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クラブ勢2チームの意気込み 都市対抗組み合わせ決まる 社会人野球NOW vol.76
=歓声どどよめきが交錯した都市対抗野球の組み合わせ抽選会
優勝経験あるチーム1回戦で激突
第96回都市対抗野球の組み合わせ抽選会が7月19日、東京都千代田区の一橋講堂で開かれた。主催者を代表して日本野球連盟の谷田部和彦専務理事が「昨年は東京ドームへ33万人のお客様にご来場いただきました。今年もいろいろな企画を行い、一人でも多くの方にご来場していただけるよう取り組んでいます」と挨拶。出場32チームの監督とマネージャー、招待された約300人のファンらが見守る中、対戦カードが次々と決まった。
昨年優勝の横浜市・三菱重工Eastが開幕戦で、近畿第1代表の大阪市・NTT西日本と対戦。また、東京都・JR東日本と川崎市・東芝、大阪市・日本生命と大垣市・西濃運輸など、1回戦から優勝経験を持つ伝統勢同士の目の離せないカードが実現した。
今大会ではクラブチームが5年ぶりに復活を果たした。5年ぶりとなる札幌市・JR北海道硬式野球クラブと、6年ぶりの長野市・信越硬式野球クラブ。いずれもかつては、JR北海道、NTT信越の名で企業チームとして活躍してきた名門で、クラブ化した現在も、各地区で硬式野球の普及、発展に大きく寄与しながら、全国大会を目指して活動している。
JR北海道硬式野球クラブの乙須正太監督(42)と、信越硬式野球クラブの酒井仁汰監督(28)に、大会への意気込みを聞いた。
=握手を交わす日本製鉄鹿島の藤澤英雄監督(左)とJR北海道硬式野球クラブの乙須正太監督
チャレンジャーの気持ちで JR北海道硬式野球クラブ
JR北海道硬式野球クラブの1回戦の相手は、鹿嶋市・日本製鉄鹿島。第87回(2016年)でも一回戦で当たり、2―1で勝っている。チームの本大会での勝利はこれが最後で、今回は9大会ぶりの勝利を同じ相手で目指すことになる。験のいい組み合わせと思われるが、乙須監督は「そのときは僕も引退した後ですし、そもそも都市対抗自体が5年ぶりなので、大会を知っている選手も少ない。思い切ってやるだけです」という。
両チームは昨年のJABA北海道大会の予選リーグ初戦でまみえ、JR北海道硬式野球クラブがリードしながら、中盤に投手陣が打ち込まれて敗れている。日本製鉄鹿島はそのまま決勝トーナメントに進み、優勝を果たした。「すごい点を取られたので、良く打つなというのが、相手の印象です」と乙須監督。
北海道2次予選では、事実上の決勝戦となった札幌市・北海道ガス戦で、10年目の夏井康吉投手が1失点の完投で7-1の勝利を収めた。リーグ戦3試合で失点は5。乙須監督が目指すのは「東京ドームでも投手陣をメーンに、失点をしない、自滅をしないという戦い方」だという。
企業チーム時代も知る乙須監督だが、環境の変化を言い訳にするつもりはない。「正直、厳しい環境の下ではあるけれども、社会人野球をやっている身として、企業とかクラブとかいうのは関係ありません。チャレンジャーの気持ちで行きます」と、9大会ぶりの初戦突破に狙いを定めている。
=対戦が決まり、大阪ガスの峯岡格監督(左)と握手をかわす信越硬式野球クラブの酒井仁汰監督
チームが束になって 信越硬式野球クラブ
信越硬式野球クラブの酒井監督は1996年11月の生まれ。28歳は今大会で最年少監督となるが、気負いや気後れは感じられない。
1回戦の相手は大阪市・大阪ガス。第86回大会(2015年)の日立市・日立製作所戦以来10大会ぶりの勝利を目指すことになるが、日本選手権では一昨年、日本新薬を破っている。選手として企業チームからの勝利を経験している酒井監督は「当然、そこを目指すことになるのですが、特段、何ら変わることはありません。伸び伸びやってもらえればいいです。そのために時間はあるので、いろいろ勉強しながらしっかりと準備をしたい」と落ちついた口調で話す。
酒井監督は移籍で信越クラブに入り4年目で、昨季から指揮を執る。東京ドームへの思いを聞くと「周りの人たちから、出てほしいとずっと伝えられてきて、(東京ドームへの)思いが強くなっていったと思う。いろいろな人に支えてもらって、苦しい時期も耐えてもらってここまで来られた。皆さんが喜べるような、応援していただけるような試合をしたい」と、周囲への感謝の気持ちを口にした。
北信越2次予選における前評判は、昨年のメンバーから打線の主軸が抜けたこともあり、決して高くはなかった。勝ち抜けたのは「戦力はダウンしても、その分、みんなが同じ方向を向きながら戦えたから」と分析する。
全員が集まっての練習は週2日、平日の午後だけだという厳しさ。「一人一人の選手で見れば、完全にぼろ負けです。でも、束になってどこまでやれるかは全然違う話です。それ植え付けながらやっていきます」。酒井監督は冷静に、虎視眈々と勝負を見据えているようだ。【毎日新聞社野球委員会・斉藤雅春】
※次回の社会人野球NOWは8月12日公開予定です。