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目標は2大大会出場 日産自動車・石飛智洋選手 社会人野球NOW vol.97

活動再開2シーズン目を迎える日産自動車の打線の中軸を担うのが、石飛智洋選手(23)だ。ルーキーイヤーの昨年、非凡な打撃センスを披露し、補強選手として都市対抗野球本大会の舞台も踏んだ。だが、チームとしては、都市対抗、日本選手権の2大大会出場はかなわなかった。「悔しい思いをたくさん味わったので、今年こそは2大大会出場を目標に掲げて、みんなで取り組んでいます」。都市対抗優勝2回、日本選手権優勝1回の伝統を誇る名門復活に、闘志をたぎらせている。
=2年目シーズンに向けて意気込みを語る日産自動車の石飛智洋選手
名門復活託された主砲
「失敗から学ぶじゃないですけど、どんどん挑戦して、同じ方向を向いてやっていこうと皆で話し合っています」
2月初旬、横浜市の日産自動車グローバル本社でインタビューに応じた石飛の言葉は力強く、表情は明るかった。オフシーズンは週に4日程度、出社し、日本営業本部セールスオペレーション部で、販売車の集中納車整備センターの運営などの社業に取り組む。横須賀市のグラウンドでの練習を終えてから出社した肉体は、スーツをまとっていても鍛え上げられ、エネルギーを放っているのがわかる。
日々の鍛錬の原動力となっている「昨年の悔しさ」とは――。
昨年、16年ぶりに活動を再開したチームは、石毛大地主将(24)以外は全員ルーキーという若い布陣ながら都市対抗西関東予選で奮闘した。準決勝では強豪の東芝相手に競り負けたが、五回に石飛の満塁本塁打で4点差を追いつくなど食らいついた。第2代表決定戦で再び東芝と対戦すると、一回に先制し、逆転された後も四回に石飛の二塁打を皮切りに追いつくなど五回まで同点の戦いを演じた。そんな活躍が認められて本大会で名門ENEOS(横浜市)の補強選手に選ばれた。
日本選手権の関東予選でも、あと一歩のところで本大会出場を逃したが、茨城トヨペット、エイジェックを破って代表決定戦まで進んだ。
チームは復活初年、自身は社会人1年目である。上々の滑り出しと捉えてもいい結果だ。「そう映るかもしれませんが、やっぱり勝たないと意味がない。もっと打撃を磨いて、チームに貢献したいと思った。そして今度こそ日産として都市対抗に出たいと強く思いました」。善戦にも慢心はない。
=昨年の都市対抗西関東予選準決勝で、満塁本塁打を放つ石飛智洋選手
伝統息づく「細部を徹底」
日産自動車との縁が生まれたのは、大学4年の春から夏に季節が移るころだった。活動再開に向けて全国を回って選手集めを進めていた伊藤祐樹監督(53)から大学の監督を通じて連絡が入った。甲子園にたどり着けなかった出雲西高から進んだ天理大で4番の座をつかみ、特に4年になって、その名は全国区になりつつあった。全日本大学選手権で大会タイ記録となる7打席連続安打を放って4強入りを果たした。体幹を強化するトレーニングに励んできた成果が数字として表れ始めていた。
現役時代の15年間、日産一筋でプレーした伊藤監督からチームの歴史、伝統、そして活動再開への思いを聞いた。「もともと社会人野球でプレーを続けたく、野球を続けられるなら全国どこへでも行くつもりでした。伊藤監督から、復活初年度で同い年ばかりと聞いて、すごく面白いと思いました」。故郷の島根県出雲市の親と相談し、「好きな道を進め」と背を押された。
ユニホームに袖を通し、伊藤監督からの教えを受けること1年。チームに根付く文化を体で感じるようになった。「走塁でのリードの取り方だったり、スライディングの仕方だったり、守りの中継プレーだったり、すごく細かいところを突き詰めて指導いただきます」。スポーツの世界で言われる「勝負の神は細部に宿る」である。
なぜ、伊藤監督がそこまで細部に口を酸っぱくするのか。それは補強選手として出場した都市対抗本大会で体感した。ENEOSのプレーの精度の高さに目を見張った。「競った試合になると、細かいプレーを普通にするのは難しくなる。でも、それができるようになれば、自分たちのチームも上に行けるんじゃないか、と思いました」。補強選手も含めて都市対抗に13度出場した伊藤監督が伝えようとしている勝負の厳しさが、そこにあった。

=昨年の都市対抗2回戦に横浜市・ENEOSの補強選手として出場した石飛智洋選手
アジア競技大会も目標に
昨年11~12月に台湾で開かれたアジアウインターリーグで、JABA選抜チームに招集された。学生時代を通じて国際大会に出場するのは初めての経験だった。試合までの時間、選手たちは個々に自分に必要な準備に取り組んでいた。高いレベルで自律した集団だった。自身は初めての環境で思うような打撃を披露できなかった。「上には上がいる」と刺激を受けた。
同時に新たな目標もできた。今秋に愛知でアジア競技大会が開催され、日本は8大会ぶりの金メダルを目指す。
「ウインターリーグに呼んでいただいたので、代表入りの可能性は、なくはないと思っています。あとは自分次第です。ジャパンのユニホームを着たいという強い思いがあります」
お手本とするのは、プロ野球・ソフトバンクの近藤健介選手。長打が打て、率も残せるバッターを目指す。朝、夜は自炊して体作りにも励んでいる。「得意料理は親子丼。朝はお餅にハチミツをかけて食べています」。176センチ、85キロの均整のとれた体格に充実感が漂う。
日差しのぬくもりが春の訪れを感じさせる季節となった。「社会人野球って、職場からすごく応援されていることを感じます。そして選手たちは、30歳になっても、1球に対して泥臭く向き合う。そこが魅力だと思います。息の長い選手になることが目標です」。チームとしての2大大会出場、そしてアジア競技大会の代表入り――。大きな目標を帆に掲げ、まだ見ぬ大海原にこぎ出す。【毎日新聞社野球委員会・藤野智成】
※次回の社会人野球NOWは2月24日公開予定です。