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小さな島の大きな夢 イワキテック 社会人野球NOW vol.83

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愛媛県東北部、瀬戸内海に浮かぶ25の島々からなる上島町に誕生したクラブチーム「イワキテック」が松山市を主会場に開かれた第49回全日本クラブ野球選手権大会で存在感を発揮した。島で働き、島で練習する選手たちが、地元の声援を後押しに全国の強豪に真っ向勝負を挑み、2回戦進出を果たした。小さな島の大きな夢が動き始めた。

=福岡トヨタ硬式野球クラブFTサンダース戦で登板し、好投したイワキテックの久保伊織投手

クラブ選手権で刻んだ価値ある一歩

残暑厳しい9月14日、松山市の坊っちゃんスタジアム。イワキテックは4強進出を懸けて、福岡トヨタ硬式野球クラブFTサンダースとの2回戦に臨んだ。4点を先取されたが、2番手の久保伊織の好救援で試合を立て直し、四回には神崎翔海の適時二塁打などで2点を返した。最終回も走者を2人ためるなど見せ場を作り、2―5で敗れたものの互角に戦った。前日の1回戦では、焼津マリーンズに9―2で八回コールド勝ちし、島から応援に駆けつけた地元ファンを沸かせた。新設された開催地区枠で初出場を遂げた大会で価値ある一歩を踏み出した。

上島町に本社を置く1957年創業の船舶関連メーカー「イワキテック」が昨年から選手を集め始めたクラブチームで、選手は現在約20人。野球を通じて若者を呼び込み、島々を活性化させるプロジェクト。各地から集まった選手たちは工場で鉄鋼の溶接やフォークリフトでの荷物の運搬などの業務に励みながら、町内のグラウンドで連日夕方から練習を積む。小中学校に出向いての野球教室や、地域の行事、祭りの手伝いなど積極的な交流にも努め、島民たちから愛されている。

=2回戦で敗れて悔しさ半分、手応え半分のイワキテック、小野耀平監督(奥)

野球通じて地域の発展に

今年から公式戦に出場し、都市対抗野球の四国地区2次予選では、前年代表の四国銀行を破る番狂わせを演じた。代表決定戦でJR四国に敗れたが、捕手の吉尾竜一主将(26)は都市対抗本大会の補強選手にも選ばれた。故障して出場機会はなかったが、その経験も基に全日本クラブ選手権ではチームを引っ張った。

戦い終えた吉尾主将は「個々のレベルは上がってきていますが、まだ上のチームに届いていない。本当に細かい差ですが、点差に表れます。ただ、ルーキーチームとしては上出来でした。また新しい選手も入ってくる。一つ形ができたので、そこにプラスアルファで力をつけていきたい」と振り返った。

日本製鉄東海REXなどで活躍し、祖父の故郷が上島町との縁もあって就任した小野耀平監督(31)は「たくさんの地元の応援に背中を押していただきました。スピード、正確性に重点を置いてきて、そこは本当によくなってきている。まだ実力不足ですが、成長を続ければ、もっと強いチームになる。町を盛り上げていけるように頑張ります」と力を込めた。【毎日新聞社野球委員会・藤野智成】

=さらなる飛躍を誓うイワキテックの吉尾竜一主将

※次回の社会人野球NOW1014日公開予定です。