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【GRAND SLAM PREMIUM237】新監督に聞く②――鎌田将吾(日本新薬)

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 昨年のシーズンオフ最大のサプライズと言ったら大袈裟か。いつかその日が来るとは想像していたが、まさか今年……。それが、日本新薬で鎌田将吾監督が誕生した時の率直な感想だ。

「私自身も、まったく想像していませんでした。日本選手権が終わってしばらく経ち、これからシーズンオフという時に会社に呼ばれ、監督就任の要請を受けました。コーチ兼任という立場だったので、まずコーチとして来季はどうしていこうかというプランを練ろうとしており、一方で選手としての準備もある。そんなタイミングでしたね。ただ、監督と聞いた瞬間に頭を切り替えることができました。要請を受けるかどうか考えさせてほしいとも、もう少し現役を続けたいとも思わず、『よし、監督として精一杯、頑張ろう』という気持ちです。振り返ると、日本新薬へ入社した時、何があっても会社のために力を尽くすと決意していたからでしょうか。捕手という役割が、監督に変わるという受け止めでした」

 

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大分県佐伯市で実施しているキャンプで、グラウンドに立つ鎌田将吾監督。チームは地に足の着いた空気に包まれていた。

【写真=松橋隆樹】

 

 三重県出身。鈴鹿高ではショートを守り、朝日大へ進学すると1年春のリーグ戦からセカンドを守る。個人賞を手にする活躍を見せたものの、すぐに捕手へのコンバートを告げられたという。

「社会人でも野球を続けたいなら、内野手では無理。そう言われて捕手の練習を始めました。ベストナインに選ばれることもありましたが、しっかりと投手のリードできたかと言われれば……。だから、日本新薬への入社が内定した時は本当に嬉しかったですし、実際に投手のボールを受けたらコントロールのよさに感動しました」

 ルーキーながらマスクを被ったが、その年は都市対抗近畿二次予選に3連敗して敗退。社会人野球の厳しさを肌で感じ、そこからたゆまぬ努力で日本代表にも選出される実力をつけた。

「社会人でも正捕手を務められるような選手は、生まれついての捕手というか、高校、大学でしっかり経験を積んでいますよね。ただ、内野手だった私にしてみれば、考え方が少し硬いのかな、とも思う。それに、バッティングはどうでもいいから守りと言う捕手も多いですけど、私は打席に立ったら相手捕手の嫌がることをしようと考えていましたし、接戦の展開ではどうやってホームランを打とうか考えたりしていました。もちろん、投手とのコミュニケーションは大切ですし、リードを勉強してチームを勝利に導きたい。でも、そうした捕手の役割を面白いと感じたことはありません。生まれ変わって、また野球をしても、絶対に捕手にはなりたくないですね」

 33歳の新監督が率いるチームには、頼れるベテランの鎌田捕手がいない。

「そうですね。6年目の大橋 将、3年目の植田理久都、新人の後藤聖基と3人の捕手がいますが、春季キャンプ(22日~14日/大分県佐伯市)が終わる頃までには、ひとりに絞ろうと考えています。昨年までは私と千葉義浩がいて、大橋と植田にとって正捕手は現実的な目標にはならなかったかもしれない。だからこそ、最大のチャンスなわけで、そんな二人が捕手の練習に没頭してくれているのは嬉しく感じています。私自身も、試合に使ってもらって成長できたと思っているので、どの捕手と心中するのか、しっかり考えます」

 監督に就任すると、すぐに選手全員と個人面談し、「俺と真剣に野球をやってくれるか?」と問いかけたという。その時の反応やキャンプで目の色を変えている様子を見て、「この選手たちとともに戦う」と覚悟を決めたのと同時に、「もう必死に練習することもないのか」と現役引退した実感が湧いたという。

2019年に日本代表に選んでいただいた時、石井章夫監督から『このメンバーは、いずれ指導者にもなってほしい』と言われました。その言葉が、グッと心の中で大きく響きましたね。また、会社からは『若い監督に経験を積ませよう』ではなく、『すぐに全国優勝せよ』と命じられたと受け取っています。今年が勝負。まずは、3月の東京スポニチ大会で優勝を目指します」

 キャンプに足を運んで、もうひとつ驚いたことがあった。新監督が就任したチームが持つフワフワとした空気が一切なく、もう何年も見てきた鎌田監督のチームという印象を受けたことだ。地に足の着いた野球で、いよいよの高揚感を現実にできるか。今季の日本新薬に注目したい。

【取材・文=横尾弘一】

 

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