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元大リーガー田澤純一投手が古巣ENEOSに復帰 社会人野球Express vol.29

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14年ぶりに古巣に復帰 公式戦初登板

 米大リーグのレッドソックスなどで活躍した田澤純一投手(36)が14年ぶりに古巣の今夏の都市対抗優勝チーム、ENEOS(横浜市)に復帰した。915日には川崎市等々力球場で行われた関東選抜リーグ、日本製鉄鹿島戦に救援登板し、1イニングをパーフェクトに抑えて「さすが」の投球を披露した。

 田澤投手が登板したのはENEOSが6-0とリードして迎えた七回表。4番手としてマウンドに上がり、3番からのクリーンアップを中飛、遊飛、空振り三振と、17球で打ち取った。ストレートは最速149㌔で、ベストの状態とは言えなかったが、130㌔台のフォークボールとの組み合わせで危なげない内容だった。

試合はその裏、ENEOS打線が7点目を奪ってコールド勝ち。1030日からの日本選手権で10年ぶりの「夏秋連覇」に向けて幸先良いスタートを切った。

 田澤投手は「いい緊張感で投げることができた。もっといろいろな球種を試したかったけど、公式戦で打たれてはいけないので、ストレート中心の投球になった。これからもしっかり準備し自分の仕事を果たしていきたい」と冷静に復帰登板を振り返った。

 田澤投手は2005年、横浜商大高から新日本石油ENEOS(当時)に入社、翌年から監督に就任した大久保秀昭監督の指導で頭角を現した。ドラフト解禁となる3年目は都市対抗出場を果たしたが、2回戦で2本のアーチを浴びるなど救援に失敗。「会社に恩返ししたい」とチームに残留し、4年目の08年、見事にエースとして都市対抗を制覇し、黒獅子旗獲得に貢献、自身も最優秀選手に贈られる橋戸賞に輝いた。

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=第79回都市対抗野球で優勝し、喜ぶ田澤投手(奥)

 国内のプロ12球団が注目する「ドラフトの星」となった田澤投手だが、前年から米大リーグ球団も獲得の意思を示していたことから、大リーグへの挑戦を表明。国内12球団にはドラフトでの指名を辞退したい旨を伝えた。

アマチュア選手側からの「指名辞退」という前例のない対応に驚いたプロ側は、国内のプロ球団のドラフト指名を拒んだ選手は、その後、国外の球団などから解雇されても一定年限は国内プロ球団と契約できないという手前勝手なルールを決め、田澤投手にプレッシャーをかけた。俗にいう「田澤ルール」だ。このルールは、のちに「職業選択の自由」を奪うものだとして公正取引委員会が調査に乗り出し、プロ側が撤回した。

こうした国内での騒動をよそに、田澤投手は大リーグで着実に実績を積み上げていった。2013年には上原浩治投手らとともにレッドソックスのワールドシリーズ制覇に貢献するなど18年まで9年間で388試合に登板、2126敗4セーブ、防御率4・12の成績を残した。その後は国内の独立リーグや台湾、メキシコのプロ野球で経験を積んでいた。

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=登板前に田澤投手にボールを渡す大久保監督

大リーグ在籍中からシーズンオフにはENEOSのグラウンドで練習をし、大久保監督や後輩の選手と交流を続けていた田澤投手は、大久保監督からの誘いもあり、14年ぶりにENEOSのユニホームにそでを通すことになった。

大久保監督は「いい緊張感をもって投げてくれた。バリバリの時期と比べたら球速は落ちただろうが、多くの場数を踏んだ経験がある。選手たちにいい影響を与えてくれると思う」と帰ってきたエースに期待を寄せていた。【文・毎日新聞社野球委員会 中島章隆、写真・安田光高】