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【GRAND SLAM PREMIUM233】「自分の野球人生を俯瞰から見てほしい」社会人日本代表・川口朋保監督インタビュー《後編》

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昨年12月の第30BFAアジア野球選手権大会で、日本代表を優勝に導いた川口朋保監督のインタビュー2回目です。

前編は以下にアクセスしてください。

https://www.jaba.or.jp/topics/gs232.2023.01.04/

 

――今回は、アジア選手権と同時期に、4年ぶりの開催となったアジア・ウインター・ベースボール(AWB)にもエントリーしました。こちらは、1125日から1217日の約1か月間で19試合という長丁場でしたが、通算で1351引き分けと見事な成績を収めました。

川口 若手を育成するための場で、勝敗は二の次ということですが、リーグ戦を1331引き分けで戦い抜いたのは素晴らしかった。私たちがアジア選手権で中抜けし、その間をアスリート委員の森田洋生さん(四国銀行)、飯塚智広さん(NTT東日本)、山田幸二郎さん(大阪ガス)にお願いしたのですが、チームの勢いは変わりませんでした。実は、AWBでも一番に出塁率の高い添田真海(日本通運)、二番に長打力を備えた網谷圭将(ヤマハ)と、アジア選手権の日本代表と同じコンセプトで打順を決めていました。

 ただ、1位で決勝トーナメントに進んだものの、準決勝と3位決定戦に連敗してしまいました。私が選手たちの疲労度を把握し切れず、最後の最後で試合運びを硬くさせてしまったのは反省点。申し訳なかったです。それでも、プロ選手と同じフィールドでプレーしたことは貴重な経験ですし、決勝トーナメントでのプロ選手の力やベンチワークは勉強になりました。

――そして、AWBに出場している選手たちはアジア選手権を、日本代表のメンバーはAWBを気にかけていた。互いをライバル視していたという印象があります。

川口 それはいいことですよね。コロナ禍の対策として全日本ジュニア強化合宿を全国6か所で実施するようになり、それが2023年も継続されている。そのことにより、日本代表候補として多くの選手を見ることができるようになり、選手たちのモチベーションも高まったのではないかと感じています。それに、コロナ禍ではなるべく人と交わらないように注意してきましたから、ようやく世の中が落ち着いてきたことで、他チームの選手と密にコミュニケーションを取れるようになったのもプラスです。最近の選手は敵と仲よくし過ぎると見る向きもあるようですが、普段は情報交換もしながら上手くなろうと努力し、グラウンドでしっかりと真剣勝負をしてくれればいいと私は考えています。

 

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第30回BFAアジア野球選手権大会で、マウンドでアドバイスを送る川口朋保監督。【写真=宮野敦子】

 

――こうしたアスリート委員会の取り組みにより、社会人野球全体に活気が出てきたと感じます。

川口 都市対抗などのスタンドで応援して下さる出場チームの会社や地域の方々、また社会人野球ファンを感動させるのは、目を輝かせてプレーする選手の姿だと思います。選手たちがそうやって全力でプレーできる場を提供するのが、私たちの役割だと気を引き締めているところです。2023年は、近畿地区選抜と東海地区選抜の交流試合を京都で実施しました。これが好評だった上に、参加した選手から「1泊して前日には合同練習もできたらいい」という声がありました。そういう前向きな声を大切にしていきたいですね。

――さて、2024年は日本代表が出場する国際大会は予定されていませんが、9月にU23ワールドカップが中国・紹興市で開催される。連覇がかかる大会です。

川口 はい。万全の準備をして臨むためには、都市対抗予選が終わる頃にはメンバーを内定しなければいけないと考えています。大学卒のルーキーも選考の対象になりますから、チームとも連絡を取りながら選手を見ていく必要がありますね。一方で日本代表も、例えばバッテリーの合宿を行なうとか、何かできればいいと私の中でアイデアを巡らせているところです。

――2023年のAWBに出場したTDKの佐藤亜蓮投手は、大学卒ルーキーでしたが、プロを相手に三振の取れる投球を目指し、最多奪三振をマークしました。そして、早生まれなのでU23ワールドカップの出場資格がある。当然、有力候補のひとりになるでしょうね。

 

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アジア・ウインター・ベースボールで最多奪三振をマークした佐藤亜蓮(TDK)は、U-23ワールドカップの日本代表候補のひとりだ。【写真=宮野敦子】

 

川口 そうですね。日本代表候補選手には、3つのことを伝えています。ひとつ目は、自分を大事にしてくださいということ。野球に限らず、どんなことに取り組む場合でも、自分を大事にできなければ他人を大事に思うことはできない。チームワークの根本は、まず自分を大事にすることだと考えていますので。2つ目は、身体を強くしてくださいということ。そして、3つ目は自分の野球人生を俯瞰から見てくださいということです。プロへ進む選手もいますが、多くの選手にとって社会人は野球人生のラスト・カテゴリーです。その社会人野球を少しでも充実させ、自分の目標に近づくためには、今を大事にして、それをコツコツと積み重ねていくことだと思うんです。そうした意味で、この3つを考えてもらいたいと考えているんです。

 それにしても、社会人選手、特に日本代表候補になる選手は常にモチベーションが高く、責任を持ってグラウンドに立っています。私たちが「日本代表はこうあるべき」などと余計なことを言わず、勝つために何でも言い合える環境を整備しておくことが大切だと思っています。冒頭で、企業チームと日本代表チームの違いというお話がありましたが、実際にチーム作りをしてみると大きな違いはなく、私が強く意識するのは選手がチャレンジできる土俵作りがポイントだということ。選手たちには、少しでも速いボールを投げよう、少しでも打球を遠くへ飛ばそうという子供の頃に抱いたチャレンジ欲を、日本代表にいる時だけでなく、普段から意識してもらえればいいですね。

――日本代表を育成するアスリート委員会の取り組みが、社会人野球をさらに面白くしてくれることに期待しています。ありがとうございました。

【取材・文=横尾弘一】

 

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