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【GRAND SLAM PREMIUM239】新監督に聞く④――林 治郎(日立製作所)

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 沖縄本島北部の本部港から定期フェリーで30分、周囲22kmほどで人口約4,500人の伊江島には、伊江村総合運動公園というスポーツ・コンプレックスがある。野球場、ブルペン、天井の高い室内練習場に加えて、内野の守備練習ができるサブグラウンド、ウエイト・ルーム、体育館、プールなど、これ以上ない設備を整え、プロ選手も足を運ぶトレーニング基地で、2月に日立製作所がキャンプを行なっている。

「実は、コーチ時代に私とマネージャーで視察して、施設の要望を伝えながらお世話になっているんです」

 すでに日焼けした林 治郎監督は、そう言ってグラウンドを見渡した。地元の進学校・日立一高では秋の関東大会ベスト8、日体大では4年時に春秋連覇を成し遂げ、秋には最高殊勲選手賞とベストナインを手にした。1996年に日立製作所へ入社すると、1年目からショートのレギュラーとして活躍。9年間プレーしてあと3年間はコーチを務め、2013年に和久井勇人監督とともにチームに復帰。2016年に都市対抗で準優勝するチームを支え、再び社業を経て、今季から和久井監督の後を継ぐ。

 

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林 治郎監督は、厳しくも優しい目で選手たちの動きを追いかけていた。【写真=松橋隆樹】

 

 100年超の歴史を誇る古豪の指揮官に就き、はじめに選手たちに伝えたのは「野球以外のことでした」という。

「当たり前のことですが、礼儀をしっかりすること、規則正しい生活をすること。その上で、一生懸命に野球に取り組む環境は自分たちの手で作る。まず、自分たちがチームを愛する気持ちでプレーしなければ、周囲の人たちから愛されるチームにはなれない。そうした企業スポーツの基本は、ブレずに意識していきたいですね」

 このシーズンオフ一番のサプライズは、22年間チームに貢献してきた田中政則、同じく12年間プレーした大塚直人と二人のベテランが現役を退いたことだ。

「田中や大塚は、やってくれと言えば、まだ何年かはできると思います。ただ、監督が代わるタイミングが、チームを変えるタイミングなのだと覚悟して、戦力を刷新しました。二人の穴はそう簡単には埋まらない。けれど、若手の『よし、やってやるぞ』という意欲が、チームに新しい風を吹かせてくれると思っています」

 よき伝統をはじめ、変えてはいけない部分はある。その一方で、毎日の練習から小さな変化や成長を積み重ね、それがチームを大きく変えていくエネルギーになると信じて戦う。シーズンが始まれば、レギュラーと控えに立場は分かれるが、選手は全員が何らかの戦力になると説き、一人ひとりの野球人生に寄り添う監督になろうとしている。

 打線の軸に期待されている東 怜央は、「言葉や行動で、監督の期待は十分に感じています。何とか応えられるように頑張りたい」と、打力をさらに磨き上げている。また、林監督と同時に復帰した投手担当の平田憲広コーチは、「新たな戦力の成長をサポートして、監督を男にしたいですね」と意気込む。

 投手は田川賢吾、岡 直人、青野善行の三本柱が順調で、それを若手が追いかける。野手は各ポジションでスタメンの座を激しく争っている。どっしりと構えていたチームが、いい意味でフットワークを軽くし、チャレンジャーとして臨むシーズン。都市対抗北関東二次予選で敗れた昨年の悔しさを原動力に、林監督がどんな試合運びを見せてくれるか楽しみにしたい。

【取材・文=横尾弘一】

 

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