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千葉県大学2部リーグからの挑戦 SUBARUルーキー三浦克暉投手 社会人野球NOW vol.67
北関東の名門、SUBARUが好スタートを切った。今シーズン初の公式大会となる4月のJABA日立市長杯選抜野球大会で優勝、日本選手権の出場権を早くも獲得した。大会初戦となる沖データコンピュータ教育学院戦で、先発のマウンドを託されたのが新人の左腕、三浦克暉(よしき)投手(22)。全国大会でも上位を目指すような強豪大学出身者が珍しくない社会人野球で、三浦は千葉県大学野球リーグ2部の清和大卒。しかし、学生時代から社会人など上のレベルに進むことを常に意識して練習に取り組んできた成果が、SUBARUでの初登板、初勝利となった。
=JABA日立市長杯選抜野球大会で好投するSUBARUのルーキー、三浦克暉投手
プラン組み立て、才能開花
一回、二回を3者凡退に抑え、三回と五回には得点圏に走者を置いたものの後続を打ち取った。5回を投げ無失点、被安打3、1四球、5三振の内容で、2番手の田島俊輔と交代した。右打者内角、左なら外角へのスライダーの制球が良く、コースへのボールの出し入れが光り、大きなカーブも相手のタイミングを外し有効だった。何よりも、落ち着いたマウンドさばきという印象を受けた。
「1週間前に先発を言われました。相手は関係なく、自分のピッチング、持ち味を出すだけでした。特に緊張もしませんでした。自分はやはりスライダーが持ち味。そこを軸にして投げています」。この日の投球については「右のイン(コース)はちょっと甘かったけれど、左の打者に良く投げられたと思います」と分析した。身長182センチ、体重85キロ。近くで見ると、マウンド上よりもがっしりとした感じだ。
茨城県の土浦湖北高校から千葉県木更津市の清和大に進み、1年生の春から登板した。4年生の昨年は春、秋の2シーズン連続で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振のタイトルを獲得、ベスト9にも選ばれている。学生時代、卒業後はどういう風に野球を続けようかと考えたときに出した答えが「チームは2部でしたが、自分でプランをしっかり立てて練習し、成績を残せば、どこかには進めるはず」というもの。そんな三浦の良きパートナーとなったのが、選手をやめてトレーナーを目指していた大学時代の野球部の同期生。二人でどんなトレーニングが効果的か、ウエイトトレーニングはどうやるのか、体調をベストに持って行くアップの方法など、様々なことに取り組んだ。「下半身の瞬発力や、肩、肘の強さなど体ができてくると練習方法も変わり、3年生のころにピッチングも変わってきた。自分の中で自信が持てるようになりました。彼には結構、感謝しています」と、三浦は振り返る。
=将来を嘱望されるSUBARUのルーキー、三浦克暉投手
「チームの芯に」 膨らむ指揮官の期待
SUBARUに入ることになったきっかけは、言ってみれば自らの「売り込み」。
大学時代の監督がSUBARUのチーム関係者と知り合いだったことから「まずは練習だけいかせてもらって」(三浦)。三浦を見たSUBARUの小川信監督は「この子であれば社会人でやっていけるのではないか」と判断し入社が決まった。
「目標としていたレベルのチームに入ることができた。後は力をもっとつけて生き残るだけ。八野田(龍司)さんらSUBARUには左で経験のある投手がいるので勉強しながら、生き残る道を考えいきたい。大学時代同様、いろいろプランを考えていこうと思っています」。試行錯誤しながら取り組んできたことが結実し、三浦は今、新たな気持ちで、新たな挑戦を誓う。
小川監督の見る三浦の特長は「ゴロを打たせるのがうまい。打たせて取る投手で自滅することはない。今後、チームの芯に育ってほしい」というもの。三浦の成長により、年代を問わす投手陣内と競争が激しくなることにも期待しての今季開幕戦の先発投手起用だ。
清和大出身といえば、スポニチ大会を制した鷺宮製作所に左腕、門間滉介投手(26)がいる。昨年11月、JPアセット証券が休部となり移籍、さっそく存在感を示している。三浦とは4歳違いで大学時代に一緒にプレーはしていないけれど「仲良くさせてもらっています。門間さんも移籍したばかりで大変でしょうが、同じレベルの野球なので、話を聞かせてもらいながらやっていこうと思っています」と三浦。両左腕の投げ合う機会は、案外早く訪れるかもしれない。【毎日新聞社野球委員会・斉藤雅春】
※次回の社会人野球NOWは5月20日公開予定です。