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試合重ねる伊藤流 百戦錬磨の日本製紙石巻 社会人野球NOW vol.69
都市対抗野球1次予選宮城県大会が開幕した。東京ドームへの出場権を争う2次予選東北大会は6月19日から仙台市と石巻市で行われる。日本製紙石巻にとっては、チーム初の2年連続出場を地元の宮城で、是非とも達成したいところ。春先から数多くのオープン戦で鍛えてきた実戦力を生かし、東京ドームへの切符を手にしたい。
=JABA日立市長杯で本塁打が飛び出し、活気にあふれる日本製紙石巻のダッグアウト
相手さまざまオープン戦3倍
強化のために組まれたオープン戦の試合数がとにかく半端ではない。今季初の公式戦は4月17日からのJABA日立市長杯だったが、それまでにこなしたオープン戦は約1カ月で21試合。相手は企業チーム、クラブチーム、大学勢とさまざま。チームのホームページを見ると、2次予選までにさらに増え、計39試合にのぼる。伊藤大造監督が2度目の監督に就任したのは2024年。前年のオープン戦の数は2次予選までに14試合なので3倍近い数になっている。
シーズンに備えて技術、体力を鍛える春先の時間が少なくなるのではと思ってしまうが、伊藤監督はそうした可能性は考えながらも、試合を通して各自が課題を見つけ、それを頭の中で整理して練習に取り組み、次の試合でトライしていくというサイクルに重みを置いている。老婆心ながら「試合に出かける費用なども大変なのでは」とたずねると「そうなんですよ。でも大学の野球部には地元に来てもらったり、ダブルヘッターを組んだり、さまざまな工夫をしています」との答えが返ってきた。
=JABA日立市長杯で本塁打を放つ日本製紙石巻の佐藤晃一選手
主将3人制、芯が太く
日本製紙はかつての社会人野球の名門、大昭和製紙の流れをくむ。日本製紙と大昭和製紙の経営統合などを経て、会社が現在の形になったのは2012年。3度の都市対抗優勝を誇る大昭和製紙(静岡県富士市)から指導者が送り込まれ、チームの強化が図られた。伊藤監督も大昭和製紙出身で、三塁手として3度、本大会に出ている。
日本製紙石巻のドーム初出場は2010年。以来、昨年まで6度、本大会に進んでいるが、勝利は13年の2勝と昨年の1勝。日本選手権は3回の出場でまだ未勝利。「うちはまだまだ強豪のレベルではない」と伊藤監督。試合運び、状況判断、それを磨くための個人のレベルアップ。それらを狙っての試合数なのだろう。
日本製紙石巻は主将3人体制を敷いている。その一人、佐藤晃一捕手は「試合でしか得られないものはたくさんあります。練習日を実戦の反省として大事にしながら、次の試合でまた実践していくという形でできている。たくさん試合があるのはいいですね」と、手応えを口にする。
日立市長杯の初戦となったエイジェック戦の九回、佐藤は同点の2死無走者から、勝ち越しとなるソロ本塁打を放った。
「この大会は同点でもタイブレークはなく、引き分けになる。ヒット1本で返ってこられるよう、一発の大振りはせずに長打を狙いにいったら、ああいう形(ソロ)になりました」と佐藤。その裏に追いつかれて、結局は引き分けたが、チャンスを作ってプレッシャーを相手にかけるという考えが実を結んだ場面だった。普段の練習でも、ヒット・エンド・ラン、あるいは走者三塁の犠牲フライ、カウントなどに応じてのフリー打撃に取り組んでいるという。
=JABA日立市長杯で力投する日本製紙石巻の秋田稜吾投手
マルハン加わり、競争激化
今年、宮城県では新たな社会人チームが都市対抗予選に挑戦する。プロ野球元ヤクルトの館山昌平監督率いるマルハン北日本カンパニーだ。JABA選抜新潟大会の予選リーグで日立製作所に勝つなど、若い選手の力は侮れない。宮城県は昨年の都市対抗準優勝のJR東日本東北、七十七銀行、日本製紙石巻の3強の状態が続いてきたが、より競争が激しくなりそうだ。「昨年は都市対抗、日本選手権と2大ドームに出場できましたが、今年はもっと厳しい戦いに絶対になる。もう一回、気持ちを入れ替えていきます」と佐藤。初のドーム連続出場、その先にある全国の強豪チームへの道。実践力を鍛えて日本製紙はチャレンジする。【毎日新聞社野球委員会・斉藤雅春】
※次回の社会人野球NOWは6月10日公開予定です。