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“新生Honda”が第一歩 東京スポニチ大会を制す 社会人野球NOW vol.16
社会人野球シーズンの幕開けとなる第78回JABA東京スポニチ大会は、今季から東京地区に所属変更したHondaが5大会ぶり3回目の優勝を果たした。例年、有望な新人選手のお披露目の場となる東京スポニチ大会。今大会も各チームの新たな戦力が躍動し、Hondaの多幡雄一監督を含む4人の新人監督が公式戦初采配に臨んだ。球春の訪れとともに幸先のいい一歩を踏み出したHonda。今秋の第49回社会人野球日本選手権の出場権を獲得した。【毎日新聞運動部・円谷美晶】
=優勝旗を受け取るHondaの辻野雄大主将
関東の4チームが残った準決勝。日本通運とJR東日本の一戦はホームラン合戦となり、日本通運が競り勝った。代打に起用された大会初戦でサヨナラ打を放ち、2戦目以降は4番に座った田中滉伸選手が、準決勝でも九回の2ランで決勝進出に貢献した。
続くHondaとセガサミーのカードは、今大会勢いに乗っていたセガサミー打線をHondaの7年目左腕・東野龍二投手が7安打に封じて完投。決勝は、昨年まで埼玉のライバルとしてしのぎを削り、互いを知り尽くす日本通運とHondaの因縁の対決になった。
決勝で日本通運にコールド勝ち
Hondaは一回、藤野隼大選手の左前適時打で先制。しかし、二、三、四回は日本通運の8年目左腕・相馬和磨投手に3者凡退に抑え込まれた。昨季は東京スポニチ大会を含めJABA大会で2度、決勝で敗れているHonda。1点差のままでは、今年も二の舞になりかねない……。多幡監督はベンチで「もっともっと圧倒的に勝つぞ」と選手に檄を飛ばした。
すると五回に下位打線から連打に四球を絡めて2点を追加。投げては先発の中村伊吹投手が6回5安打無失点と好投。七回にも三浦良裕選手の2ランなどで加点し、最後はこの大会で社会人デビューを果たした新人・金城飛龍選手が左翼方向への適時打を放って2人が生還し、コールド勝ちとなった。
=全5試合に先発出場した新人の金城飛龍外野手。新人賞にも選ばれた
初陣を優勝で飾った多幡監督。選手に「チャレンジ」を求めているという指揮官が大切にしていることの一つは「信頼関係を築くこと」。「僕は選手を信頼する、選手も僕を信頼する。その信頼関係が大切で、ここ一番の勝負どころではそれがものを言うと思っています」と語った。
スローガンは「夢への挑戦~感謝を胸に~」
多幡監督は今年1月1日に発生した能登半島地震で大きな被害を受けた石川県七尾市の出身。発災時、自身は金沢市にいて、家族は全員無事だった。地元の惨状に胸を痛めたが、道路が寸断されており様子を見に行くこともできなかった。
今年最初のミーティングで、まず選手とともに黙とうした。「自分たちがこうやって野球をできることは当たり前では無い。感謝して、日々頑張ろう」との思いを胸に、今季のスローガンを「夢への挑戦~感謝を胸に~」と決めた。
地震から2ヶ月以上が経った今も避難生活を余儀なくされている人がいる地元に向けて、「明るい話題を届けたい」という多幡監督にとって、つかんだこの優勝にも大きな意味がある。
=初戦勝利後、選手から渡されたウイニングボールを手にする多幡雄一監督
チームは今年、埼玉から東京地区に所属を移した。辻野雄大主将は「新しいHondaを見せたい」と話し、多幡監督は「激戦区だと思っている。我々が入ることで東京、そして社会人野球を盛り上げていきたい。当然予選は苦しいが、チャレンジする気持ちを忘れずにやっていきたい」と意気込んだ。