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マツゲン箕島 開幕戦で初勝利に挑む 社会人野球NOW vol.85

社会人野球の第50回日本選手権大会が28日、京セラドーム大阪で開幕する。全日本クラブ選手権大会を連覇して2大会連続8回目の出場を遂げるマツゲン箕島硬式野球部(近畿・和歌山)が昨年に続き、開幕戦(午前10時開始予定)に登場する。32チーム中、唯一のクラブチームとして企業チームに挑む。初戦は4大会連続出場の強豪・東京ガス(関東・東京)が相手となる。

=優勝し喜ぶマツゲン箕島の選手たち
投手陣充実、悲願なるか
松山市を主会場に9月に開かれた全日本クラブ選手権で、マツゲン箕島はチーム初の大会連覇で7回目の優勝を飾った。昨年の決勝カードの再現となったエフコムBC(福島)との初戦は、3-2で逆転勝ち。地元の声援を背に受ける松山フェニックス(愛媛)との2回戦は0-0のまま延長戦に突入し、十回タイブレークの末、4-2で競り勝った。兵庫県警察硬式野球部(兵庫)との準決勝も逆転勝ちで、同じ近畿の長年のライバル、大和高田クラブ(奈良)との決勝も5-3と息詰まる熱戦を制した。
宮崎航大主将は「『前回王者という風に構えると、足元をすくわれる』とミーティングで確認して、初戦からチャレンジャーのつもりで臨んだ。やはりプレッシャーは感じ、本当にしんどい試合が続いたが、1試合1試合戦ううちに、チームが強くなるのを実感できた」と振り返る。
チームの強みは厚い投手陣だ。昨年の日本選手権に登板した速球派の奥田貫太、坂本龍平の両右腕に加え、新加入の投手たちが充実している。日大出身の松村亮汰は松山フェニックス戦、大和高田クラブ戦に先発して好投し、大会MVPに選ばれた。大阪桐蔭高、オリックス・バファローズの育成選手を経て加入した中田惟斗は中継ぎとして存在感を示した。

=大和高田クラブ戦で力投するマツゲン箕島の先発・松村亮汰
職場でも全力投球
チームは和歌山県立箕島高校の野球部OBを中心に1996年、「和歌山箕島球友会」として発足した。有田市を拠点に活動し、2019年に今のチーム名に変更した。選手たちは、和歌山など近畿地方で展開する地域密着型スーパーマーケット「松源」の社員として働きながら野球に取り組む。店舗で総菜類を陳列したり、包丁片手に魚をさばいたり、業務に励む。
遠征で職場をあけることもあるため、練習が雨で中止となった時などは率先して残業に取り組んでいるという。職場での機敏で礼儀正しい働きぶりは評価が高く、職場の戦力のためにも選手数を増やしてほしいとのリクエストが会社側から届いており、現在36人の選手数は来季、40人にまで増える予定だという。
かつて和歌山には、トヨタ自動車と並んで日本選手権優勝歴代最多7回を誇る住友金属が君臨したが、1999年シーズン限りで活動を終えた。現在はマツゲン箕島が県内唯一のJABA加盟チームとして、地域の野球熱をともし続けている。
昨年の日本選手権の開幕戦ではNTT東日本(関東・東京)に0-6で敗れたが、今年は8度目の挑戦で、初の初戦突破を目指す。箕島高出身でチーム創設の発起人でもある西川忠宏監督は「投手陣が豊富になった。打ち合いの試合は絶対に無理だが、継投策でロースコアの展開に持って行けば、勝機も見えてくる」と話す。
4大会ぶりの出場だった昨年と違い、昨年の経験値があるのが若手主体のチームのプラスとなる。宮崎主将は「昨年は自分たちの実力を出せていないと感じた。全力疾走、カバーリング、声掛けなど当たり前のことをやっていくことが大切。去年の負けの経験も踏まえて、レベルアップしたい」と意気込みを語る。【毎日新聞社野球委員会・藤野智成】
※次回の社会人野球NOWは11月4日公開予定です。