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ルーキー奥田の進化 マツゲン箕島 社会人野球NOW vol.37

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 栃木県足利市のジェットブラックフラワーズスタジアム(足利市総合運動場硬式野球場)で3日に準決勝、決勝が開催された第48回全日本クラブ野球選手権大会で、マツゲン箕島硬式野球部(和歌山)が4大会ぶり6回目の優勝を果たした。最高殊勲選手賞に選ばれたのは、ルーキーの奥田貫太投手(23)だった。出場権を獲得した秋の第49回社会人野球日本選手権大会でチーム初勝利に導くため、さらなる飛躍を誓っている。

=投球の幅を広げたマツゲン箕島硬式野球部の奥田貫太投手

投球の幅広げ、MVPに

「学生時代は自分が持っているものをぶつけていくようなピッチングばかりしていた。今はバッターの反応を見て、いろいろと考えながら打ち取れたかなと思います。MVPで名前を呼ばれた時、これまでにない経験だったので素直にうれしかったです」。奥田投手は表彰式で喜びを胸に広げていた。173センチは投手では決して長身ではないが、右スリークオーターから投げ込む150キロ近い直球と新たに覚えた変化球で打者を手玉に取り、マウンドでの存在感は絶大だった。

複雑な動きをした台風10号に伴う雨天の影響で日程が変更され、3日は準決勝、決勝の同日開催となった。長年のライバルの大和高田クラブ(奈良)との近畿対決となった準決勝で、奥田投手は先発した。要所を締める投球で8回を被安打8の6奪三振。無失点で切り抜けた。

8回109球と球数を抑えたのが成長の証だ。大和高田クラブには5月の都市対抗野球近畿地区2次予選で対戦し、延長十回、6―5でサヨナラ勝ちしていたが、自身は八回から3番手で登板し、3点のリードを守り切れず、一時勝ち越された。打線の援護を受けて勝利投手になったが、3回4失点、57球を費やしていた。

花園大出身でプロ球界入りを志す有望株だが、西川忠宏監督は当時を振り返る。「150キロ近い球を投げてもファウルで逃げられ、球数が増えていた。投球の幅を広げないと、大学で通じても社会人では通用しない」。都市対抗野球予選以降、フォークボールなど球種を増やして、組み立てに変化をつけた。その成果を発揮し、今大会初戦の千曲川硬式野球クラブ(長野)戦も7回を無安打、12奪三振、105球の快投でチームを勝利に導いた。

=準決勝の大和高田クラブ戦で8回無失点の快投を見せたマツゲン箕島硬式野球部の奥田貫太投手(左)と藤田幸永捕手

スーパーで品出し、地域密着

大阪、和歌山で展開するスーパー「松源」で働きながら野球に励む選手たち。奥田投手も店頭に商品を並べる業務などに励む。またチームは、NPO法人として総合型スポーツクラブを立ち上げるなど地域密着の活動を続ける。日本選手権は過去未勝利だが、前回出場した2019年は1回戦でトヨタ自動車に0―1と善戦している。

1996年のチーム発足から携わる西川監督は「若いチームなので、自信がさらなる伸びにつながる。クラブ選手権の優勝で、もう一つ元気なチームになるんじゃないかな」と目を細める。奥田投手も「企業相手でも気持ちで負けないように頑張りたい」と闘志を込めた。【毎日新聞社野球委員会 藤野智成】