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「東海強し」の1年 坂口アスリート委員長総括 社会人野球NOW vol.92

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2025年が幕を閉じようとしています。今年も社会人野球は多くの歓喜を生み出しました。日本野球連盟(JABA)アスリート委員会の坂口裕之委員長に、この1年を総括し、来季を展望いただきました。【構成 毎日新聞社野球委員会・藤野智成】

=2025年を総括し、来季を展望する坂口裕之アスリート委員長

投手力光った王子が都市対抗制覇

今年も「東海強し」の1年となりました。JABA主要11大会のうち半数以上の6大会を東海勢が制して迎えた都市対抗でも、勢いそのままベスト4のうち3チームを東海勢が占め、決勝も王子と三菱自動車岡崎の東海対決となりました。それぞれ東海地区では第6代表、第4代表と、下位のチームが本大会で勝ち上がりました。

都市対抗の開催時期が例年に比べて1カ月以上遅く、どのチームも準備が整い、接戦がとても多かった印象を受けました。その中でも決勝に進んだ両チームは投手陣の調整が非常にうまくいったのではないでしょうか。王子は樋口新、九谷瑠の両投手、三菱自動車岡崎は秋山翔、秋山凌祐の両投手を中心に、投手力の高さが際立っていました。

 

=都市対抗優勝が決まり、両手を挙げて喜ぶ王子の九谷瑠投手(手前)と細川勝平捕手

「打のヤマハ」が日本選手権優勝

日本選手権は、強打のヤマハと、粘りの日本生命、チームの特長を出して残るべくして残った両チームの決勝となりました。いずれも都市対抗では準決勝で敗退しており、その悔しさをバネに修正してきました。

日本生命は都市対抗で投手力を示していましたが、打撃面も強化していました。その日本生命を抑えて優勝したヤマハは打力に加えて、佐藤廉投手の「絶対に勝ちたい」との強い思いが伝わってきました。先発、中継ぎ、抑えと、全5試合にフル回転の働きでした。

社会人野球のレベルの高い投手陣をどう打ち崩すか。各チームは機器やアナリストを置くなどして、スイングスピードや打球角度など科学データも駆使して取り組んできました。今回のヤマハのような「打のチーム」の誕生を見ると、それら科学的アプローチの努力も実を結んできていると感じます。

 

=日本選手権を制し、喜ぶヤマハの選手たち。中央は佐藤廉投手

ベストナイン、東海勢最多7人

ここ数年、東海勢の活躍が顕著ですが、JABA主要大会も2大会を制したヤマハを中心に今年もその強さは際立っていました。その大会結果を反映し、年間表彰のベストナインも10人中7人が東海地区からの選出となりました。

若い投手陣をしっかりリードした王子の細川勝平捕手ら魅力ある選手が選ばれました。Honda鈴鹿の畔上翔選手の10年目での初受賞は毎年成長を続けてきたことの証左です。13年目のヤマハの矢幡勇人選手も9年ぶりの受賞で衰えのないところを見せました。

一方、王子の柴崎聖人選手、ヤマハの土山翔生選手はルーキーイヤーから活躍しての受賞となりました。新人がバシッとピースにはまったチームが上位に来ました。柴崎選手は3番打者として自分の役割を果たしました。4番の吉岡郁哉、5番の神鳥猛流両選手と王子のクリーンアップしっかりそろいました。土山選手と相羽寛太選手の若い二遊間がヤマハに勢いを与えました。年間最優秀防御率賞に輝いた王子のルーキー、樋口投手もしかりです。

世代交代の関東は来年期待

昨年のベストナインは近畿地区からの選出はありませんでしたが、今年は日本生命から2人が選ばれました。50回の節目を迎えた地元大阪での日本選手権で決勝に進出して進化を示しました。

関東地区のチームは世代交代の時期を迎え、新たなチーム作りに取り組んでいる印象を受けました。新監督で臨んだチームも多く、全国で勝つことの難しさを肌で感じた1年になったと思います。ただ接戦が続いた都市対抗本大会がそうだったように、全国的にあまり大きなレベルの差はなく、来年を楽しみにしています。休部から16年ぶりに活動再開した日産自動車も都市対抗の西関東予選で好ゲームを展開しました。全国優勝の実績を持つチームの伝統復活をうれしく思いました。

マツゲン箕島「常勝チーム」に

 全日本クラブ選手権はマツゲン箕島硬式野球部が2連覇しました。日本選手権では東京ガスと互角に渡り合いました。限られた時間の中で練習を積み重ね、体つきを見ても、よく鍛え上げられています。常勝チームの誕生は、ほかのクラブの刺激となります。

都市対抗で橋戸賞に輝いた王子の九谷投手がクラブチームの「矢場とんブースターズ」出身であることが示すように、クラブのレベルは年々上がっています。来年は節目の50回大会で準決勝、決勝の舞台は東京ドームです。さらなる盛り上がりに期待しています。

=日本選手権でも東京ガス相手に互角の戦いを演じたマツゲン箕島硬式野球部

アジア競技大会に向け「成長」

 愛知での自国開催となるアジア競技大会は来年9月に開幕が迫っています。4年かけて社会人日本代表選手たちを選考し、メンバーを入れ替えながら国際大会も重ねてきました。選手選考が悩ましいぐらい選手たちは成長してくれています。

韓国、台湾、加えて侮れない中国がライバルとなります。韓国、台湾はプロの選手たちも選考してくると思います。150キロを超える速球を持つ投手たち相手に、どう点を取っていくのか。金メダルを獲得できるように、サポートしていきたいと思います。

※次回の社会人野球NOWは2026年1月6日公開予定です。