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連盟登録2年目、CLUB REBASEが新たなムーブメント巻き起こす 社会人野球NOW vol.66
JABA東京都野球連盟所属のクラブチーム「CLUB REBASE(クラブ リベース)」が正式加盟2シーズン目を迎え、勢いを加速させている。4月に開幕したJABA東京都クラブ春季大会兼全日本クラブ野球選手権大会東京都予選の2回戦では、昨年の都市対抗東京都2次予選で企業チームを破ったゴールドジムベースボールクラブ(BC)を相手に、10―3で八回コールド勝ちを収め、関係者や他のクラブチームを驚かせた。
=JABA東京都クラブ春季大会兼全日本クラブ野球選手権大会東京都予選2回戦で本塁打で生還した選手を出迎え、盛り上がるCLUB REBASEの選手たち
「チームになってきた」と指揮官、柱は150㌔右腕川上投手
「『チームになってきた』感じがする。この勝ちで、みんなも自信がついたと思います」と三菱自動車岡崎で主将を務めた経験もある田口蒔人監督は現状をこう語る。加盟1年目の昨季はJABA東京都クラブ秋季大会で初の公式戦に臨んだものの、初戦で悔しい負けを喫した。
今季、チームをけん引するのが、今年1月に加入したばかりの25歳右腕、川上鳳之投手だ。千葉・専大松戸高から専大に進み、企業チームの「オールフロンティア」で3年間プレーした経験を持つ。150㌔を超す直球は伸びがあり、ゴールドジムBC戦では先発して7回を投げ、被安打6、無失点。一回り目は直球主体、二回り目からはスライダーやフォークを有効に混ぜて10三振を奪った。投手陣の柱として川上投手に掛かる期待は大きい。
川上投手とCLUB REBASEの縁はSNSがきっかけ。施設やトレーニングなどの情報に興味を抱き、トライアウトを受験した。「技術面だったり、この時期にどういうトレーニングをしたらいいかなど、一から教えてもらうことができた。より自分のためになると思って選びました」。20代中盤にさしかかった時期の、大きな挑戦だった。
「いままでは目いっぱい投げることばかりを考えていた。投げミスもたくさんあった」という川上投手だが、自分の体のメカニクスを理解し、細かく設定されたトレーニングメニューを積み重ねていくことで大きな変化があった。「一定してスピードが出せるようになった。もともと150㌔の球速は出ていたが、1試合で何球もというのはゴールドジムBC戦が初めて。自分の中では大きかった」と手応えを口にする。
=ゴールドジムBCを相手に好投するCLUB REBASEの川上鳳之投手
16歳が公式戦初アーチ 木製バットで力強い打撃見せる
もう一人、ゴールドジムBC戦で輝きを放ったのが、16歳の松本怜青(れあ)選手だ。八回無死から代打で出場すると、力強い打撃で右越えソロをたたき込んだ。「このチームに入って、木製バットで打った初めてのホームラン。昨年も早く1本出したいなと思いながらもなかなか調子が上がらなかったが、練習の成果が実ってスタンドに入ってくれて良かった」と喜んだ。
ポニーリーグに所属する中学生の硬式野球チーム「神田Rebase ポニー」出身。東京都立小岩高2年になったばかりで、高校進学時には「高校野球」を選択するかどうかで悩んだが、長い時間を掛けて、クラブチームでプレーするという結論を出した。「高校野球もすごくいいところはあると思うが、自分を見つめ直したら、こちらの方が合うのではないかと思い決断しました」と松本選手。高校卒業後は米国の大学に留学してプレーすることを目指し、英語の勉強にも本腰を入れながら練習に取り組んでいる。
=CLUB REBASEの松本怜青(れあ)選手
もともと打撃には自信があったが、クラブチームは中学の金属バットから木製バットに変わる。当初は打球が詰まると手が痛く、金属バットのように積極的に振りに行くことができなかった。それでも、理論に基づいた体作りや、毎日同じ角度から撮影をして打球角度を意識したスイングの形を作り上げ、結果がついてくるようになった。目標は高校3年で日本代表「侍ジャパン」に入ること。「それぐらいのレベルを目指したい」と夢を語る。
科学的なデータや理論に基づいた指導、座学にも励む
CLUB REBASEは、野球専門のパーソナルトレーニングジムやオンラインサロンを展開する「株式会社Rebase」(東京都千代田区、池田則仁代表)が運営する社会人野球チーム。同社は、トレーナーでもある池田代表を中心に、機能解剖学やスポーツ学、運動学、物理学、力学、バイオメカニクスなど様々な分野の仕組みを学んだスタッフが、個別の選手たちに「感覚的な指導ではなく科学的なデータや理論に基づいた指導」を提供してきた。そのうえで、「個人個人で指導してきた選手が集まったときにどうなるのか、すごく興味があった」(池田代表)と22年7月に「神田Rebase ポニー」を創設し、さらに社会人チームの設立につながった。
CLUB REBASEの大きな特徴の一つが練習施設。東京・神田のビルの一室にある室内練習場には最新設備を用いた測定機器やハイスピードカメラ、トレーニング室があり、それぞれが空いた時間に練習に取り組む。解剖学やスポーツ学に基づく座学も練習の一環で、ホワイトボードには数式が並び、選手はただ体を動かすだけではなく、自分で考え、知識を身につけることも求められる。
社会人出身、大学からの入団、現役高校生と多種多様な選手がそろい、熱気にあふれる2年目のCLUB REBASE。チームの目標「東京都から史上初となるクラブチームでの都市対抗戦出場」に向かって、大きなムーブメントを巻き起こしていく。【毎日新聞野球委員会・中村有花】
※次回の社会人野球NOWは5月13日公開予定です。