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【GRAND SLAM PREMIUM243】新監督に聞く⑤――多幡雄一(Honda)
幸先よい幕開けだ。今シーズンからHondaの指揮を執る多幡雄一監督は、初陣となる東京スポニチ大会で優勝を飾った。
「野球の戦い方には色々ありますが、最終的に相手よりも1点多く取って勝ち切ればいいと考えています。試合終盤までに何が起きても、最後の最後に勝ち切ればいいんです。ひとつミスをしたからといって委縮してしまうのではなく、前向きに考えてプレーしてほしいですね」
2月の鹿児島県鹿屋キャンプでこう話していた指揮官の思いを、選手たちが体現して見事に結果を残した。
2月の鹿児島県鹿屋キャンプで、選手と対話しながら動きを見守る多幡雄一監督。【写真=宮野敦子】
「ミスターHonda」と称するに十分なほど、多幡監督の現役時代のキャリアは豊富だ。星稜高から立教大へ進み、外野手としてベストナインを3回獲得した。2005年にホンダへ入社すると、2009年には都市対抗を制覇。2014年には、都市対抗10年連続出場を果たす。12年間の現役生活では、三塁手として社会人ベストナインに3回輝き、日本代表の主将も務めた。社業を経て、コーチに就任した2020年に再び都市対抗で優勝。そして、開田成幸監督からバトンを受け継ぎ、『心技体知徳』をテーマにチーム作りを進める。『心技体』だけでなく、『知徳』がポイントだ。知識や知恵があれば、厳しい場面を自力で乗り越えられるという。
「新しい習慣として、練習前に読書の時間を設けました。まず、自身のパフォーマンス向上につながる本を各自で選びます。インプットしたものをアウトプットするまでが重要なので、ミーティングで本の内容を発表し、その上で自分の考えを言語化する。タブレットでの情報収集も便利ですが、ブルーライトで目に負担がかかるのも気になるので、読書を薦めています。中には、活字に慣れるところからという選手もいますよ。ただ、私も本からたくさんの知識を得たので、何かをつかむきっかけになればと考えています」
さらに、徳=人間性を磨くことも求める。
「野球の技術だけでなく、挨拶や返事を再度、徹底しました。拮抗した戦いでは、運も大事だと思います。だからこそ、勝ち運を引き寄せられるチームにしたい。これは、打撃練習をするのと同等の意義があると考えています。技術や体力を養う練習にはかなりの時間を割きますが、知識や徳の習得にはそれほど注力してこなかった。心技体知徳をバランスよく身につけ、ここ一番の強さにつなげていきたいです」
昨年まで所属した埼玉県野球協会から東京都野球連盟に籍を移し、今年からは激戦区・東京で都市対抗予選を戦う。「厳しい予選を戦い抜くことで、チームはより鍛えられるはずです」と、前向きにとらえている。そして、こう続ける。
東京スポニチ大会では5大会ぶり3回目の優勝。辻野雄大主将が大日輪旗を受け取る。【写真=真崎貴夫】
「人を感動させるには、まず自分が感動しなければいけません。いかにイキイキとプレーできるかが重要です。選手たちには、積極的に挑戦してほしい。信念を持って戦い、日本一に相応しいチームにしてきたいです」
そう語っていた多幡監督は、東京スポニチ大会優勝後に「まず、自分が感動しました」と目を輝かせた。神宮球場で早速、胴上げを経験した新監督。東京ドームでも宙を舞うことができるか注目したい。
【取材・文=古江美奈子】
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