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スポーツ俳句に蛇口みかんジュースも 全日本クラブ選手権で 社会人野球NOW vol.82

=坊っちゃんスタジアムのスタンドで俳句を募集する「愛媛スポーツ俳句クラブ」のメンバー
9月16日に閉幕した今年の全日本クラブ野球選手権大会は49回目にして初めての四国開催。愛媛県松山市と今治市の3会場では、地方開催ならではのイベントが数多く用意され、来場者を楽しませた。
その中でも最も話題を呼んだのが、「スポーツ俳句」のコンテスト。「野球(のぼーる)」という号も持っていたほどの野球好きで知られる愛媛県ゆかりの俳人、正岡子規にちなんだ企画で、愛媛県野球連盟ではこれまでもJABA大会などで実施してきた。今回は全国から集まった選手やチーム関係者にも投稿用紙が配られたほか、スタンドには愛媛スポーツ俳句クラブの「特設ブース」が設けられ、メンバーが来場者に投句を呼びかけた。地元テレビのニュース番組などでも取り上げられたほか、会場内で心に浮かんだフレーズをそらんじる姿も多く見られ、4日間の大会期間中に計550点の作品が集まった。

=閉会式で表彰された松山フェニックスの河野翔夢選手
同クラブの渡部三峯(さんぽう)=本名・雅人=さんによると、選考基準は▽ポエジーであること▽オリジナリティーがあること▽スポーツの魅力、醍醐味、感動を主題にすること――の3点。スポーツ俳句は必ずしも季語を盛り込む必要はない。最終選定では「中学生以下の部」、「一般の部」などの各部門から優秀作6点に絞られ、最優秀作品は「選手等の部」として大会にも出場した松山フェニックス・河野翔夢選手の「ホームラン 秋空高く 舞いあがる」に決まった。渡部さんは選考理由について「決して奇抜なものにしてやろうとかそんな意図は一切なく、本当に素直な要素を使ってできあがっている。野球の醍醐味そのままだと思って選定しました」と評価した。
そのほかの優秀作5点は、「父さんの やきゅうすがたが だいすきだ」(中学生以下の部)▽「始球式 キャッチャーがくれた『ナイスボール!』」(役員等の部)▽「キャップテンのまなざし澄める 夏の空」▽「秋風に最後の打席 音が止む」▽「完敗です でも胸を張って帰って来て」(以上、一般の部)が選ばれた。

=蛇口をひねると出てくるみかんジュースを体験した選手
グラウンドの外でも来場者が楽しめるイベントが盛りだくさん。坊っちゃんスタジアム横の広場では地元の女子硬式野球チーム「マドンナ松山」の選手たちによる「野球遊び体験」で子どもたちが体を動かしたほか、球場内には「蛇口から出てくるみかんジュース」を体験できるコーナーも設置された。マドンナスタジアムの始球式には松山で女子野球を盛り上げる選手たちが登場。マドンナ松山の池田千沙投手と地元・新田高校女子野球部の郷緒咲良さんが見事な投球で観客を沸かせた。

=マドンナ松山の女子選手と一緒に野球遊びをする子ども
郷緒さんは兄の影響で小学3年から野球を始め、小中と「マドンナ松山」のジュニアチームでプレーした経験もある。高校卒業後は保健師を目指して進学のために受験勉強中で、「引退してから全然野球をやっていなかったが、記念になる」と大役を引き受けた。捕手役はキャッチボールの相手として来場していたチームメートの山本空さんが急きょ務め、郷緒さんの力のこもった球をしっかりとキャッチ。「一緒にバッテリーを組めて良かった」と声をそろえた。

=始球式でバッテリーを組んだ郷緒咲良さん(右)と山本空さん
愛媛の独自色と「おもてなし」にあふれた4日間。野球と愛媛県、両方の魅力を内外にアピールする場にもなった。【毎日新聞社野球委員会・中村有花】
※次回の社会人野球NOWは10月7日公開予定です。