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初代監督は小川博文さん サムティ硬式野球部が船出 社会人野球NOW vol.64
2025年1月に日本野球連盟へ正式加盟した「サムティ硬式野球部」。不動産開発を手がけるサムティ(本社・大阪市)のチームで、プロ野球オリックスや横浜で活躍した小川博文さんが初代監督として指揮を執る。兵庫県三木市を拠点に、都市対抗、日本選手権の2大大会出場を目指しての活動がスタートしている。
=ユニホーム姿で意気込むサムティ野球部の小川博文監督(背番号72)、選手、コーチたち
メンバーは23人 兵庫県三木市に室内練習場、選手寮を新設
2024年から新入部員の募集を始め、2人の元プロ野球選手を含めた23人のメンバーが集まった。21人は新入社員だ。同社の運営する「ネスタリゾート神戸」の敷地内には室内練習場や選手寮も新設されており、大きな可能性を秘めた選手たちが汗を流している。
発足の記者会見で小川監督は、「都市対抗や日本選手権への出場が第一目標だが、まずはそこを目指すにふさわしいチームをつくります」と宣言した。小川監督は千葉・拓大紅陵高を経て社会人のプリンスホテルでプレー。1988年のソウル・オリンピックにも日本代表として出場を果たした後、ドラフト2位でオリックスに入団した。現役を引退後は古巣のコーチなどを務めたほか、12球団ジュニアトーナメントに出場する小学生チーム「オリックスジュニア」の監督として小学生たちの指導にも尽力した。
サムティの監督就任は、60歳を目前にした大きな挑戦だが、「野球に対する情熱は薄れていない。誰かに必要とされることは非常にいいこと」と小川監督に迷いはなかったという。
小川監督の根底にあるのは、社会人時代、4年間在籍したプリンスホテルでの経験だ。かつて名門として名をはせたチームは、都市対抗や日本選手権に出場するのは「当たり前」のことだった。日々、会社を挙げての応援を背に受け、地域のシンボルとして戦ってきた。「社会人野球の企業における意味合いは熟知している」と話す。
立ち上げ1年目の2025年度は、まず、秋の日本選手権を目指す道のりからスタートする。「やるからには一番を目指す。そのためにふさわしいチームになろうと選手には声を掛けた。サムティの野球を見たら面白い、応援したいなと思ってもらえるチームにしたい」と熱く語る。
=2000年、プロ野球・ロッテ戦で3点本塁打を放つオリックスの小川博文選手
プロ野球から社会人の道へ 尾仲投手「一から頑張りたい」
新人中心のチームの中で、小川監督がチームの軸にしたいと声を掛けた一人が、阪神やヤクルトなどでプレーした尾仲祐哉投手だ。小川監督は「いろいろな経験談を若い選手たちに伝えてほしい」と期待を掛ける。
尾仲投手は広島経大からドラフト6位でDeNAに入団。プロ入り前に社会人野球の経験はないが、「社会人野球はイチからのスタートだし、チームも1年目。またそこから頑張りたいなと言う気持ちがあった」と明かす。
2024年のシーズンオフにヤクルトから戦力外通告を受けた。けががなく体としては不安なくプレーできる状態にあったことや、24年から投げ始めたシュートに手応えがあり、「まだ打者との駆け引きをしたい。投手の楽しさを感じられているならまだやりたい」という前向きな気持ちが、現役続行の後押しになったという。
2大大会の観戦経験は一度だけ。大学の同級生がトヨタ自動車に所属していたことから、日本選手権が行われていた京セラドーム大阪に足を運んだ。「ヒット1本でスタンドが盛り上がるし、1点が入る度に応援の熱気が高まる。企業を背負ってプレーしているんだなということをひしひしと感じた」と尾仲投手は振り返る。その上で、「絶対に全国大会のマウンドで投げたい。多くの人に、社会人野球をいう世界を知ってもらいたい」と話す。
サムティの部員の多くは4月1日に入社式を行い、会社員として不動産業に関する研修なども受けながら、練習にも取り組む。夏場までは体力作りとチーム作りに専念。8月に初の公式戦となる兵庫県の大会に出場し、9月から日本選手権の予選に挑む。【毎日新聞野球委員会・中村有花】
※次回の社会人野球NOWは4月22日公開予定です。