げ抜いた開放感からだろう。前日、ゴールデンリバースとの一回戦は、1対0とリードした6回表、エラー絡みで無死満塁のピンチを招く。だが、ここでは「変化球を拾われているから、真っ直ぐで押してみては」という秦 広明監督の助言に強気が戻り、四番からの中軸を3者連続三振。渾身のガッツポーズを見せると、7回以降は九谷 瑠が内野安打1本に抑えて零封リレーだ。「大会前から、2人で投げ抜こうと言っていた」コンビが、チームに初勝利をもたらした。

 翌日の準々決勝では、九谷がマツゲン箕島硬式野球部から1失点完投勝利を挙げると、千曲川硬式野球クラブとの準決勝は西浦の出番だ。実は、千曲川硬式野球クラブとは昨年の富山大会でも対戦し、先発した西浦は1対0の8回裏、豊田航平に逆転3ラン本塁打を許して敗れている。だから、「試合前から緊張していた」し、その豊田を4打数無安打に抑えての勝利に、思わずこみ上げたのだ。

「西浦と心中のつもりでした」という秦監督は、西浦の成長を「大人になった」と表現する。西浦自身も、そのあたりは自覚している。

「1、2年目は、力まかせに投げるだけでした。ただ、5年目までやっていると悔いのあるボールも多いし、もともとの持ち味であるコントロールを生かし、ミスなく投げるほうがいいと考えられるようになったんです。外部コーチの鹿島(忠=元・中日)さんが、ほんの小さなことに気づいてアドバイスをくれるのも大きいですね。本来はスライダー・ピッチャーなんですが、カットボールも有効に使えるようになった」

 普段は、名古屋駅の地下街・エスカ店に勤務する。新幹線に直結するロケーションで、名古屋名物の味噌カツを提供するとあって、ピーク時は目が回るほど忙しい。コロナ禍でも、「店に出る人間が少ない分、なおさら忙しかった」とか。大会1勝がチームの目標だっただけに、「ハードオフ・エコスタジアムで試合をするなんて、ドラマでしょう。決勝しかエコスタを使わないブロックでしたから」という決勝はさすがに息切れしたが、3試合16回1/3を投げて自責点3、防御率1.65は胸を張っていい。

 

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矢場とんブースターズの大会初勝利からの準優勝は、来年以降の躍進も期待させる。【写真=松橋隆樹】

 

 194cm・126kgと、雄大な体格の秦監督に、ちょっと意地悪な質問をしたことがある。本大会出場を決めたあと、胴上げはしてもらったんですか?

「いや、辞退しました(笑)」

 これを踏まえて決勝後、西浦にも聞いてみた。もし優勝していたら、監督を胴上げしましたか?

「う〜ん、どうだろう。秦さんは持てないっす」

 胴上げが見られるかどうか。答えは、来年以降に持ち越しだ。

【文=楊 順行】

 

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