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「いつでもヒットを打てる」 東京ガス新人・仲俣慎之輔選手が指揮官イチオシの打撃センスを身につけた理由 社会人野球NOW vol.41

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 日本選手権の開幕まで20日あまり。関東代表決定戦を勝ち抜き、3大会連続13回目の代表切符をつかんだ東京ガスの「イチオシルーキー」が、中央学院大から入社した仲俣慎之輔選手(22)だ。セガサミー出身で、プロ野球セ・リーグで2度の首位打者に輝いたDeNA・宮崎敏郎選手をほうふつとさせるヒットメーカー。初めて臨む京セラドームの舞台で大暴れする。

日本選手権の関東代表決定戦・鷺宮製作所戦でサヨナラ勝ちが決まり、チームメートと喜び合う東京ガスの仲俣慎之輔選手(左端、背番号7)

都市対抗は全試合3番で先発 4強入りに貢献

 9月11日に東京・大田スタジアムで行われた関東代表決定戦の鷺宮製作所戦。仲俣選手は「3番・三塁」で先発出場した。1-1の同点でタイブレークにもつれ込んだ延長十回表に3点を失ったものの、その裏に反撃を見せて1点差。2死二、三塁とさらにチャンスが続き、ネクストバッターズサークルで仲俣選手が見守る中、2番のベテランの小野田俊介選手が2点適時打を放った。「打ってくれると信じていました」と仲俣選手。サヨナラのホームを踏んだ中尾勇介選手に飛びついた。

 東京都出身。小学校で地元のチームに入って野球を始め、岩倉高を経て中央学院大でプレー。同大2年だった2021年には秋の明治神宮野球大会でチームの初優勝に貢献し、今春、東京ガスに入社した。都市対抗でも4試合全てで3番に座り、打率は2割8分6厘。チームの4強入りに貢献した。

東京ガスの新人、仲俣慎之輔選手

「ほぼ独学」の自主練習 技術向上の原点

 一番の持ち味が、松田孝仁監督が「仲俣はいつでもヒット打てる。ボールを捕まえる感覚はすごく長けている」と語る打撃センスだ。

 その打撃力を自分のものとしたのは大学時代だという。入学したのは新型コロナウイルスが猛威を振るっていた2020年4月。当時は練習などの人数制限もあり、メインのAチームに入ることができなかった。「なかなかAチーム上がれなくて悔しくて。そこから練習を積みました」。それが負けん気に火を付けた。

 練習方法は「ほぼ独学」で取り組んだ。考えたことは、「どこに打てばヒットゾーンに打球が飛ぶか、どうやって人のいないところに飛ばすのか」。そのために安打にする「感覚」を身につける必要がある。練習後の夜間に大学の室内練習場に戻り、1人でマシンを相手にひたすら打ち込んだ。まずは来た球に対してトスバッティングを返すような感じで軽く打つ。それが全部ヒットゾーンに打てるようになったら、強く打ってみたり、方向を決めて打ってみたりと段階的に工夫を加えた。

 広角に安打を量産するDeNA・宮崎選手は目標とする選手の一人で、宮崎選手の動画なども参考にした。「こういう打球を飛ばすにはどうやってバットを(ボールの軌道に)入れたらいいんだろうとか、いろいろ見て、考えて、感じて、練習で実行してきた。どんどんうまくいったわけではなく、失敗続きだが、なんとなく『自分の形』っていうのはできてきた感覚がある」。2年でレギュラーをつかみ、リーグ戦で2度の首位打者にも輝いた。その延長に今がある。

 社会人となり、守備面では新たな挑戦が始まっている。大学時代はほとんど二塁で、東京ガスではチーム事情で三塁へコンバートされた。「試合に出たいという気持ちが1番。最初はサードで勝負させていただけるっていう嬉しさと、これから自分はできるのかなっていう不安もありました」と吐露する。二塁と三塁では送球の距離も、打球に対するグラブの出し方も違う。それでも植山幸亮コーチに基礎から教わり、夏場も練習後に毎日特守を続け、守備でも少しずつ自分の「形」を作ってきた。

 貪欲に野球に取り組む姿勢にはチーム内でも一目置かれる一方で、先輩たちにはとてもかわいがられているようだ。大学の先輩でもある竹村光司選手には時に自宅でご飯をごちそうになり、子どもの遊び相手になることもあるという。「(竹村選手は)頼りがいがあり、本当にありがたい存在。他の先輩方も優しくて、ストレスなく野球をやらせてもらっている」と感謝する。

 力を存分に発揮できる土壌でのびのびとプレーするルーキー。「都市対抗は(優勝まで)あと2勝のところで負けてしまった。日本選手権は『ダイヤモンド旗をとれるように頑張っていきます」と頂点を誓う。【毎日新聞社野球委員会・中村有花】