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新人の圧倒的存在感 東京ガス・藤澤涼介 社会人野球NOW vol.74

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 都市対抗野球東京2次予選で、東京ガスが第2代表を勝ち取った。めざましい働きを見せたのが、新人スラッガーの藤澤涼介だ。「藤澤で始まり、藤澤で終わった予選だった」。松田孝仁監督をそううならせる活躍だった。自主性を重んじて進化を続ける23歳が、黒獅子旗奪還への決意を胸に秘め、本大会に乗り込む。

「藤澤で始まり、藤澤で終わった予選」

大歓声と共に打球は左翼席に飛び込んだ。7月2日夜、神宮球場で開催されたHondaとの第2代表決定戦。同点の八回、先頭で打席に向かうと、岡野佑大の代わりばなを捕らえた。一塁ベースを回ったところで、思い出したかのように逆戻りし、きっちり一塁ベースを踏み直してから、ダイヤモンドを一周した。

「ずっと打球を追ってて……」。ベースを踏んだかどうか怪しくなるほど自身も興奮する一発だった。前夜の第1代表決定戦で鷺宮製作所に逆転サヨナラ負けし、この夜も初回に2点を先制される嫌な流れだったが、1点ずつ返して追いつき、この藤澤の一打で、3-2で競り勝った。

=Honda戦で決勝本塁打を放つ東京ガスの藤澤涼介

宇都宮市で育ち、小4の冬に野球を始めた。強豪・佐野日大高に進んだが、勝負の高3の年に新型コロナウイルスの感染拡大が押し寄せた。「(感染防止のため)あまり集まるな、と言われた頃で、家で素振りしたり、週2回ぐらい河川敷に集まったりしていました」。センバツに続き、夏の甲子園も中止となり、聖地の土は踏めないまま卒業した。

コロナ禍を乗り越え、国立大へ

練習のできない時間を学業に充てた努力も実り、横浜国立大に進んだ。理工学部の化学・生命系学科で太陽電池の研究を専門としながら、練習にも励んだ。「野球は続けたいと思っていましたが、監督から『こうしろ』と言われて、ただやるのは、あまり得意でなくて。その点、横浜国立大の監督は教授ということもあり、平日は練習に来ないんですよ。だから学生コーチという役割があり、学生コーチが選手と意見をすりあわせながら、チームを作っていました」。その自主的な取り組みが水に合った。神奈川大学野球連盟に所属し、1年秋には2部から1部に昇格する歓喜も味わった。

東京ガスへの入社を決めたのも、チームに選手主体の雰囲気を感じ取ったからだという。「練習に参加してみて、選手が考えて、意見を出して、すり合わせていく、そういう仕組みがすごくいいなと思いました。自主練する姿も多く見受けられました」

187センチ、87キロの堂々の体格を誇る右の強打者だが、春先は左ふくらはぎを痛めたこともあって出遅れた。それでも明治大出身の同じくルーキー、飯森太慈らの活躍を刺激に奮起した。先輩や同期の助言を取り入れて体の使い方を工夫し、逆方向への飛距離を伸ばした。

中軸を任されて東京2次予選へ。最初のNTT東日本戦で適時三塁打を放つと、続くJR東日本戦は左翼へ、鷺宮製作所戦では右翼へそれぞれ先制アーチ、そしてHonda戦での決勝弾と長打力を存分に発揮した。

=ルーキーの活躍も目立ち、東京第2代表となった東京ガス

 橋戸賞投手との対戦心待ちに

そのHonda戦、九回裏のピンチに同じく新人の中央学院大出身、清水一眞が好救援して逃げ切るなど今季は新人が頼もしい。「有望な選手が加わった。どうやって能力を引き出していくか、それだけを考えている。先輩、ベテラン選手たちが、新人が力を発揮しやすい環境を作ってくれて、それがチームとしてうまく行っている。重圧がかかる場面でも僕も勝負し、新人を信頼して起用している」。松田監督の期待に新人が応える好循環が生まれている。

チームは2021年の都市対抗で初優勝を果たし、22年は準優勝。昨年は4強入りするなど大舞台で強さを発揮している。昨年は優勝した三菱重工East(横浜市)に準決勝で、1-4で敗れた。逆転の好機を作った八回、橋戸賞に輝いた本間大暉に3者連続三振を奪われた。入社が決まっていた藤澤は観戦し、その場面を目に焼き付けている。「ああいうチャンスの場面で本間投手から打ちたい、そして勝ちたいと思っています」。連覇を目指す三菱重工Eastとの対戦も、心待ちにしている。【毎日新聞社野球委員会・藤野智成】

※次回の社会人野球NOW722日公開予定です。