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曲折乗り越え新天地で躍動 鷺宮製作所・門間滉介投手 社会人野球NOW vol.63

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新天地で笑顔がはじけた。鷺宮製作所の門間滉介投手(26)。社会人野球のシーズン到来を告げる3月のJABA東京スポニチ大会で好救援を見せ、初優勝に貢献した。昨季まで所属したJPアセット証券の野球部が休部となり、移籍して3カ月。野球を続けられる喜びを体現する力投だった。

JABA東京スポニチ大会決勝の大阪ガス戦で好救援した鷺宮製作所の門間滉介投手

スポニチ大会優勝にいぶし銀の貢献

ダブルヘッダーだったJFE東日本との準決勝、大阪ガスとの決勝は2戦続けてサヨナラ勝ちという劇的な幕切れとなり、チームには一日にして多くのヒーローが生まれた。派手さこそないが、優勝への道筋を付けるいぶし銀の活躍を見せた左腕、門間もその一人に違いない。

 決勝の三回、村上公康のソロ本塁打で同点とした直後の四回から2番手としてマウンドに立った。持ち前のキレのある真っすぐをコーナーに投げ込み、凡打の山を築く。リズミカルな投球で流れを作り、六回の勝ち越しを呼び込んだ。七回の1死満塁の危機も二ゴロ併殺で切り抜け、4イニングを被安打2、4奪三振、無失点で後ろにつないだ。

打線好調の大阪ガス相手に接戦に持ち込み、そして野村工のサヨナラ3ランへと導く価値ある60球だった。「後ろにもいいピッチャーがいたので、一人一人、1イニングずつ抑えようという気持ちで投げました」と振り返った。幡野一男監督も「ここまでやってくれると思わなかった。想像以上に仕上がりがよくて驚いた。心強い」とたたえた。

突然の休部、移籍、そして飛躍

 JPアセット証券の休部が発表されたのは、昨年11月だった。選手たちに伝えられたのは、その1週間ほど前だったという。自身は入社4年目、主力投手として力を伸ばしていた。チームも都市対抗野球の東京2次予選で、Hondaや鷺宮製作所を破った。代表切符こそ逃したが、代表決定戦まで進むなど着実に力をつけていただけに、選手たちに衝撃が走った。

 その窮地に、真っ先に誘いの声をかけてくれたのが鷺宮製作所だった。2022年都市対抗野球の補強選手に呼ばれた縁もあった。年の瀬にチームに合流し、新たな日々が始まった。

「野球を続けたくても続けられなかった選手も周りにいっぱいいたので、野球をできていることがありがたい」

先発して好投するものの後半崩れることがあったJPアセット証券時代の課題を胸にスタミナ強化に励んできた。東京スポニチ大会では、リーグ戦のENEOS戦でも九回に抑えとして登板し、3人を11球でピシャリと抑えた。身長170センチは、投手としては小柄ながら、強心臓ぶりを存分に発揮し、1点のリードを守った。

=昨年の都市対抗東京都2次予選のJR東日本との第4代表決定戦に登板するJPアセット証券時代の門間滉介投手

「野球できる喜び」胸に誓う貢献

 ここまでの歩みは決して華やかではない。千葉県出身で、中学は軟式野球部に所属。地元・東葉高校では「3年時は結局、公式戦で勝てなかった」という。県内の清和大を経て、練習会に参加して21年にJPアセット証券入りした。輝かしい実績がなくとも、地道な努力が球に力を生み出し、ルーキーイヤーから23年まで3年連続で都市対抗に補強選手で出場し、経験を積んできた。

 東京スポニチ大会優勝で、秋の日本選手権出場権を獲得した。「学生のころから1度も優勝して、大舞台への出場を決めるという経験がなかったので、移籍1年目でこの経験を味わえたのは、自分でもうれしいし、印象にも思い出にも残る。1日も早く、もっとチームの力になれるようになりたい」と意気込む。

門間の加入で投手層に厚みが出たチームは接戦に強くなった。過去2年間、都市対抗、日本選手権の2大大会の本戦出場を逃していただけに、復活を告げる優勝ともなった。幡野監督は「やってきたことが間違いないと確認できた。うれしくないなんてことはないが、まだ都市対抗が残っているので、どこか本当の喜びっていうのはね……」。喜びも控えめに、次なるターゲットである都市対抗出場に視線を向けていた。【毎日新聞社野球委員会・藤野智成】

※次回の社会人野球NOWは4月15日公開予定です。