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チーム創設90周年 火消しに期待 JR西日本・一ノ瀬幸稀投手 社会人野球NOW vol.62

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社会人野球公式戦デビューのマウンドは、八回1死二、三塁のピンチにやってきた。JR西日本の新人、一ノ瀬幸稀投手(22)。2025年シーズンの幕開けを告げる第79回東京スポニチ大会の大会初日となる3月8日のENEOS戦、場所は神宮球場。九州産業大の投手として昨年の全日本大学選手権で活躍した思い出の場所だ。

JABA東京スポニチ大会のENEOS戦で救援するJR西日本ルーキーの一ノ瀬

思い出の神宮、東京スポニチ大会でデビュー

JR西日本はこの回に1点を奪われ、2-7とリードを広げられていた。流れを止めないと試合が壊れてしまう場面。3番打者の川口凌を三塁ファウルフライに抑えると、続く丸山壮史をツーボールのカウントから、一塁ゴロに切ってとった。相手主軸の左打者2人に適時打を許さない見事なリリーフ。九回も先頭打者に四球を与えたものの、続く3人を討ち取って役割を全うした。

「新人らしく、もう打たれてもいいという気持ちで。でも絶対押さえるという気持ちもありました。点はやりたくなかった」と一ノ瀬。左腕からの大きなカーブを見せたり、スライダーでカウントを整えたり、一転して速球で勝負したりと持ち味を出したが、本人の採点は四球があったので「50点」とかなり低め。このあたりに大学時代から救援で活躍してきたプライドがにじむ。

田村亮監督の評価は「ランナーのいる場面で左打者2人を抑えてくれた。持ち味のストレートの切れ味をしっかりと出してくれた。コントロールはまだアバウトでしたが」というもので、まずは合格点といったところ。新人を今年度の最初の試合に送り出した理由については「オープン戦を見ていても、あまりピンチに動じないメンタルを持っている」と話し、そこを伸ばしていってほしいと期待する。

長崎県南島原市立西有家中から長崎商高へ進み、九産大をへて入社した。この年代は高校3年時、新型コロナウイルスの猛威のため、夏の高校野球選手権が中止となる悲哀を味わっている。そのせいもあり、一ノ瀬は春夏を通して甲子園には出場していない。しかし、九産大では3、4年と続けて福岡六大学リーグ戦の春秋連覇を果たし、昨年の全日本大学野球選手権ではベスト8まで進んで、早大に敗れている。もちろん一ノ瀬は3試合続けて救援のマウンドに立っている。

=長崎商高でプレーした一ノ瀬

「もう一段、上のレベルで」勝負

身長172センチ、体重78キロ。社会人野球に進んだのはもう一段レベルの高いところでやりたいという気持ちから。都市対抗にも出ているし、練習環境もいいということでJR西日本に決めたという。生まれ育った九州から出てみたいという若者らしい気持ちもあった。

ストレートは時速140キロ前後で、田村監督の言葉にあったようにボールの切れで勝負するタイプ。しかし一ノ瀬は「社会人はスイングも違うし、あまいところに行ったらやられる打者ばかり。真っすぐだけではなく、変化球でカウントをとるなど、様子を見ながら揺さぶるようにやっています」という。右打者外角への沈む球もあり、変化球の制球力がさらにつけば、チームの勝利に欠かせない存在となる力は十分にある。

チームは1935年の創部で今年は90周年の節目となる。これまで都市対抗7回、日本選手権9回の出場を誇る名門で、目標はもちろん、まだ見ぬ「日本一」。そのために田村監督は選手に主体性を求め、新人6選手にも「先輩についていくのではなく、自分たちで新しいチームを作るという気持ちでやってほしい」と呼びかける。「目標に向けてチームはとてもいい雰囲気です」と一ノ瀬。貴重な「左殺し」としてチーム躍進への期待は大きい。(毎日新聞社野球委員会・斉藤雅春)

※次回の社会人野球NOWは4月1日公開予定です。