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初出場で全国4強 福岡トヨタの躍進 社会人野球NOW vol.90

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全日本クラブ野球選手権大会は今年もハイレベルな争いが展開された。9月に松山市を主会場に開かれた第49回大会で、存在感を発揮したのは、九州地区代表の福岡トヨタ硬式野球クラブ FTサンダース(福岡)だ。初出場ながら4強入りし、来季以降の飛躍を予感させた。

=初出場で旋風を巻き起こした福岡トヨタ硬式野球クラブFTサンダースの選手たち

増木が好投、福島が長打

初戦で西多摩倶楽部(東京)に9-1で七回コールド勝ちすると、2回戦では地元、イワキテック(愛媛)を5-2で降した。準決勝こそ過去優勝5回の名門、大和高田クラブ(奈良)に0-7で八回コールド負けしたが、五回までは0-1で食らいつく展開だった。

福岡工業大出身の24歳右腕、増木武寛は西多摩倶楽部戦で6回1失点、大和高田クラブ戦で6回3失点と先発の柱として好投した。打線では西南学院大出身の24歳、福島悠介がイワキテック戦で価値ある2ランを含む3安打を放つなど長打力を発揮した。

「初めて参加してベスト4まで来られたのは、びっくりするぐらい。課題はまだまだたくさんありますが、全国の舞台に立てたことは、選手みんなの収穫になります」。率いる福田義浩監督(60)は手応えを口にし、目尻を下げた。

=大和高田クラブ戦で先発した福岡トヨタ硬式野球クラブFTサンダースの増木武寛投手

目指すは「応援されるセールスマン」

昭和171942)年設立の福岡トヨタ自動車株式会社が創業80周年を記念して、2023年に発足させた新興チーム。同社の執行役員でもある福田監督によると、チーム発足のプレスリリースを流した段階では、まだ監督1人きりで、選手集めからスタート。社内の軟式野球部から移籍してきた5人と新入社員9人で、24年は部員14人。今年になり、新入社員が19人加わって、日本野球連盟に登録し、公式戦に参戦したばかりだ。

福岡市を拠点に練習は週に2回。選手たちは販売店で営業やエンジニアの業務に励みながら、限りある練習時間に集中して取り組む。福田監督は「選手の名刺にはサンダースの名を入れて、大会で社業を離れる時もお客さんに伝えておくように言っている。お客さんから応援されるセールスマンになってほしい」と指導する。軟式野球部からの移籍組である東城匠主将(28)は仕事と野球の二刀流に「店舗の人がいて、会社の人がいて、野球ができている。どれだけ勝っても勘違いしてはいけない。やりたいことをやらせてもらっているので、きついとか言ってられない」と語る。

大和高田クラブ戦でチーム初安打を放つ福岡トヨタ硬式野球クラブFTサンダースの東城匠主将

森脇GM、杉本コーチが後押し

チームを後押しするのはプロ野球出身のスタッフだ。ソフトバンクでヘッドコーチ、オリックスで監督を歴任した森脇浩司さん(65)がGM、ソフトバンクなどで投手コーチを務めた杉本正さん(66)がコーチとして指導に携わる。野球を通じて地域社会に夢と勇気を与えることをモットーとしており、クラブチーム登録から、企業チーム登録へと改めて、いっそう強化に力を入れることも視野に入れている。

来年も再び旋風を巻き起こすか。東城主将は「最後は力負けした。目指すべきところの壁が見えた。チームとして、もうワンランク、ツーランク上に行かないと、互角には戦えないので、そこに向けて、みんなで頑張っていきます」と力を込めた。【毎日新聞社野球委員会・藤野智成】

※次回の社会人野球NOWは12月23日公開予定です。