JABA

JABA

メニュー

トピック TOPICS

【GRAND SLAM PREMIUM235】ビジネスでも活躍する社会人野球OB② 嶋田功一さん(日立製作所)

bnr_grandslam_cmyk.jpeg (218 KB)

 プロ野球選手を目指す野球少年だった。嶋田功一さん。「現代版『巨人の星』みたいに」、小学校低学年の頃から、父の熱心な指導を受け、1993年夏には東福岡高で甲子園に出場。初戦(二回戦)で敗退したが、嶋田さんは1年生ながら三番キャッチャーでスタメン出場している。高校卒業時には、当時の原 貢監督に声をかけられ、「プロを目指すなら関東で勝負」と東海大に進む。優勝した3年春の首都大学リーグでは三冠王を獲得し、大学選手権も準優勝。同年の日米大学野球選手権では、日本代表に選出される。4年時の神宮大会でも準優勝し、通算10本塁打の強打の捕手として、ドラフト指名が確実視されていた。

 だが……プロ側の事情もあってか、1999年のドラフトでは指名漏れ。失意のまま日立製作所へ入社したのは2000年のことだ。1~2年目は社会人の高いレベルに阻まれ、なかなか出場機会が巡ってこない。そして、3年目。

「記憶にあるのは、2002年の都市対抗です。社会人は、この年から使用するバットが金属から木製に変わりましたが、子どもの頃からプロを目指し、木製バットを使い慣れている私にはそれがチャンスでした。レギュラーをつかみ、入社以来初めて都市対抗に出場することができました」

 一回戦は、ヤマハとの対戦。前年に優勝しながら活動を休止した河合楽器の主力選手も加わり、優勝候補と目される難敵だったが、8対0で快勝する。七番・指名打者で出場した嶋田さんは、ホームランを含む2安打2打点。二回戦で松下電器(現・パナソニック)に敗れたが、「今があるのは、あの大会のおかげです」と振り返る。というのも、この年に再びドラフト候補として注目されるも、またも指名漏れ。それにより、嶋田さんの中で「マインドチェンジが起きた」のだ。

 

GSP235-1.jpg

パンチ力を武器に活躍した嶋田功一さんの現役時代(左)。中国・上海市で開催された『第6回中国国際輸入博覧会』で

日立ブースの事務局責任者を務めた際に、チームのメンバーと(右)。

 

「大学時代にドラフトに漏れ、人間不信になりかけたところを助けてくれたのが日立です。東京ドームでは、日立側のスタンドはオレンジ一色に染められ、職場の方々は『嶋田というのは、うちの部署なんだよ』などと話しながら大応援を送ってくれる。あの感動は、病みつきになりますよ。だから、日立でドラフト指名がなかった時には、会社の方々に野球を通じて喜んでいただき、会社を盛り上げたい。現役時代は野球を全力で頑張り、引退後は仕事を全力で頑張ることが会社への恩返しだと、自然に意識が変わりました」

 現役生活は8年。ポジションは捕手から三塁、そして、外野へと変わり、自チームで3回、補強選手で2回、東京ドームを経験した。現役最後の2007年は富士重工業(現・SUBARU)に補強され、ベスト8進出に貢献している。引退後は日立製作所本社の広報部、のちに宣伝部などに勤務。ビジネスの場では、野球部OBなど人脈に助けられることも多かった。

「現役引退時は、自分自身の気持ちでは、人の一生分、野球をやってきた自負があったので、もうお腹いっぱいのつもりでした。でも、他の企業チームを引退した仲間と年に1~2回、それぞれの企業チームの当時のユニフォームを着て草野球をやったりした時期もありました。当然、みんな基本的には上手いのですが、現役時代に俊足でならした選手が守備や走塁時にこけてしまうなど、そういった野球も楽しかったですね」

 まだコロナ禍にあった2021年10月には、中国の北京市に赴任。展示会やイベントの対応、WebやSNSで経営メッセージの発信、各種広報対応など、日立の中国におけるブランド・コミュニケーション全般に関わるビジネスに従事する。ある日、北京駐在の他部門の先輩から突然、メールが届いた。

 

GSP235-2.jpg

昨年6月に、無錫市で開催された草野球大会に出場した北京選抜チームでの集合写真。

嶋田さんの右は、SUBARU野球部OBで中国に出向中の牛島章裕さん。

 

『日立の野球部にいた“あの”嶋田さんですか? かつて応援していた方と同時期に北京にいるのも何かのご縁です』

 何でも北京には、在留邦人を中心とした北京軟式野球連盟があり、色々な企業の野球好きが試合などで交流しているという。

「お腹いっぱいのはずで、もう野球をやるつもりはなかったのですが、その先輩に誘われて参加しました。それによって、短期間で色々な方々とのネットワークが広がったのは、コミュニケーション業務を行なう私としては凄くありがたかった。コロナ対応の貴重な情報なども得られました」

 ボールが結果的に、ビジネスをつなぐ。これも社会人野球だ。

【文=楊 順行】

 

グランドスラム62は好評発売中です!!

GSPPR-62__medium.jpg

紙版(左)、電子版(右)とも、どうぞよろしくお願い致します。